チャリ通は常に向かい風…もちろん人生も!

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続・魂のオレっ!

前回までのあらすじっ!

昔ながらの手口しか認めない、折野佐木助(おれの さぎすけ)の元で、オレオレ詐欺を働く破天夫(はてお)

連日詐欺を見破られ、心がオレかけていたある日、『オレオレ』と呼びかけた相手の口をついて出た言葉は『まさか破天夫かい?』という驚きのものだった。

電話の向こうにいるのは、果たして破天夫が幼い頃生き別れた母親なのか?

それとも…

 

※前回のお話はこちら↓ 

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続・魂のオレっ!

 

「母さん!オレだよ!破天夫だよ!ずっと昔に生き別れた破天夫だよ!」

 

 

「え?…まさか、本当に破天夫なの?…いいえ、騙されないわ。いつか破天夫と暮らすためにとコツコツ貯めた貯金を半分も持ってかれたんだから!もう2度と騙されません!」

 

 

「いや、本当だっつーのっ!ええと…どうしたら信じてくれるか…そっ、そうだ!合言葉だ!合言葉を答えるよ!」

 

 

「え?合言葉なんて決めてないわよ…やっぱり、あなた破天夫じゃないわ。迷惑なんで、もう電話しないでもらえるかしら、じゃ!」

 

 

ガチャっ!ツー…ツー…

 

 

しまった…

 

気が動転して、思わず合言葉なんて…

 

何百回、何千回も『本物なら合言葉を答えられるはずだ』って言われてきたせいだ。

 

本物だから答えられるって、つい思っちまった…

 

 

 

 

破天夫は混乱していた。

 

 

本当に母なのか?

 

あの人は、確かに『はてお』と言った…

もちろん同名の別人物の可能性もある。

 

だが、こんなイカした(れた)名前をつける親が果たして他にいるのだろうか…

 

 

破天夫は、スマホを取り出し、他に『はてお』という人物が日本に何人位いるのか、ネットで検索してみることにした。

 

 

 

…名字検索しかなかった。

 

 

そうだ!名字!

 

 

破天夫は、ファイルをめくって、先ほどかけた電話番号の持ち主の名前を改めて確認した。

 

 

 

打狩 八子 

 

 

 

「うつかり…はちこ…」

 

 

間違いない…

 

施設入所時に、取り寄せた戸籍謄本で母の旧姓を知った時『なるほど…』と妙に納得した記憶があるのだ。

 

 

 

 

八子は、うっかり者だった。

 

 

遠足のお弁当に中身が入ってなかったことは1度や2度ではない。

 

 

買い物しようと町まで出かけたら財布を忘れるし、お魚くわえたドラ猫を追いかけて裸足で駆けてくこともあった。

 

 

しかし、破天夫は、そんな愉快で陽気な八子が大好きだったのだ。

 

 

唯一分からなかったのは、あのトロけるように優しかった八子が、なぜ破天夫を置いて1人でいなくなったのか…

それだけだった。

 

 

 

回想に耽っているとオヤジが帰ってきた。

 

 

「破天夫…なぜリストを出しっぱなしにしている?」

 

 

「あ…」

 

 

「破天夫、このリストは、今までの電話帳とはワケが違うんだぞ、情報の重みが桁違いなんだ。それをお前ってヤツは…」

 

 

「ごめんなさい…すぐ片付けます…」

 

 

いつになく神妙な面持ちでリストを片付ける破天夫を見て、折野は言った。

 

 

「破天夫…そこじゃない。そこは冷蔵庫だ」

 

 

 

 

食事も上の空だった。

 

今日は、破天夫の好きな『ネギ玉牛丼』だったが、箸が進まない。

 

折野が、しきりに話しかけてきたようだが、上からマリ…いや、右から左だった。

 

『ああ…』とか、『うう…』とか、相づちを打ってやり過ごすうち、気づけば寝床に入っていた。

 

 

 

明日、もう1度電話をしてみよう…

だけど、オレが本物の破天夫だって分かってくれるだろうか…

 

 

幼かったため、記憶が曖昧で八子との想い出は、それほど多くない。

 

 

なにか、2人にしか分かり得ない出来事はないだろうか…

 

 

 

 

 

いつしか微睡み、気づけば朝になっていた。

 

 

 

オヤジが出掛けるのを確認し、電話機の前で大きく深呼吸してからダイヤルを回した。

 

 

「もしもし、オレ…破天夫だけど…」

 

 

「…またなの?いい加減にしないと警察呼ぶわよ」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ母さん。オレ本物の破天夫なんだよ。その証拠に、アレを覚えているよ。ホラ『らっきょうライス事件』!」

 

 

「…ナニかしら?それ」

 

 

「ナニって…誕生日の夕食が、ご飯とらっきょうだけだった、てやつ。食べ終わって半ベソかいてるオレを慰めるように『忘れてたわ破天夫、デザートがあったの!』ってカレーのルーを出してくれたじゃないか!」

 

 

「そんなの主婦だったら日常茶飯事よ。どの家庭にでもあることだわ」

 

 

「そ、そうなのか?じゃコレは?『校長室乱入騒ぎ』…小学校の入学式で、貼り出されたクラス割にオレの名前がどこにもなくて、母さんが校長室に怒鳴りこんだら、隣町の小学校だったってゆー…」

 

 

「それも調べれば誰だって分かるわ。当時の小学生から情報を仕入れることも出来るし…あ、ネットにも出てたもん、校長が2chに書き込みしたのよ。とにかく、もう電話しないでくれるかしら」

 

 

ガチャ、ツー…ツー…

 

 

 

また、ダメだった…

どうすればいいんだ…

 

 

その日、キムチ牛丼には箸をつけず、破天夫は折野に言った。

 

 

「オヤジ…頼みがあるんだ」

 

 

頭を下げる破天夫を、折野が訝しげに見つめる。

 

 

「オヤジはその昔、かけ子の腕前じゃ右に出る者がいなかったんだろ?どんな相手でも、オヤジの『オレオレ』で自分の息子だと信じ込ませたんだろ?」

 

 

「ああ、そうだ…だが、オレは、かけ子はやらんぞ。他にやることがあるからな」

 

 

「分かってるよ、うけ子とか出し子だろ?それにリストの調達だとか…頼みってのは、そうじゃねぇ、オレに、そのオヤジのテクニックを伝授してくれないか?」

 

 

「…いいか破天夫、本物の『オレ』は決して小手先のテクニックなんかじゃない」

 

 

「テクニックじゃない?…じゃあなんだ?ピクニックか?」

 

 

「それもある…だが最も大切なのは『魂』…だ」

 

 

「た、たましい…」

 

 

「キツイぞ…本気なのか?」

 

 

「ああ、どうしても息子だと信じてもらいたい相手がいるんだ。頼むよオヤジ!オレにその『魂のオレ』を教えてくれよっ!」

 

 

「分かった…だが、今日は牛丼食って寝ろ。『空腹と寝不足は、ところてんを誤る』だ。特訓は明日からだ」

 

 

 

次の日から、血の滲むような特訓が始まった。

 

 

 

振り付けも完璧にした。

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ドーハの悲劇を感じた。

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徹夜で読んだ。

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吐くほど飲み比べた。

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ピクニックも分かる。

 


悶絶した。

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とにかくシャウトした。

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10日間に及ぶ特訓で、破天夫は確信していた。

 

 

「いける…いけるぞ。コレなら5分もいらねぇ、2分で十分だ※1


※1「にふんでじゅっぷん」ではありません「にふんでじゅうぶん」です。

 

 

 

 

次の日

破天夫は、満を持して受話器をとった。

 

 

 

「もしもし、母さん?」

 

 

 

 

 

 

 

続けられる…気がしないww

 

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魂のオレっ!

魂のオレっ!

 

「もしもしオレだけど?」

 

 

「へぁ?…どちらさんですか?」

 

 

「やだなぁ母さん、オレだよ、オレオレ」

 

 

「ありゃ?もしかしてヨウスケかい?久しぶりじゃないの…どうしたの?」

 

 

「そ、そうだよ!ヨウスケだよ!いや、実はさ…交通事故を起こしちゃって、今すぐ示談金を払わないと大変なことになるんだよ」

 

 

上手く息子になりすませた!と意気込んだのだが…

 

 

「はい!残念でした。ウチにはヨウスケなんて子はいませ〜ん。警察に通報しま〜す」

 

 

ガチャっ!ツー…ツー…

 

 

破天夫(はてお)は、慌てて電話を切り、この日何度目になるか分からないため息をついた。

 

 

ハァ…

今日もダメだった…

 

 

時計の針は午後2時を回った。

銀行窓口の営業時間との兼ね合いで、今日の業務は終了となる。

 

 

くそっ…流行らねぇんだよ

今どき、こんなThe・オレオレ詐欺…誰も引っかからねぇっつーの!

 

 

ブツブツ言いながら商売道具の電話帳をキャビネットに片付けているとオヤジが帰ってきた。

 

 

「おう、破天夫…どうだったよ、今日の売り上げはよ」

 

 

「あのさ、オヤジ…もういい加減やめようぜ、こんな古臭い手口…もっと、こう…『オリンピックのチケットが当たりましたよ!』とか『年金2千万問題をご存知ですか?』とか、そーゆー斬新な切り口でいかねぇと通用しねぇよ」

 

 

「破天夫…鍵は?」

 

 

「あ…ヤベ…」

 

 

破天夫は慌ててキャビネットの鍵をかけた。

 

 

「全く…何度言ったら分かるんだ。その電話帳には大切な…」

 

 

「分かってるっつーの!個人情報保護法だろ?天ぷらライスだろ?」

 

 

「それは俗に言う天丼だ。そうじゃない、コンプライアンスだ」

 

 

「そんなこたぁどうだっていいんだよ…オヤジ、いい加減この『オレオレ』っつーのは…」

 

 

「馬鹿を言うな…オレは、かれこれ20年コレひと筋でやってきてんだ。これ以外の邪道なオレオレ詐欺は認められん」

 

 

「でもオヤジ、そもそも『オレオレ詐欺』って言い方自体、とっくの昔になくなったんだよ…オレら時代に取り残されてんだよ」

 

 

「破天夫…安易に流行りに乗っちゃいけねぇ、あの時『母さん助けて詐欺』だとかに手を染めてたら今頃どうなってたと思う?父さんが電話に出たら困るじゃねぇか」

 

 

「いや、まぁ…そりゃそうだけどよ…」

 

 

「それに、忘れたのか?…そもそも、なんでオレがオレオレ詐欺なんかをやる羽目になったのか」

 

 

「ちっ…耳タコだっつーのその話は…」

 

 

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折野 佐木助(おれの さぎすけ)は、江戸時代から続くところてんの老舗『折野ところてん店』の7代目当主だった。

 

 

『てんてん』の愛称で親しまれたその店は、大繁盛…とは言えないが、手間ヒマを惜しまない伝統の製法が評判で、常連客を中心に堅調な営業を続けていた。

 

 

しかし、山っ気が強かった折野は満足できなかった。先代から店を任されると、怪しげなブローカーの口車に乗せられ『オレのところてん』というブランドで甘味処を開いた。

 

 

無計画な出店だったが、立席形式で集客数と回転率を上げたスタイルが話題を呼び、大盛況となる。

 

 

味をしめた折野は『オレのティラミス』『オレのナタデココ』『オレのワッフル』など同業態の専門店を次々と展開、一躍時代の寵児となった。

 

 

有頂天だった折野を悪夢が襲ったのは、1990年のバブル崩壊、嘘のように客足が途絶え、銀行の貸し剥がしに会い、たちまち経営は行き詰まった。

 

 

起死回生を図り、怪しげな消費者金融に手を出して出店した『オレのタピオカ』がトドメを刺した。

 

 

時代を先取りし過ぎたのだろうか『カエルの卵みたいでキモいんですけど〜!ちょべりば〜!』と渋谷の子ギャルが2chに投稿したことで風評被害が広がり『折野ところてん店』は150年の歴史に幕を下ろす。

 

 

『ちょべりば』が、その年の流行語大賞にノミネートされた時、折野は歯噛みした。

 

 

しかし同時に『伝統を守れ、安易に流行りモンに手を出しちゃならねぇ』と口酸っぱく繰り返した先代の言葉も噛み締めた。

 

 

 

しかし、時すでに遅し

一家は離散、多額の借金だけが残る。

 

 

 

闇金業者に拉致され、連れてこられた薄汚い雑居ビルで折野がやらされたのがオレオレ詐欺のかけ子だった。

 

 

オレ…オレのサギ…?

 

 

自暴自棄になっていた折野に罪悪感はなく、むしろ運命めいたものを感じた。

 

 

借金返済のため必死で働いた折野は稼ぎ頭になる。

やがて『オレオレのサギ助』の通り名で呼ばれ、業界で一目置かれる存在となった。

 

 

借金を完済し自由の身となった折野が、再出発のため選んだのがオレオレ詐欺だった。

 

 

破天夫が折野に拾われたのは、その頃。

以来20年近く折野と2人でやってきた。

 

 

 

オヤジと呼んでいるが、折野は実の親ではない。

 

 

実の父親は、破天夫が中学に上がる直前、酒で肝臓を患い死んだ。小学1年生の頃、父親のDVに耐えきれず母親が失踪したことが、父をさらに酒へと走らせる要因だったのだろう。

 

 

父の死後、身寄りのない破天夫は施設で暮らしたが、イジメや体罰に耐えかね、高校卒業を待たず逃げ出した。

 

 

街でゴロを巻き、野垂れ死にしかけていた破天夫を見かねて拾ってくれたのが折野だった。

 

 

破天夫は、折野と共にオレオレ詐欺で荒稼ぎした。

しかし、良かったのは最初のうちだけ。

 

 

警察やメディアの啓蒙が進み、単純な手口は通用しなくなったのだ。

 

 

合言葉を設定されたり、飼っていたペットの名前を言わされたりと対策を講じられた。

 

 

破天夫が、新たな手口を提案しても折野は『もう、2度と流行りモノには手を出さない』と頑として受け付けず今に至る。

 

 

 

 

 

折野が買ってきたすき家の牛丼を貪り食いながら破天夫が言う。

 

 

「けどオヤジ…今月は、まだ1件も成功してないんだぜ。食うのもやっと、何より電話料金だって払えてないんだ。どーすんだよ電話止められたらよ」

 

 

「テングサは寝て待て」

 

 

「は?なんだそりゃ」

 

 

「チャンスは必ず来る。テングサを干すようにじっくり待つんだ」

 

 

「ちっ!オヤジのウンチクにはウンザリだぜ、それになんだよ、1人限定30万までって、先月のバァさんは『へ?たった30万で足りるのかい?』って驚いてたぜ」

 

 

「『限定30食には福きたる』…先代の教えだ。大量生産では良いところてんは作れん、それに女子はもれなく『限定』という言葉に弱い」

 

 

「へっ!くだらねぇ!悪いけどオレはもう抜ける」

 

 

「まぁ、待て破天夫。『焦って天付きを押すな』だ。実はトンデモないモノを仕入れてきたんだ」

 

 

「なんだよ、トンデモないモノって…」

 

 

折野が取り出したのは、分厚いファイル。

 

 

「過去にオレオレ詐欺に引っかかった人のリストだ。明日からコレを使ってみろ」

 

 

「は?馬鹿じゃねぇの?1度騙されたら余計警戒するじゃねぇか」

 

 

「いや、最初はオレもそう思ったんだが、どうやらそうじゃないらしい…」

 

 

 

折野によると、1度騙されたということは騙されやすい人であり、預金も多く、2度3度と騙される可能性が高いという。

 

 

「なるほど、言えてるな…よし、やってみっか!」

 

 

 

 

翌日

破天夫は、張り切って電話をかけた。

 

 

が…

結果は同じだった。

 

 

どうやら悪いのはリストじゃなかったらしい。

 

 

時計の針は間もなく午後2時

あと1件だけかけたら今日は終わりにしようと重たい受話器を持ち上げる。

 

 

「もしもし、オレだけど…」

 

 

「え?!まさか…いいえ、今更そんなはずはないわ」

 

 

「いや、そのまさかなんだよ母さん、随分遅くなっちゃったけどオレだよ」

 

 

「ダメよ、もう騙されないわ…こんな私を破天夫が許してくれる訳ないもの…」

 

 

一瞬ナニを言っているか分からなかった。

破天夫の頭はグルグル混乱する。

 

 

「かっ、母さん…今なんつった?…」

 

 

 

 

 

 

 

続け…ていいものか思案中ww

 

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2 第5話 6重苦

前回までのあらすじ

 

マリアちゃんのスカートを風から守るためボクシングジム入会を希望した赤鹿。ローブローながら見事に元日本ランカー竹信さんにクリーンヒットを浴びせ、約束の入会金無料を勝ち取った。

その赤鹿の入会祝いの席で味岡玉夫(通称味玉)は「翌週から増員されるガードマンが権田原である!」と、管制の長谷部から知らされた。

赤鹿と権田原、2人の問題児…いや問題オヤジと3人で現場を受け持つことになってしまった味玉。

トラブル必至の現場の運命や如何に?!

 

 

※第1話から読みたい方はコチラ↓

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連載アホ小説

ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

第5話  6重苦

 

月曜日

今週から南側の2ゲートを使った搬入出が始まる。今日は杭屋さんが現場に乗り込み、まずは杭打ち機とクローラークレーンを組み立てだ。車体が大きすぎてトレーラーに積載できないそれらの重機は、バラバラにして搬入され、現場で組み立てられる。

 

 

組み立て時には、現場の敷地内にキャタピラやウェイト、クレーンのジブなどが、所せましと並べられるため、作業が終わるまで北の1ゲートは、重機の部品を積載した車両以外の通行は出来なくなる。

 


重機が組み上がり杭穴の掘削が始まっても、施工する杭の場所によっては1ゲートは使えない。掘っている穴の上を車両が通るわけにはいかないからだ。

 

 

 

味玉は赤鹿とふたり、5時から早出出勤をして既にトレーラーを搬入した。

 

 

一定の車幅を超えた特殊車両は、6時から21時のあいだは一般道を走ることができない。杭打ち機とクレーン車の本体を積載したトレーラーは、その規制にかかるので、6時までに現場内に搬入しなければならないためである。

 

 

本体以外の残りの部品は規制にかからず、朝礼後に搬入されるため、ふたりは詰所に引きこもり、6時からずーーーーうっとグダグダと茶飲み話をしている。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ふぅ…なんとか無事トレーラーの搬入も終わったねぇ。早朝は交通量が少なかったから、思ったほど大変じゃなかったな…」

 

 

人差し指と中指にエコーを挟んだまま、残った親指と薬指で『ひょい』と持ち上げたブラックの缶コーヒーをひと口含み、味玉がいう。

 

 

「んだな…でも、やけにミニパトやチャリンコに乗ったデコ助が目についただな。なんか事件でもあっただか?」

 

 

赤鹿はひたすら鼻毛を抜いている。

 

 

「そういや、そうだな…なんだろね。こんな時間に、こんな閑静な住宅街で…」

 

 

 

タバコを咥えながら、ふと壁の掛け時計を振り返ると既に7時半を回っている。

 

 

権田原には、新規入場者アンケートの記入があるから、7時前には現場に入るよう管制の長谷部から伝わっているはずだ。

 

 

(権田原の遅刻とウロつく警察官…まさか、交通事故にでも巻き込まれたのか…)

 

 

味玉の脳裏に一瞬嫌な予感が浮かんだその時…

 

 

 

憲法9条改正問題って、そういう名前の球場の天気が快晴かどうかって問題だと思ってたの僕だけ? おはよ〜味玉くん!久しぶり〜♡」

 

 

詰所の引き戸をガラガラと開け、ドカドカと権田原が入ってきた。還暦は超えているだろう。ふっくらとしたえびす顔の好々爺だ。

 

 

「権田原さん!遅かったじゃないすか。心配しましたよ」

 

 

アヒージョって『アヒー!』ってあえぎ声あげる女子のことだと思ってない? いや道に迷っちゃってさ…色んな人に道聞いたんだけど、誰も教えてくれないどころか、不審者扱いされて警察に通報されちゃってさ!あっはっは!」

 

 

 

あ、あんたのせいだったのか…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

「なんだべ?このイミフなオッさんは?」

 

 

 

赤鹿が抜いた鼻毛をつまんだまま、不思議そうに味玉と権田原を交互に見る。

 

 

「あれ?赤鹿さん初めて?紹介するよ。こちら権田原さん。権田原さんは…何ていうかこう…最初に接頭語っていうか、枕コトバみたいなのをつけないと喋り始められないんだよ。そのせいで交通誘導警備業務2級の実技試験を見事に落ちてね。なにしろ警察・消防への通報試験とか実技試験はセリフ満載だからね」

 

 

(※シーズン1参照)

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「そ、そうなの?💦 オ、オラァ赤鹿です。よろすくお願いすます」

 

 

吉原永年無料券あげる代わりに一生素人童貞だよって神様に言われたらどうする? 権田原です。こちらこそよろしくお願いします。あはは!まぁ、景気づけっていうか、なんというか…こうやって生きてきました。あまり気にせんでください」

 

 

「え、え〜と💦  ぼっ、坊主が屏風に上手に坊主の屁をこいた! もちろん吉原無料券だすっ!

 

 

「・・・。」(※味玉)

「・・・。」(※権田原)

 

 

「赤鹿さん…それ早口言葉…それに間違ってるし つまんない。権田原さんに付き合ってたらキリがないよ。張り合ったって敵うわけないんだからフツーでいいよ、フツーで」

 

 

赤鹿は悔しそうに口をへの字にして、再び鼻毛を抜き始めた。

 

 

「あ!そうそう権田原さん、ひとつ言っとくけどね、この現場の近くに女子校があるんだけどJKには絶対話しかけないようにね。警察沙汰になったら、また転職する羽目になるよ」

 

 

タンスの角に小指ぶつけるのと、チャックに○ん○んの皮挟むの、どっちがいい? 分かったよ味玉くん。JK厳禁♡今日も元気ンにイッてみよう〜!大丈夫!し〜んぱ〜いないからね〜♬」

 

 

スゲー心配だ…

 

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

 

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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

こうして、アホ・バカ・間抜けの三拍子の上に、エロ・変態・コミュ症が加わった六重苦の現場が始まった。

 

 

無事に終わってくれと祈る味玉だが、そうは問屋がおろさない。

 

 


なんともはや…どっこいしょ…

 

 

 

第6話に続く…

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

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ガードマン味玉のFunnyな1日♬・Season1

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2 第4話『Cに恋する5秒前』

前回までのあらすじ

 

謎のプレミアムJK『マリアちゃん』に『JKスカートセーフティング』を試された赤鹿。危うく熱中症になりかけたが、大量のJKが下校する裏路地に出来る新しいゲートを担当したい!というプリミティブなモチベーションが彼を救った。

ゲートが新設されるまでは、赤鹿とふたりで、ゲートができた後は、もうひとり加えた3人体制で現場を受け持つことになった味岡玉夫(通称味玉)は、果たして何事もなく業務を遂行できるのか?

ま、出来るわきゃないわな。

 

※第1話から読みたい方はコチラ↓

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連載アホ小説  

ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

第4話  Cに恋する5秒前

 

 

持ち前のアホエロパワーで熱中症から立ち直った赤鹿が現場に来て、今日で1週間が終わる。

 


初日の月曜日以外は、何事もなく過ぎ去ったようだ…多分。

 


なぜ多分なのかというと…

 

 

南側の第2ゲートが出来るのは来週からだというのに、赤鹿は事前調査だと言って、ずっと南側でウロウロしていたのだ。

 

 

北の第1ゲートから離れることができない味玉は、赤鹿の詳細な行動は分からない。

 

 

休憩時間に様子を窺うこともできるが、貴重な休憩時間を、あんなアホに費やすことがバカバカしくて、それはしていない。

 

 

いやむしろ、またトラブルに巻き込まれるのがイヤで、正直見たくなかったのだ。

 

 

それに、赤鹿の言い草には心底ハラが立った。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「味玉ぐ〜ん、んじゃオラァ2ゲートに行ってくるがらぁ〜ダンプの誘導頼んだよぉ」

 

 

「はぁ?なに言っちゃってんだろうね、このアホエロオヤジは、とうとうボケまで入ったか?2ゲートが出来んのは来週だよ。今週いっぱいは北ゲートのみ」

 

 

しかし、赤鹿は涼しい顔で続ける。

 

 

「んなこたぁ分かってるだ。事前調査だべ。ゴミ収集車が何時くらいに来るか、近隣さんの車出勤・帰宅時間は何時頃か、障がい者マークの付いた車を駐車しているお宅がないか、生協の配達や訪問介護の車両が来ないか、来るなら何曜日の何時頃か…その他諸々、把握しとかねば、車両の搬入時間が調整出来ねっぺ」

 

 

「んぐっ!た、確かにそうだけど…」

 

 

 

赤鹿の珍しく真っ当な言い分に、味玉は返す言葉もない。

 

 

「やれやれ…味玉ぐんともあろう人が、そんなごとも分かんねようじゃ、この警備会社も落ちたもんだべぇ」

 

 

「だっ、だけど、そんなもんは、来週になって誘導やりながら把握していけばイイじゃんか。だいたい事前調査なんか出来る現場ないじゃんよ。いつもいきなり配置されて、いきなり本番スタートなんだからさ」

 

 

「そりゃ、そん時はしょうがね。しかし、今は事前調査できる。オラァ目の前に出来ることがあるならばやる。義を見てせざるは勇無きなりだぁ」

 

 

 

(このクソオヤジ!どうせ大量下校のJK集団が目当てのくせに!)

 

 

「だけど、あんたガードマンの本分はJKのスカートを風から守ることだって言ってたじゃんよ!誘導はオマケだって。よくそんなまともなこと恥ずかしげもなく言えんね」

 

 

 

赤鹿が憐れむような目をして言う。

 

 

「味玉ぐん…そんな過ぎ去った過去の細かいごと言ってっとオンナにモテねぞ」

 

 

(こ、こ、このクソオヤジめっ!)

 

 

「勝手にしろっ!」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

そうして、ほとんど顔を合わさず1週間が過ぎた。

 

 

昼メシは、同じラーメン屋に行くが、相変わらず味玉を大量に(20個)トッピングする赤鹿と一緒にされたくないので、カウンターの端っこと端っこに離れて座る。

 

 

そして土曜日の今日、15時に旧建物の解体に使っていたユンボを回送車に乗せて搬出し、解体作業は全て終了した。

 

 

工事工程が無事にひと段落したからだろう。ニコニコ顔の監督がやってきて上機嫌に言う。

 

 

「味岡くん。今日はもう何もないから上がっていいよ!来週から忙しくなるし」

 

 

「え?!ホントですか!ラッキー♬」

 

 

「うん。赤鹿さんもね、初めはどうなることかと思ったけど、南側の状況とかすっかり把握してくれて頼もしいよ。あれなら安心して任せられる」

 

 

「いや監督、あのアホエロオヤジは、そんなんじゃなく…」

 

 

 

(でも、確かに頼り甲斐はある。何も考えずに、ボーーーーっと突っ立ってるガードマンが多い中、そこまで近隣の交通状況に気を配れる人間はそうはいない。誘導もバッチリできるし…いつまでもヘソ曲げてないで仲直りすっかな。来週から協力して仕事やんなきゃだし)

 

 

「…そうですね。確かに赤鹿は優秀なガードマンです。一部を除けば、ですけど(笑)」

 

 

「うん?まぁ、とにかく頼りにしてるよ。んじゃ、来週もよろしくねっ」

 

 

 

監督も今日は早上がりして、どこかに飲みに行くのだろうか?いや、あのご機嫌ぶりは、同伴アフターキャバクラだな…。

 

 

そうだ!俺も仲直りを兼ねて、久々に赤鹿さんと飲みに行くか!

 

 

 

味玉は、南側でJK相手に奮闘しているであろう赤鹿に声をかけに行った。

 

 

今日は土曜日なので学校は休み。部活帰りのJKがチラホラ通るのみだ。ジャージ姿の子がほとんどのようで、赤鹿は苦虫を噛み潰したような顔で仁王立ちしていた。

 

 

(プッ!赤鹿のやつ…ザマァ見ろってんだ!)

 

 

「おぉ〜い!赤鹿さん。監督がもう上がっていいってよ〜!スカートのJKもいないし、久しぶりに飲みに行かない?例のお通しが『たけのこの里』で、注文してから隣のスーパーに食材仕入れに行くふざけたオヤジがやってる焼き鳥屋

 

 

(※シーズン1参照)

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「ん〜いいねぇ…って言いたいとこだけど、さっぎマリアちゃんから『らいん』さ来て、ジムに遊びに来ねか?って言われただぁ。んだもんでおら飲みには行げね」

 

 

「ナ、ナヌっ?!マリアちゃんからlineだとっ!グヌヌ…こ、このアホエロクソオヤジめ…いつの間に…」

 

 

「そうだ、味玉ぐんも一緒に行ぐか?」

 

 

「え?いいの?わ〜い!行く行く〜♡」

 

 

 

 

現場からバスで10分くらいのところに、そのボクシングジムはあった。大通りに面した路面店で、全面ガラス張りになっているため、ジムの様子がよく見える。

 

 

マリアちゃんは、既にひと通り練習を終えたようで、トレーニング後のストレッチをしていた。

 

 

ビッショリと汗をかいたTシャツからブルーのスポーツブラが薄っすら透けている。

 

 

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「赤鹿さん…ありゃCだな」

 

 

「んだな、間違いね」

 

 

 

土曜日だが、他に練習生はいない。

聞けば、まだオープンして間もないらしい。

 

 

ガラス越しにマリアちゃんを眺めてニヤニヤしているふたりに気づいた『C -cup』がツカツカと歩いてきた。

 

 

「さっそく来たね…って、何ニヤついてんだよ!この変態エロオヤジどもめっ!竹信さん紹介するからさっさとこっち来な!」

 

 

 

言われるがままジムに入ると、リングの奥に見るからにガラの悪そうな坊主頭のオッサンがいる。

 

 

「こちらが竹信さん。今はこんな身体だけど現役の時は、フェザー級だったのよ。新人王も獲った元日本ランカーよ」

 

 

「よろしくお願いしますっ!」

「よろすくお願いしますっ!」

 

 

ふたりして頭を下げると、竹信さんはニカッと笑うと

 

 

「まぁまぁ、そう固くならないで。気軽に楽しくやろうよ!」

 

 

と気さくに言ってくれた。

笑うと嘘のように柔和な顔になる。

 

 

「マリアちゃんから話は聞いてるよ。入会希望なんだって?」

 

 

「い、いえ!ちょっと見学に…」

 

 

味玉が言いかけたが、赤鹿がかぶせるように答える。

 

 

「はいっ!よろすくお願いしますだぁ!」

 

 

「え?赤鹿さん入会すんの?」

 

 

驚いて赤鹿の顔を振り返ると、興奮したのか目が血走っていて、かなりイっちゃってる。

 

 

「んだ!おらこの前で思い知っただぁ。やっぱす自己流じゃ限界があるべさ。プロの指導をうげて1流のガードマンになるだぁ」

 

 

 

(…いやいや。ガードマンとボクシングは関係ないから…( ̄▽ ̄;)💧)

 

 

「んじゃ、約束通りスパーやろっか。1発でも俺にクリーンヒット当てたら入会金無料ね」

 

 

 

 

何がなんだか分からないうちに、赤鹿と竹信さんのスパーリングの準備がされた。

 

 

軽くアップして、ヘッドギアをつけた赤鹿に、コーナーポスト越しにヒソヒソ声で話しかける。

 

 

「赤鹿さん。いくらアンタが鍛えてるって言っても、元プロ、しかも日本ランカー相手に敵うわけないじゃん。やめときなよ」

 

 

「うんにゃ。おらの実力を見てもらういい機会だぁ。まぁ見ててけろ」

 

 

 

ゴング代りのブザーが鳴る。

 

 

竹信さんは、丸っこい身体からは想像できない軽いステップで、距離を窺っている。

 

 

赤鹿は、例のしっかりと腰を落とした姿勢でまんじりともしない。

 

 

竹信さんが軽めにジャブを出す。赤鹿はガードしているとは言え、全く避けるそぶりもなく全部まともに食らってる。

 

 

パンチが重そうだ…これは効くぞ。

 

 

 

1分経過

相変わらず赤鹿は、全く動かない。

竹信さんも困惑気味だ。

全く手がでないド素人相手に、どこまでやっていいのか思案顔だ。

 

 

(何やってんだよ!赤鹿さん!手を出さなきゃ!)

 

 

じれったく見守る味玉の想いを他所に、そのまま第1ラウンドが終了した。

 

 

コーナーに戻った赤鹿に激しく詰め寄る。

 

 

「どうしたんだよ!え?!全く手が出てねぇじゃんよ!赤鹿さん自慢の『10cmの爆弾』をお見舞いしてやれよ!」

 

 

「味玉ぐん…ダメだ。オラァ生まれてこの方、人さ殴ったことねだ。どうしても手さ出ね」

 

 

「マ、マジすかポリス!?」

 

 

「すかす、このままじゃ入会金無料がパーだぁ。先週フィリピンパブで1時間延長3回もすたから金がねぇだよ、どうすべか…」

 

 

「アンタまだフィリピンパブなんか行ってんのかよ。また奥さんに張っ倒されるぞ」

 

 

「カカァは、娘が結婚すた後出てった。オラァやもめだ。んでもって、今ぁマリアちゃん一筋だぁ」

 

 

「は?え?そうなの…って、どこまでスットコドッコイなんだよアンタは。50過ぎの金もねぇおっさんガードマンと、ピチピチCカップJKが付き合えるわけねぇだろ。目を覚ませよ」

 

 

「んなこたぁ分かってるだ。おらぁただ、マリアちゃんのスカートを風から守れればそれでエエんだぁ……あ、そうだ。」

 

 

 

赤鹿は、何か思いついたようで、リングから降り、奥のロッカールームに引っ込むと、なにやらグローブで器用に掴んで持ってきた。

 

 

「竹信さん、申す訳ねぇがトランクスを脱いで、これを履いてくんねか?」

 

 

そう言って差し出した赤鹿の両グローブから、JKのスカートがヒラヒラ揺れている。

しかも相当短い。

 

 

(な、何をバカな…)

 

 

呆れる味玉。

見れば、マリアちゃんも頭を抱えて下を向いている。

 

 

「ふ…ぅうん、何かな?それは…」

 

 

 

笑顔を作ろうとしているが、さすがの竹信さんも、こめかみがピクついていて、頰は引きつっている。

 

 

「おねげぇしますだ!おらぁどうすても入会金無料をゲットしたいだぁ!この通りだすっ!」

 

 

土下座せんばかりの赤鹿の必死さに竹信さんも渋々頷いた。

 

 

超ミニのJKスカートに姿を変えた竹信さんが再びリングに上がると、数ラウンド飛ばしたブザーが再び闘いの開始を告げた。

 

 

先ほどのラウンドとは打って変わって、竹信さんの動きは更にシャープになった。

本気モードだ。

 

 

そして、その動きに合わせて『ヒラリ、ヒラリ』とスカートがなびく。

 

 

赤鹿の動きも変わった。

目でスカートの動きを追いながら、時折ピクリ、ピクリと三角筋と上腕三頭筋が動く。

 

 

ヒリヒリとした距離の取り合いが続く…

 

 

 


そして、ついにその時は来た。

2ラウンド終了間際、5秒を残す時だった。

 

 

 


右に左にステップを踏んでいた竹信さんが、初めて前に踏み込み鋭いジャブを出す。

 

 

赤鹿はそれを見事なヘッドスリップで躱すと、ジャブの引き際に右ボディフックを合わせようとした。

 

 

竹信さんが素早いバックステップでそれをかわした時、ちょうどスカートの股間部分がヒラリとめくれブリーフが見えそうになる。

 


その瞬間

 

 


ドゴォォオオッ!!

 

 

 

凄まじい音がして、赤鹿の『10cmの爆弾』が竹信さんの股間にめり込む…

 


「あ。ローブロー…( ̄▽ ̄;)💧」

「あ。ローブロー…( ̄▽ ̄;)💧」

 


味玉とマリアちゃんの声が揃った。

 


竹信さんは、リングにもんどりうって倒れ、青い顔で冷や汗をかいている。

 


赤鹿は…

 


両手を大きく突き上げ、勝利のポーズ。

 

 

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(…あのバカ!)

 

 

 


数時間後…

 


あのあと、しばらくして復活した竹信さんに、ボッコボコに殴られ、原型をとどめないほど顔の形が変わった赤鹿と味玉、そしてマリアちゃんの3人で例の焼き鳥屋にいた。

 

 

今日のお通しはハッピーターンだ。

 


赤鹿はローブローながら「クリーンヒットはクリーンヒットだ!」と頑として譲らず、なんとか入会金無料をゲットした。

竹信さんも殴りすぎたと反省したのかも知れない。

 

 

入会祝いに飲みに行こうということになったのだが…

 

 


「いや〜!しかしマリアちゃんが一緒に来てくれるとはなぁ〜、おじさん嬉しいなぁ〜!」

 


「しょうがないじゃん。このアホエロオヤジ、こんなに打たれた後なのにお酒飲むって聞かないんだもん。打たれた後のお酒は厳禁!下手したら死ぬよ!マジで」

 


「うんうん、ちゃーんと見張っといてね、このアホエロオヤジを。僕はマリアちゃんの焼き鳥を頬張る姿を見ながら楽しく飲むから♡」

 

 


焼き鳥を頼んだが、案の定隣のスーパーに買い出しに行ったオヤジは、まだ戻ってこない。

 


『本日のおすすめカツオのタタキ』を頼んだら、ひとりも客がいないのに「今日は売り切れた」とのたまった。

 

 


「あ、そうだ!来週のもうひとりのガードマン、誰になったか長谷部に聞いてみよ」

 


味玉は、ふと懸念事項を思い出し、会社に電話してみる。

 

 

「あー味玉くん。やっと手配がついたよ。今どこの現場も忙しくてさ」

 


「ふぅん…で?誰になったの?」

 


「ふっふっふ…権田原さん♡

 

 

「・・・。(ガチャ!ツー…ツー…)」

 

 

 

思わず電話を切ってしまった。

 

 

が…

 


(権田原さんかぁ…ま、いっか…。)

 

 

 

権田原は、交通誘導警備業務2級試験のとき合宿所で一緒になったガードマンだ。

見事に試験に落ちて、当時所属していた警備会社に居づらくなった権田原さんは、味玉の誘いで、この警備会社に転職してきたのだ。

 

 

(※シーズン1参照)

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焼き鳥屋のオヤジは、まだ帰ってこない。

 


あーあ

赤鹿と権田原…

また波乱の現場生活が始まるなぁー!

 


しかし、それも来週の話。

今日は楽しく飲もう。

 


赤鹿を見張りながら、烏龍茶をちびちび飲むマリアちゃんを眺めながら、味玉はお銚子を傾けた。

 

 


うん。

なかなかイケるな。

ハッピーターン♡

 

 

 

 

第5話に続く…

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

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ガードマン味玉のFunnyな1日♬・Season1

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2 第3話『彼女の名はマリア』

前回までのあらすじ

 

女子高生のスカートを風から守る赤鹿の必殺技『JKスカートセーフティング』を察知し、俊敏な動きで躱した謎のプレミアム女子高生。

赤鹿は、危うく警察に通報されそうになるが、味岡玉夫(通称味玉)の説得でことなきを得る。

しかし、プレJKは「その代わり実力を証明せよ!」と大量のJKが下校する裏通りへ味玉と赤鹿を導いた。

あまりのJK数に「無理だ!」と必死に止める味玉の忠告を退け、無謀な闘いの道を選んだ赤鹿の運命や如何に。

 

 

※第1話から読みたい方はコチラ↓

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連載アホ小説

ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

第3話 彼女の名はマリア

 

いったん収まった風は、再び吹き始めた。

最初は静かに…しかし、ゴングが鳴りコーナポストから振り返ると、猛然と敵に向かって突進するファイターの如く、その風の勢いは急激に増した。

 

 

ひしめき合ったJK集団の中では、自慢のフットワークと見えない左右の連打が使えない。果たして赤鹿は無事に『JKスカートセーフティング』を実行し、くだんのプレJKを納得させることができるのだろうか?

 

 

闘い序盤、味玉の心配を他所に、赤鹿は素晴らしい立ち上がりを見せた。

 

 

深めに腰を落とした姿勢のまま、両の足でしっかとアスファルトを掴み、至近距離からノーモーションの鋭い連打を繰り出していた。

 


「こ、これは…」

 

 


10cmの爆弾だ!

 

 


至近距離から繰り出す一撃必殺の強打『Burning Blood・高◯リョウ』の必殺パンチである。

 

 

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(赤鹿のヤツ、ここまでのワザを身につけていたのか…しかも、それを連打で。イケる…これはイケるぞっ!)

 


どうだい!え?この動き。なかなかやるだろう?

 

 

 

とばかりに、味玉がドヤ顔でプレJKを振り返ると、彼女は赤鹿の闘いには目もくれず、その辺から引き抜いたエノコロ草で、これまたその辺をウロついていた黒野良猫をウリウリとじゃらしているではないか!

 

 

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「ちょ、ちょっとプレちゃん!何やってんの?ちゃんと見てあげてよ、赤鹿さんの勇姿を…」

 


「は?ナニそれ?アタシのこと言ってんの?アタシ『プレちゃん』なんてイカれた名前じゃないんですけど」

 


「あ、ごめん…そうだった。つい妄想と現実がゴッチャになって…ええと、では、なんとお呼びすれば?」

 

 


プレちゃんは、黒猫の方を向いたまま面倒くさそうに、そして心底イヤそうに答えた。

 


「…マリア、漢字で書くと…やっぱ、いいや、説明するの面倒くさいから。それと変な妄想しないでくれる?キモチ悪いから」

 


味玉は、構わず会話を続ける。

 


「へぇ!アリアちゃんかぁ〜♡ いいねぇ〜カッケーじゃん。あ、もしかして御尊父殿はクリスチャンかな?」

 


「さぁてね… おら!ウリウリ!」

 


マリアちゃんは、相変わらず黒猫に夢中だ。

 


「えー!いいじゃん!教えてよぉ〜…って、ん?おいっ!おまえヤマトじゃねーかっ!」

 

 

 

よく見ると、その野良猫は、数年前に突然味玉の前から姿を消した『クロネコのヤマト』ではないか。

 

 

※シーズン1 参照

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「おまえ、今まで何処ほっつき歩いてたんだよ〜!

心配した…いや、あんましてなかったけど、元々野良だし…でも心配したぞ、一応な!」

 


「へぇ、おっさんこのコのこと知ってんだ。しばらく前からアタシに懐いてきてさ…それよりいいの?あの変態アホエロオヤジほっといて」

 

 

「…え?」

 

 

 

すっかり忘れていた。

 

 

(そうだっ!赤鹿さんはっ?)

 


振り返ると、スタミナ切れでヘロヘロになった赤鹿が汗みどろでもがいていた。

 


未だ気温は下がらない。それどころか、逆に雲ひとつない快晴の残暑の太陽が容赦なく、そして残酷に赤鹿の体力を削り取っている。

 


(…もつのか?…最後まで。)

 


腕に着けるのが嫌いで、誘導灯に巻いてある腕時計を見る。

 

 

午後3時前。

 


(…もう少しだ。)

 

 


少しずつまばらになり始めたJKの群れは、やがて嘘のように引いた。

 

 

5時限目が終わり、ホームルームを済ませた3年生たちの下校ラッシュは、ひと段落したようだ。しかし、まだ6時限目の授業を残した1・2年生がいるはずだ。

 

 

赤鹿が、文字通り足を引きずりながら味玉の元に戻ってくる。唇が青い。チアノーゼを起こしているのだろう。

 

 

「赤鹿さんっ!もう無理だ!この試合棄権しよう!」

 

 

しかし、赤鹿は静かに微笑むと首を横に振った

 

 

「何を馬鹿げたこと言ってんだぁ味玉ぐんよぉ。おらぁこの闘いは投げね。ちと午前のスクワットが効いてるだけだぁ。まだまだいけるっぺ」

 

 

 

しかし、強がる言葉とは裏腹に赤鹿の額から流れ落ちる汗の量は尋常ではない。明らかに熱中症の症状だ。

 

 

「とりあえずコレを飲め」

 

 

味玉は、下げていた腰袋からスポーツドリンクのペットボトルを取り出すと、赤鹿の顎を上げさせ、左人差し指を添えて空中から赤鹿の口に注ぎ込んだ。

と、その時、背後からマリアちゃんが冷たく言う。

 

 

「アタシ、もう行くね」

 

 

「え?」

「え?」

 

 

「今から知り合いのジムに出稽古。今日は、元日本ランカーの竹信さんがスパーやってくれることになってんの。男子だしウェイト全然違うけど、今度の対戦相手かなりのハードパンチャーだから無理言ってお願いした。遅れたら失礼でしょ?」

 

 


口をポカンと開けて呆けるふたりを置いて、マリアちゃんはそう言い残し、スタスタと行ってしまった。

 

 

「…赤鹿さん、もうやめよう。マリアちゃんがいないんじゃ、この試合の意味は…ゼロだ。それに赤鹿さんの体力も限界だ。『10cmの爆弾』だって『10cmの中折れ不発弾』みたいになってんじゃん。これ以上続ければ、確実に熱中症になって下手すりゃ労災扱い、本社で管制やってる長谷部にまたネチネチ言われるぞ」

 

 

「うんにゃ、オラァ投げね。最後まで闘う。それがホンモノのガードマンだ。それに、オラァ中折れなんかしね。まだまだ現役、それに12cmはある」

 

 

「あ、赤鹿さん…」

 

 

 

赤鹿の鬼気迫る表情に気圧された味玉は、暫し言葉を失うが、やがて力強くこう言った。

 


「分かった!もう止めねぇ!いや、むしろ応援するぜ、あと少しじゃねぇか、思いっきりやって来い!」

 

 

 

そして再び、チラホラと姿を現し始めたJKの群れに、重くゆっくりと、しかし確かな足取りで歩を進めた赤鹿が、その流れに身を委ねる。

 

 

(頑張れ!赤鹿さん!)

 

 

 

 

 

10数分後…

 

 

味玉は、エアコンの効いた詰所の長イスに赤鹿を横たえ、上着のボタンを外してズボンのベルトを緩めた。そして、金物屋からお中元代りにもらったウチワでパタパタと風を送る。

 


「なぁ〜だから言ったじゃんよ〜、やめとけってさぁ…熱中症はクセになるから厄介なんだよ」

 

 


あのあと、あまりの暑さと激しい体力の消耗で、志し半ばにして崩れ落ちた赤鹿を、交通誘導警備業務2級試験のため習得した負傷者搬送方法とは程遠いやり方で詰所まで運び込んだ。

 

 

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肩に抱えるには、あまりにも赤鹿の汗がキモチワルかったため、両足首を持ってアスファルトを引きずってきたのだ。

 


途中、ヤマトがその姿を一瞥し、呆れたようなあくびをしたあと『ひょい』とブロック塀に飛び乗り、去って行くのを見たが、追いかけることは諦めた。また、いつか会えるだろう。

 

 

長イスに横たわった赤鹿は、なにやら時おり、うわ言のように無念の思いを呟いてるが、支離滅裂過ぎて解読はできない。おぼろげながら意識はあるようだ。

 

 

(…そこまでヒドくはないけど…念のため救急車を呼んどくか?)

 

 

などと考えていたその時、監督が現れた。

3時の一服休憩時に『どうやらガードマンがひとり倒れたらしい』と噂するユンボのオペさんと手元の土工さんのやり取りを小耳に挟んだようだ。

 

 

「あ〜困るよ味岡く〜ん。まだまだ残暑が厳しいから、水分・塩分とこまめな休憩をとるように!って散々朝礼で言ったじゃないか〜。せっかくここまで無事故・無災害で来たのにさぁ〜」

 

 

「す、すみませんっ!ボクの管理監督能力の甘さと、こいつの度を超えた変態アホエロオヤジさ加減が原因です…海より深く反省してます」

 

 

しかし、監督は渋い顔で続ける。

 

 

「でも困ったなぁ…来週から住宅街に面した現場の南側に新しく第2ゲートを作るんだよね。だんだん車両も増えて来るから、2t車とか小さな車両は第2ゲートから搬入する予定なんだよ。そっちにもガードマン常駐させることになるから、今度の人は、まともな人だったらいいなって期待してたのに…これじゃ、明日からは来れないね。しょうがないけど、また別の人を配置してもら…ぅわっ!?

 

 

 

監督が言い終わらないうちに、赤鹿はバネ仕掛けの人形のように跳ね起きた。

 

 

詰所の天井パネルに頭がぶつかるかと思うくらいの勢いだった。

 

 

「監督さんっ!オラァ大丈夫だっ!熱中症なんかじゃねっ!バック誘導の練習しながら後ずさりしてたら、ついうっかりカラーコーンの先っぽが、持病のキレ痔に突き刺さっただけだぁ!でも、もう大丈夫。オイッチニサンシ!オイッチニサンシ!…ね♡

 

 

驚いた監督は、訝しげに味玉の顔を窺おうとするが、味玉はアホらしすぎて、ただただ呆れてうなだれるばかりであった。

 

 

(この変態アホエロオヤジめ……)

 

 

 

こうして、この現場は南北にそれぞれゲートを持つ、ガードマン3名体制の現場となった。

味玉が北、赤鹿が南ゲートをそれぞれ担当、もうひとりは搬入車両に合わせて南北ゲートを行き来するサポートメンバーだ。

 

 

(次は、誰が来ることになるのだろう…)

 

 

味玉は、何人か心当たりの顔を思い浮かべたが、すぐに考えるのをやめた。

 

 

 

 

イヤな予感しかしない…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

 

第4話『Cに恋する5秒前』に続く…

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

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ガードマン味玉のFunnyな1日♬・Season1

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2 第2話『プレミアムな彼女』

前回までのあらすじ

およそ3年ぶりにJK好きの赤鹿と同じ現場で働くことになったガードマンの味岡玉夫(通称味玉)。

マンモス女子校にほど近いこの現場で赤鹿と働くのは大いに不安だったのだが、赤鹿はこの3年で変わっていた。ただのJK好きから、JKのスカートを風から守ることを使命とする変態ガードマンに変態していたのだ。

味玉と赤鹿のFunnyな毎日が再び始まる。

 

 

※第1話から読みたい方はこちら↓

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連載アホ小説

ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

第2話 プレミアムな彼女

 

 

午前の車両は11時を回るころ無事に終わった。ただし赤鹿は、午前の休憩に入ったまま、なかなか戻って来ず、お陰で味玉はろくに休憩も取れなかった。

 

 

コンクリートガラを積んだダンプが、処理場まで行って荷を降ろし、再び帰ってくるまでおよそ1時間〜1時間半ほどだ。道路状況や処理場の混雑具合によって、ダンプの戻り時間は変わるので、本来なら30分弱の休憩を交代で回し、次の搬入に備える。

 

 

しかし、赤鹿は1時間経っても戻って来ない。味玉は9月も半ばとはいえ、未だ残暑の厳しい日陰のない路上に立ち、背中を流れる汗にイライラしながら赤鹿の戻りを待っていたのだ。

 

 

おそらく、通学するJKがいないため、やる気が出ないのだろう。なにしろ赤鹿の本来業務は車両誘導ではなく、JKのスカートを風から守ることなのだ。

 

 

ようやく赤鹿が戻ってきた時、さすがの味玉も『どこに行って何してたんだよ。この変態エロおやじっ!』と詰め寄ったが、赤鹿は物ともせず『向かいの公園でスクワットをやっていた』とシレッとのたまうのだった。

 

 

しかし、さすがに悪いと思ったのだろうか『午後のダンプを搬出したら自分がゲートに立つので、味玉くんは、ゆっくり休憩でもしていてくれ』とも言った。

 

 

まぁ、本当の狙いは、下校する女子高生だろうから釈然としなかったが、せっかくのご厚意。お言葉に甘えて、そうさせてもらおう。そしてふたりは、少し早めの昼休憩を取ることにする。

 

 

「赤鹿さん、少し早いけどメシにしよう。どうする?弁当かなんか持ってきた?」

 

 

「うんにゃ持ってきでね。どっかに美味い店ないのが?」

 

 

「あーじゃぁ俺がいつも行くラーメン屋でも行こうか。結構美味いんだよ」

 

 

「お!いいねぇ~、ラーメン屋ならちょうどいいべ」

 

 

 

何がちょうどいいのかよく分からなかったが、赤鹿の言うことをイチイチ気にしていると面倒くさいので、スルーしてラーメン屋に向かった。

 

 

古い民家の1階を店舗にしているカウンターだけのラーメン屋の暖簾をくぐる。味はいいのだが、住宅街に建つ立地もあってか、いつも客はまばらだ。今日は、昼時には少し早いので尚更である。

 

 

「マスター、オレいつものネギ味噌チャーシューね。麺固め、味濃いめ、玉ねぎ増し増しで!」

 

 

 

味玉は、エアコンの風の吹き出し口の真下に陣取るとサッサと注文し、カウンターの箇所箇所に備え付けてあるピッチャーのひとつから、グラスに並々と水を注ぐと一気に飲み干した。そしてすぐ2杯目を注ぎ、今度はゆっくり口に含む。

 

 

「んならばオラァもおんなじの。んでトッピングに味玉20個で!」

 

 

「ブっ!」

 

 

 

味玉は口に含んだ水を思わず吹き出す。

 

 

「あんた今なんつった?味玉20個って聞こえたんだけど?オレの聞き間違いだよね」

 

 

 

怪訝そうな顔をした寡黙なマスターが、ふたりのやりとりを盗み聞く。

 

 

「うんにゃ。間違いなんかじゃね。さっきの公園スクワットでイヤってほど大腿筋イヂメ抜いたからタンパク質補給して筋肉の超回復だべ。トレーニング後30分以内のタンパク質摂取はアスリートの常識だっぺ?」

 

 

 

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

あーはいはい。

もうどうでもいいや。

 

 

 

やがて、チラホラやってきた客が、カウンター越しに差し出された赤鹿注文のラーメンを見て『ギョっ』としている。他人を装いたいところだが、お揃いの制服がそうはさせない。

 

 

黙々と…いや、ズルズルと派手な音をたて、ラーメンをすすった。

 

 

 

 

午後2時

最後のダンプを搬出し、本日の業務が終了した。

今日は燃料車も来ないから、可能性があるとすれば、注文していた土のう袋やらガムテープやらを金物屋が届けにくるくらいだ。

 

 

手渡しで受け取れるので、わざわざ現場内に2t車を搬入する必要もない。本来、路上での荷降ろしはルール違反なのだが、国道を走る後続車を止め、歩行者が行き交う歩道をバック誘導で横切らせるより圧倒的に危険は少ない。交通規制課のパトカーも、自転車で走る警らの巡査も大目に見てくれるだろう。

 

 

人ふたりが、すれ違うことができるくらいの隙間を残してゲートを閉め、赤鹿に確認する。

 

 

「じゃ、悪いけどオレ休憩入るわ。赤鹿さんゲート見ててくれるんだよね」

 

 

「ああ任せとけっ!ゆっくり休んでけろっ!」

 

 

 

午前とは打って変わってハツラツとしている。

 

 

「…まぁ、ホントはゲートに立ってる必要もないんだけど、赤鹿さん初日だし、監督にアピールしといた方がいいでしょ?『ボク仕事してますよ!』的な」

 

 

「アピールでもバザールでもねぇ。オラァやるでござーる!」

 

 

 

そう言って赤鹿は悠然とゲートに立った。

 

 

 

ガードマンボックスでエコーを『ぷかぷか』させながら、しかし味玉はどうにも落ち着かない。

 

 

(ん~…もうすぐ下校時間だよなぁ。朝の様子だと大丈夫とは思うんだけど、赤鹿のことだ。どこからともなくトラブルと喜悲劇を呼び寄せる…ホントに大丈夫か?)

 

 

やがて、ケツの座りが悪すぎて我慢できなくなった味玉は、そっとゲートに近づき、仮設トイレの陰から赤鹿の様子を伺う。

 

 

学年ごとに下校時間が違うのだろう。部活動などがあるJKもいるはずだから、朝に比べると意外なほどJK通りはまばらだ。

 

 

しかし、それでも絶え間なくやってくるJKのスカートを風から守り続けるのは至難の業であろう。いくら鍛えているといっても、鉄筋屋時代に腰をイワした50男だ。スタミナも心配である。

 

 

しかし豈図らんや。軽快なフットワークとローブロー気味の左右のフックで、赤鹿は次々とJKスカートセーフティングをこなしていく。

 

 

(ほう!なかなかやるもんだな。)

 

 

しかし味玉は、やがておかしなことに気づいた。赤鹿は時々、JKが近づいても、ぼうっと呆けていることがある。焦点の合わない腐ったサバのような目で虚空をぼんやり見つめたまま突っ立っているのだ。

 

 

(あ!あの野郎!さてはJKを選り好みしてやがるな!ウヌヌ…許せん!)

 

 

味玉は、そう判断すると、ツカツカとゲートに歩み寄り赤鹿の右肩を「グイっ!」っと引っ張り、場内に引きずり込んだ。

 

 

「おい!この変態エロおやじっ!テメェJKを選り好みしてやがるな。見損なったぜ赤鹿さんよ。JKスカートセーフティングは、ガードマンの社会的任務じゃなかったのかよ!俺はあんたはもっと仕事に誇りを持った人間だと思ってたよ。え?!どうなんだ?!」

 

 

 

しかし、赤鹿は『ヤレヤレ』といった表情で応える。

 

 

「ちがうだぁよ、味玉ぐん。オラァが見逃したじょす高生、ありゃぁ『ぶるまぁ』だ」

 

 

「え?ブルマ?マジすかポリス?…そんなことが…」

 

 

「んだ、オラにぁ分かる」

 

 

「で、でもどうやって…」

 

 

「ん~…ま、初心者はアレだな『ぼでーらいん』だな。慣れれば足から上半身・首周りの肉付きからして明らかに不自然なウエストの膨らみが分かるようになる」

 

 

「マ、マジで?」

 

 

「んだ。でもオラァ位の『らべる』になるとそこで判断するわけでねぇ」

 

 

「す、するとドコで?」

 

 

「表情だ」

 

 

「ひょう…じょう…」

 

 

「んだ。『あぁ…ワタシ今日『ぶるまぁ』履いてない…駅の階段や、強い風が吹いたら見られちゃうかも?キャっ💕(//∇//)』みたいな乙女の恥じらいと、ほんの少しの期待が入り混じった複雑でデリケートな表情だ。ほんのり色づいた頰、あたりを伺う不安げな視線、一見しただけでは分からない緊張する眉間のシワ…その他諸々だ」

 

 

「ス、スゲェ!あんたプロだな!ガードマンの中のガードマンだ!」

 

 

「ふっふっふ…よせよ味玉ぐん、照れるじゃねぇか」

 

 

 

そう言って再びゲートに立つ赤鹿の背中に、味玉は『漢(オトコ)』という文字が浮かんで見えた。

赤鹿のJKスカートセーフティングが再開され、見つめる味玉の胸に熱くこみ上げる何かが生まれかけた時…

 

 

その人は現れた

 

 

 

スラリと伸びた脚

 

 

ひざ下の脛が長い

 

 

華奢だが、そのゴム毬が弾むような軽い足取りはバネの強さを感じさせる。

 

 

透き通るような色白の肌に、明るさを抑えたアッシュの髪は肩にかからない。

 

 

歩くたび、その艶やかな髪はしなやかに揺れる。

 

 

背筋がピンと伸びた、やや長身のそのプレミアムなJKは明らかに他のJKとは違う。

 

 

(こんな娘いたっけか?オレがこんな娘を見逃すはずがない)

 

 

 

不思議に思う味玉を余所に、赤鹿はひときわ大きく、そしてゆっくりと息を吸い込み、姿勢を正した。

 

 

空手の息吹だ。

赤鹿の丹田に気が集まるのを感じた。

ヒリヒリとした緊迫感が辺りに弥漫する。

 

 

『 ス… ス…  』と歩みを進めるプレミアムJKの動きは、なぜかスローモーションに映る。

 

 

あと10m…5m…3m…

 

 

ざわつき始めた午後の海風が、最初は柔らかく、そして急激に磁力を孕み、ゲートに向かって突進してきた。

 

 

 

『ずちゃっ!』

 

 

 

赤鹿の右足がアスファルトを焦がす。

 

 

 

「!?」

 

 

 

しかし、赤鹿が踏み込んだその先には、プレミアムJKの姿はなく、くるりと反転した状態で赤鹿の左斜め前、制空圏外で赤鹿に対峙していた。

 

 

「あにすんだよ。この変態エロおやじ。取り敢えず警察に通報だな」

 

 

 

クールで少しハスキーな声色は、それでもよく通る不思議な音色だ。

 

 

「え?ちょ、ま、おらぁただ…その…風を守る…スカートから…セーフティングで…」

 

 

「は?アンタ変態なだけじゃなくて、ネジも何本か緩んでるね。警察の他に救急車も呼んでやろうか?」

 

 

 

慌てて味玉が駆け寄り、割って入った。

 

 

「ちょ、タンマ、タンマ!確かにこのオッサンは変態でネジも緩んでんだけど、そうじゃないんだ!これには深い訳が…実は斯く斯く然々…」

 

 

 

工事現場で警察沙汰はよろしくない。必死で説明する。

 

 

「ふうん、そうなんだ…でも、アンタにそこまでの力があるかしら?」

 

 

 

にわかには信じてもらえないと思いつつ説明したのだが、あっさりと受け入れてくれた様子。

 

 

「そうね、じゃアタシについて来な」

 

 

首を傾げ、暫しの黙考の後、プレミアムな彼女はそう言うと、拍子抜けする味玉らを残し、さっさと現場の裏手、住宅街に挟まれた入り組んで狭い裏路地に向かう。

 

 

慌てて彼女を追っていったその先に、にわかには信じられない光景が広がっていた。味玉と赤鹿の声が揃う。

 

 

 

「なんじゃごらぁ!」

「なんだべごらぁ!」

 

 

 

そこには、餌に群がる蟻のような無数のJK群が、キャッキャうふふと嬌声をあげながらひしめきあっていた。

 

 

「朝は正門から学校に入んなきゃだけど、裏門からこっち抜けた方が駅への近道なんだ。帰りは大体みんなこっち通ってる。アタシは今日、知り合いのジムに出稽古に行く予定があったから大通りを通ったんだけどね」

 

 

(なるほど。そうだったのか…だからゲート前は、下校時間のJKがそれほど多くはなかったんだな)

 

 

納得する味玉らにプレJKは続ける。

 

 

「さぁオッサン。そこまで言うなら見せてごらんなさいよ、アンタの実力を」

 

 

 

腕を組み、鋭い眼光で赤鹿を睨んだプレJKが言葉を放つ。

 

 

「赤鹿さん、無理だよ!こんだけの数のJK。それに、ここまで混み合っていたら自慢のフットワークも使えない。素直に負けを認めよう」

 

 

 

しかし赤鹿は、ゆっくりと味玉の肩に両の手を乗せ、こうつぶやいた。

 

 

「味玉ぐん…オラァ行かなくちゃなんね。この場所には日本一…いや世界一の数のJKがオラァを待っていてくれるんだ。だから…行かなくちゃ」

 

 

「赤鹿さん!」

 

 

「ありがとう」

 

 

 

そう言って、赤鹿からJKの群を塞ぐように立っていた味玉を、その肩に乗せた両手でゆっくりと横にどけて、静かに踏み出した。

 

 

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「赤鹿さん!」

 

 

味玉の頬を涙が伝う。

 

 

(こうなったら最後まで見届けよう。これがガードマンの真の生き様だ。そしてオレは、この現場の警備隊長なんだから…)

 

 

右脳の隅っこで『いや、それガードマンの仕事ちゃうから』と呟く声は限りなく小さく聴こえない。

 

 

 

ゆらり ゆらり

 

 

滑るようなスッテプを踏み、JKの群れの中に入っていく赤鹿。やがて、路地のほぼ中央までたどり着くと立ち止まり

 

 

 

静かに呼吸を整えた

 

 

風が止まった

 

 

まるで、闘いのゴングが鳴る前の一瞬の静寂のように。

 

 

 

 

第3話↓↓↓に続く…

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2

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ガードマン味玉のFunnyな1日♬・Season1

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ガードマン味玉のFunnyな毎日♬ Season2 第1話『阿呆の背中にゃ鬼が哭く』

連載アホ小説

ガードマン味玉のFunnyな毎日♬ Season2

第1話 阿呆の背中にゃ鬼が哭く


気がつけば、あと3ヶ月ほど…この12月で丸4年が経とうとしている。



味岡玉夫(通称味玉)がガードマンになってからの年月だ。
最初は、軽いアルバイトのつもりで始めたのだが豈図らんや、コレが意外に面白い。



浅草のゲストハウスの近くの工事現場では、パツ金プリンのネーちゃん達と楽しく挨拶を交わした。



目の前が保育園だった現場の警備では、目を輝かせながらユンボやクレーンを見上げる子供に話しかけるフリをして、艶っぽい人妻たちと仲良しになった。



若い女性だけではない。
何故か分からぬが、味玉は熟女にかなりモテる。



監督に見つかったら怒られてしまうと思っているのだろう。『しぃ〜!』とばかりに人差し指を唇に当て、固く握った飴ちゃんを、そうっと味玉のズボンのポッケにねじ込むお婆ちゃん。



会うたびにタフマンを差し入れてくれる、3輪自転車にまたがった元気なヤクルトレディ(おばちゃま)。



『これ食べて♡』と、皿に乗った丸々一枚のピザを持ってくる有閑マダムまでいた。



休憩時間にはまだ早く、ピザの処遇に苦慮したが、せっかくのご厚意だ。ハムスターよろしく必死で頬張ると、味玉を見た通行人が『ギョっ!』としていた。さすがにピザを喰いながら歩行者誘導するガードマンは初めて見るのだろう。



楽しいのは近隣住民との触れ合いだけではない。



ガードマン仲間も個性的なヤツが多い。ひとりで現場に配置されることも多いから、そうそう他のガードマンに会う機会もないけれど、強烈なインパクトのある人間は簡単には忘れられない。



女子校生好きの赤鹿さん。



最初に可笑しなワンセンテンスをつけないと喋り始められない権田原さん。



他にもアホなヤツは山ほどいる。




そして、1ヶ月ほど前から派遣された今の現場もなかなかの現場だ。



海にほど近い住宅街。国道に面したマンション建築現場の近くには、私立のマンモス女子校がある。少し早出して、朝礼前に歩道の掃き掃除をしていると、ちょうど通学時間と重なる。



すでに、何人か挨拶を交わす顔見知りのJKもできた。あと1ヶ月もすれば、仲良く会話できる子が出来るだろう。



味玉は毎朝、JKの爽やかなレモンの香りに包まれてココロの中でニヤついていた。



先週までは、コレがまた強烈な個性の持ち主、万頭くんとふたりで仕事にあたっていた。しかし、残念ながら監督にダメ出しをされてしまい、今日から新しいガードマンが配置される。




(さぁて、今度はどんなヤツが来るのだろうか?)



ガードマンボックスのパイプ椅子に腰かけ、そんなことを考えながら咥えたエコーに火をつけようとした時。



「おはよう〜!味玉ぐぅん!久しぶりだぁなぁ〜」



「なんだ…アンタかよ(笑)」




独特の東北訛りで、顔を見るまでもなく誰だか分かった。JK好きの赤鹿さんだ。元鉄筋屋の50男…いや、それが3年以上前だから 55歳くらいになるのだろうか。中身は変態なのだが見た目は中々の男前だ。



「ちょうど今、赤鹿さんのことを考えてたんだよ。やっぱしオレって冴えてる男だな。」



「そうなの?でもヒドイなぁ。『なんだ』はないよ〜『なんだ』は〜。味玉ぐぅん〜。一緒にじょす高生動画を鑑賞した仲じゃないかぁ。一夜を共にしたこともあるしぃ〜」




(※ シーズン1「第8話 走レ!エロス」参照)
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「オェ〜!朝から気持ち悪いこと言うなよ。でも、まぁ…今日からよろしくね」




さっそく赤鹿の口をついて出る「女子校生」という言葉に、若干の不安を感じながら、ふたりで朝礼会場に向かった。



(何しろ ここは女子校の近く、しかもマンモス校だ。女子高生がわんさか通る。何も事件が起きなきゃいいけど…ま、起きたら起きたでオモロイからいいんだけど…)



細長くL字型をした工事現場は、まだ躯体は立ち上がっておらず、以前建っていた建物の解体がようやく終盤にかかる頃だ。形はいびつだが、更地に近いため結構広く感じる。



朝礼を終え、赤鹿にざっと説明をする。



「赤鹿さん、見ての通りこの現場は、まだ始まって1ヶ月くらい。そろそろ以前建っていた建物の解体が終わるんだ。本格的な工事はこれからだから、今はまだ車両は少ない。壊したコンクリートガラをダンプが搬出するだけ…うーんと、1日2台が3回転で計6台。あとは、3日おきに燃料のローリーが来るくらいだからそんなに忙しくはないんだ」



「なんダァ楽勝じゃねぇかぁ。でも、したら何で今日はガードマンふたりなんだべか?」



「うん、ゲートのある大通りは国道だから結構交通量が多くてね。それに歩道も狭くて…言いたくないんだけど、近くに女子校があるから人通りも多い。監督が安全第一だってんで2名体制にしてるんだよ」



赤鹿の目がキラリと光った。



「ナヌっ!じょす高だって!味玉ぐん、なんでもっと早くオラァをこの現場でに呼んでくんなかったんダァ!」




(全く…だから言いたくなかったんだよ。けどまぁ黙っていても、すぐに分かることだからしょうがない)



「いやね、先週までは万頭くんと一緒にやってたんだよ。だけど万頭くん出禁になっちゃってさ」



「ナヌっ!あの万頭?どこに行っても1日やそこらで出禁になるあの万頭かぁ⁈」



「そう、その万頭…この1ヶ月大変だったよ。ほら、この現場は海も近いし、現場の南側は戸建ての住宅街だから海まで高い建物がないじゃん?遮るもんがない上に現場の両隣りに高層のマンションがあるせいで、ゲートん所にちょうど風が吹き抜けるんだよね。結構強い風が。万頭くん、ダンプの運ちゃんから伝票を受け取り損ねて、風で飛ばされて、へんてこりんな阿波踊りみたいな格好しながら伝票追っかけて行っちゃったんだよ。そのまま1時間くらい戻ってこなかったね。結局伝票は見つからず手ブラで戻って来た」



「ん〜…いかにもアイツのやりそうなことだっぺ」



「他にも造花のプランターに毎日一所懸命水やったり、水道のホースをドラムから伸ばして来いっつったら、グッチャグチャに絡ませて、ほどくのに30分近く奮闘してみたり…ま、現場は暇だしオモロかったからいいんだけどね…最後は自転車でヨロヨロ走ってるおじいちゃん守ろうとして車道に飛び出してトラックに轢かれそうになったんだ。監督がちょうどそれを目撃しちゃってさ。今まで目をつぶってくれてたけど、とうとう言われたんだ『味岡くん、ありゃダメだ。ガードマンにガードマンつけなきゃいけなくなる』ってね。それで出禁になっちゃった」




しかし、赤鹿は味玉の話には上の空で、虚空を睨みブツブツ言っている。



「じょす高生に、強い風…あぁ…オラァこの時にために生まれて来だのかもしんねぇ…」




あ、赤鹿さん…

( ̄▽ ̄;)💧




「あのね赤鹿さん、ヘンなこと考えてんじゃないよ。もう動画撮影はしないからね。捕まるよ、いい加減にしないと」




しかし赤鹿は急に真面目な顔になり、こう言った。



「うんにゃ違うだよ味玉ぐん。ガードマンつうのはやっばり社会的認知度が低い職種だっぺ?」



「ん?…まぁそうだけど…」



「けどオラァ思うだ。ガードマンっつうのは市民…いや、じょす高生の安心・安全を守る大事な仕事だぁ。んで、オラァ例の浅草の現場で味玉ぐんと別れてから今日まで、血の滲むような修行さしだんだよぉ」



「は?修行?…まぁ確かにガードマンは大事な仕事だけど…修行って何よ、修行って。そんなことしなくても赤鹿さん前から誘導完璧じゃん」



「ばかぁ言っちゃいけね。ガードマンの本来の役目は車両誘導じゃね。風にめくれるじょす高生のスカートをサッと押さえるごとだ。誘導はオマケだ」



「はぁあ〜?アンタこそ何馬鹿なこと言っちゃんてんだよ、この変態エロボケハゲ親父がっ!あ、ハゲてはいないけど…そんなことしたらマジで捕まるっつうの!」



「だから修行するんでねぇの。見てけろ」



そういうと赤鹿はベルトを外し、制服の上着を『バッ!』とはだけ、味玉に背中を向けた。



(う?!な、なんだこの背中…まるで鬼の顔のような…)



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「どだぁ?味玉ぐん。見事な『ひっとまっする』だんべ?それからホレ」



そう言うと、今度はズボンの裾を捲り上げ、装着していたパワーアンクルのマジックテープをベリベリ言わせて外し、味玉に向かって放り投げてきた。



「ウぉっ⁉︎なんじゃこらっ⁉︎」




受け止めきれず、危うく鉄板の上に落としそうになる。



「片足で5kgある。風呂入る時と自慰する時以外は、ずっと着けたままだぁ。まぁ見とってけろ」



そう言うと赤鹿はゲートを開け、その中央に立った。




左足を前に、右足のかかとは少し浮かし気味だ。軽く前傾姿勢をとるその姿は、確かに一寸の隙もない。



そして、歩道の左方向から駆けてくる、おそらく遅刻した女子高生が見えると、赤鹿は更に数センチ重心を落とした。



交通量が多いはずの国道が、何故か静寂に満ちた気がした。




『ゴクリ!』




味玉のつばきを嚥下する音がやけに大きく響く。



そして、女子高生が今まさにゲートに差しかかろうとしたその時、気まぐれなエロスの女神が突風を呼んだ。



(あ、めくれる!)



味玉がそう思った瞬間。




『ずちゃり!』




安全靴がアスファルト鈍く擦る音とともに、女子高生の斜め左後方に回り込んだ赤鹿の左手が一瞬消えた!…かと思った瞬間、赤鹿は元いた位置に戻り涼しげな顔をして立っている。



女子高生は、何が起きたか全く気づかぬ様子で駆けて行き、学校の正門がある右方の角を曲がって姿を消した。
もちろんスカートはめくれていない。



「ひ、左が全然見えなかった、踏み込みスピードもパネぇ…ス、スゲェ……いや、つうか、アンタ本物の馬鹿だな」



「ふっふっふ…馬鹿で結構。オラァ自分の死に場所を見づけた。この現場でオラァ死ぬ」




あ、赤鹿さん…


( ̄▽ ̄;)💧





そうして再び赤鹿とのガードマン生活が始まった。



確かに、あれならば誰にも気づかれず女子高生のスカートを風から守ることができるだろう。



そう思った味玉の予想は、その日の下校時間、早くも崩れることになるのだが…。




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第2話に続く…
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連載アホ小説 最終話 『ご安全にっ!』

連載アホ小説

ガードマン味玉のFunnyな1日♬

 

最初から読みたい人はコチラから♬

 

第1話 『漢の闘い』

第2話 『闘いの後には』

第3話 『みっちゃんとマキさん』

第4話 『焦げとヤマトと満月と』

第5話 『あゝ愛しの権田原』

第6話 『無差別級負傷者搬送』

第7話 『浅草駅前留学』

第8話 『走レ!エロス』

 

 

 

前回までのあらすじ

ガードマン味岡玉夫(通称味玉)は、東北出身ガードマン 赤鹿とともに浅草の道路工事現場に配置された。外国人に人気のゲストハウスからほど近いその現場は、ムチムチプリンのフォーリンガール達が闊歩するパラダイスだった。

しかし、JK好きの赤鹿は不満顔である。ようやく修学旅行のJK集団が現れるも、昼休憩に入っていた赤鹿はナマJKを拝むことはできず、味玉が撮影したスマホの動画でそれを楽しんだのだった。

そんな現場もいよいよ工事最終日を迎える。

次はどんな現場でどんなアホな出来事が巻き起こるのやら…

『ガードマン味玉のFunnyな1日♬』最終話をお送りします。

 

 

最終話  ご安全にっ!

 

 

「じゃぁ、あと道路洗ってお終い。ちょっと早いけど先に伝票サインするから、掃除が終わったら上がっちゃっていいよ。味岡くん、赤鹿さん、お疲れ様でした」

 

 

ひと段落して休憩している味玉と赤鹿の元に、巨漢のくまモン監督が現れ言った。ヒゲをなでながらニコニコ顔だ。

 

 

まだ午後の2時過ぎだが、工事最終日とあって、今日は資材の引き上げや、水道局の検査に備えたマンホールの洗浄など簡単な作業だけで終了した。

 

 

水道管の移設や障害物の撤去などの予備工事は終了し、いよいよエレベーター新設の本工事が始まるのだが、乗客への影響を鑑み工事は終電から始発までの夜間に行われる。

 

 

日勤組の味玉と赤鹿は、ひとまずお役御免だ。

 

 

「あゝ…夢の浅草生活も今日で終わりか…名残惜しいが仕方がない。ありがとう浅草フォーリンガール達よ…(T ^ T)」

 

 

「けっ!オラァこんな現場もう懲り懲りだぁ、じょす高生がいないんじゃハナシになんねぇっぺ!」

 

 

赤鹿が赤ラークに火をつけ言った。

結局赤鹿がJKのナマ足を拝めたのは、例の味玉の動画のみだ。

しかし…

 

 

「またまたぁ、ここはここで楽しかったじゃん。監督もいい人だったしさ。それに赤鹿さん、ちゃっかりパツキンボインちゃんチェックしてたじゃないすか、カタコトの英語で話しかけたりしてさ」

 

 

「う!…そ、そらおめぇ、日本のおもてなしだっぺよ!何しろオラァ日本を代表するガードマンだからよ。それに英語も高い授業料払ってフィリピンパブで散々勉強しただぁよ、ここで使わんでどこで使うだぁ」

 

 

「はいはい…それよりチャッチャと終わらせちゃいましょ、そんでもって一杯やりましょうよ、例の焼き鳥屋でも行ってさ」

 

 

「んだな、ま、とにかく無事に無事故で終了だ、仕上げるっぺ!」

 

 

 

道路を水洗いし、帰り支度を済ませたが、まだ午後3時にもなっていない。

 

 

天気もいいので焼き鳥屋が開くまで、隅田川のほとりで時間を潰すことにした。缶ビールを買い込み、川沿いの遊歩道に降りて目についたベンチに腰を下ろす。

 

 

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犬を散歩する老婦人

ジョギングする若者

ベビーカーを押す人妻などが時折通る。

長閑だ。

 

 

「橋っていいよな…」

 

 

独り言ともとれるように赤鹿がつぶやいた。

味玉は、左右に見える橋にゆっくりと目を向けた。

 

 

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 赤鹿が続ける。

 

 

「ガキん頃な…小学校の通学路に新しい橋を架ける工事が始まったのさぁ」

 

 

「へぇ…」

 

 

「大した橋じゃねんだがな、ガキだったからかなぁ…随分でっかい橋に感じてよ…着々と進む工事が面白くてなぁ、学校の帰りにずうっーと眺めててよ『早よ帰ってこい!』って毎日おっかぁに怒られたもんだ」

 

 

「はは…あるよね、そういうこと」

 

 

「出来上がった時は、なんだか自分がその橋を作ったような気がしてよ、嬉しかったもんだ…何しろその橋のお陰で学校さ行く時間が20分くれぇ短くなったでよ」

 

 

「ふぅん…」

 

 

「橋っていいよな…

 

ひとりじゃ辿り着けない場所も

橋の助けがあれば自分の足で歩いていける…

 

両親     未来へ導く大きな存在

 

恋人     天国へ誘なう癒しの泉

 

盟友     夢に向かえた友の存在

 

俺もなりたい

誰かの橋に…」

 

 

 

赤鹿は目を細め、遠く橋に視線を向けている。

 

 

「赤鹿さん…」

 

 

「ん?」

 

 

「キモいんですけど」

 

 

ばっ、馬鹿野郎!このポエムの素晴らしさが分かんねか?これだから今時の若いモンは!」

 

 

「あははのは!赤鹿さん耳真っ赤!それより行きましょ、そろそろ焼き鳥屋開くんじゃないすか?」

 

 

 

地下鉄を乗り継いで例の焼き鳥屋に来た。

準備中の看板が下がっているが、それには構わず、建てつけの悪い引き戸をガタガタとこじ開けて店に入った。

 

 

「こんちわマスター。生ふたつね…あ、やっぱ1つは生じゃなくて軽く炙ってちょ!」

 

 

味玉がいつもの軽口を叩く。

 

 

「はぁ?何言ってんだよ、表の看板が見えねぇのか?まだ準備中だよ」

 

 

カウンターの中、広げた東スポの向こうから不機嫌そうな親父の声が聞こえる。構わず座敷に腰を下ろし、リュックを下ろしながら味玉は親父に言う。

 

 

「客の注文聞いてから材料仕入れに行く店に何の準備がいるってんだよ。こんな店に来る客なんて俺らくらいなんだから大事にしないとバチ当たるよ。あ、それとなんでもいいからテキトーにツマミね」

 

 

 

何やらブツブツ文句を呟きながら生ビールを出し、カウンターの奥でゴソゴソしていた親父が、ようやくツマミを持ってきた。

 

 

「は?…ナニコレ?」

 

 

「何これって、見りゃ分かんだろ。『たけのこの里』だよ」

 

 

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「そんなことは、それこそ見りゃ分かんだよ。いくらなんでもコリャねぇだろ、しかも箱ごと…せめて皿に盛れよ」

 

 

「お客さん…イチャモンなら他所でつけてくんな、ホレ」

 

 

親父がしゃくった顎の先にある黒板メニューには

本日のおすすめ品『たけのこの里』美味しいよ!

と書いてある。

 

 

(くそっ!いつの間に…)

 

 

しかし、味玉と親父のやり取りを尻目に、赤鹿は嬉々としてパッケージを開けながら

 

 

「いいじゃん!いいじゃん!オラァ『たけのこの里』大好物だぁ。分かってるねぇマスター!」

 

 

 

あ、赤鹿さん…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

ま、いいか…

 

 

ビールから焼酎にスライドした赤鹿が、たけのこの里を貪り喰いながら味玉に尋ねる。

 

 

「味玉くん、そういや下番報告(※業務終了の報告)したっけか?」

 

 

「あ、忘れてた。明日からの現場も確認しなきゃだし…電話してみますわ」

 

 

携帯を取り出し、管制の長谷部に電話をかける。

 

 

「あ、もしもし、味岡です。浅草の現場無事終了しました。定時下番で。赤鹿さんも一緒です」

 

 

「おつかれさま〜!監督さんが、ふたりとも良くやってくれたって言ってたよ〜!あんがとね〜♬」

 

 

「あ、そりゃどうも…しかし、随分ご機嫌じゃないの長谷部さん。どうせ、また何か企んでるんでしょ?」

 

 

「いやいや、企むなんて人聞きの悪い。味岡くんには明日から始まるすんごいオイシイ現場に行ってもらいたいんだよねー」

 

 

「どうせまたロクでもない現場なんだろ。どこのなんて現場?」

 

 

長谷部が言うには、地下鉄のホームで旅客誘導をするらしい。地下なので雨風もしのげるし、空調も効いているから暑さ寒さも問題ないと言う。(確かにオイシイかも…)と思った味岡は、その現場を引き受けることにした。

 

 

「んで、赤鹿さんは?」

 

「赤鹿さんには、また別の現場で隊長やって欲しくてさ。詳しくは本人に説明するから電話変わってくれない?」

 

 

赤鹿に電話を渡し、味玉はトイレに立った。

用を足して戻ると、携帯を脇に置いた赤鹿が甘いはずの『たけのこの里』を苦虫を噛み潰したように貪り食っていた。

 

 

「どうしたんだよ赤鹿さん。フン詰まりの仁王さんみたいな顔してさ」

 

 

聞けば、オリンピックの渋滞緩和のため有明から築地まで橋を架ける工事が近々始まるそうで、赤鹿はそこに配置されるらしい。

 

 

「すごいじゃん赤鹿さん!世界中から集まってくる観光客のために大好きな橋を架ける工事だなんて!良かったね!」

 

 

しかし赤鹿は渋い顔で言った。

 

 

「うんにゃ、有明にも築地にもじょす高はねぇだ。そんな現場行ってもつまらね。断りたかったけんど他もロクな現場でなかったから仕方なく受けただ」

 

 

 

あ、赤鹿さん…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

赤鹿は残っていた『たけのこの里』を忌々しそうに毟り取ると口に放り込み、喰いカスを撒き散らかしながら叫んだ。

 

 

「マスター!焼酎お湯割もう一杯!あと『きのこの山』ちょうだい!」

 

 

 

「馬鹿野郎っ!!焼き鳥屋に『きのこの山』なんか置いてるわけねぇだろっ!ふざけたこと抜かしてっと脳味噌串で刺して塩で焼くぞ!」

 

 

 

マスターのあまりの剣幕に気圧された赤鹿は、途端に大人しくなり答える。

 

 

「あ…え?…でも、たけのこの里…すんませんですた…じゃ、あるものなんでもいいのでください」

 

 

「ふん!分かりゃいいんだよ…ホレ、これでも食っとけ」

 

 

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『コアラのマーチ』が出てきた。

 

 

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

マスター…

さてはパチンコ行ったな。

 

 

 

( ´Д`)y━・~~

 

 

恋愛成就がどうの、激レア絵柄がどうの、ブツブツ言っていた赤鹿が、最後の1個のコアラを見て肩を落とす頃、味玉は言った。

 

 

「そろそろお開きにしましょう赤鹿さん。色々お世話になりましたね。明日から別々の現場だ。どっちの現場も工期は結構長そうだから、しばらく会うこともないだろう」

 

 

「んだな。味玉くん、身体に気をつけてな、あと事故にも」

 

 

「分かってるよ、赤鹿さんもね」

 

 

半分ほど残ったグラスを掲げ

ふたりは声を合わせた。

 

 

 

「ご安全に!」

 

 

f:id:single-father-ajitama:20190328102232p:plain

 

『ガードマン味玉のFunnyな1日♬』は、これで終わりです。

引き続き、Funnyな毎日♬Season2 が始まりますww

(≧∀≦)

 

 

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ガードマン味玉のFunnyな1日♬バックナンバー

 

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三浦国宏 規格外の就活 最終話『勇気』

前回までのあらすじ

なんとか無事に就職が決まり、いよいよ味玉の家を出て白澤建設の寮に引っ越しすることになったアマチュア史上最強のボクサー三浦国宏

10日間+延長1日の波乱の合宿生活もいよいよ終わる。

ホッとしたような、なんだか寂しいような…複雑な気持ちで最終日を迎えた味玉。

最後に三浦がくれたモノとは…

『三浦国宏・規格外の就活シリーズ』最終話をお贈りします。

 

 

 

三浦国宏 規格外の就活

最終話  勇気

 

3月2日土曜日 最終日の朝

 

三浦国宏と最後の朝食

引っ越し蕎麦〜♬

 

 

引っ越し当日の朝食は蕎麦にした。

 

 

味玉は仕事。

三浦は、新しい携帯を買いに行き、大島のジム時代にお世話になった『とし子ママ』のところに預けてある荷物を取りに行くという。

 

 

仕事が終わったら、味玉の家に集合、寮のある船堀駅前で白澤社長と落ち合う予定だ。

 

 

蕎麦を啜りながら三浦が尋ねる。

 

 

「味玉くん、ところで、携帯って幾らくらいするんですかねぇ…」

 

 

「どうでしょ?紛失保険とか入ってれば割と安く買えると思いますけど、そんな用意周到なもん入ってるワケないですよね」

 

 

「覚えてません…というか、そんな保険の存在すら知りません…Y!mobileからSoftbankとかに乗り換えたら安く買えませんかね?」

 

 

「そういうのもあるでしょうね。でも、最近は総務省がなんやらかんやら規制し始めてるからどうなってるやら、解約違約金もあるし…あ、そうだ、どうせスマホなんか使いこなせないんだからガラケーにすればいいじゃないですか。そしたら本体代も月額使用料もスンゲー安くすみますよ」

 

 

「あーダメなんですよ、どうしてもスマホじゃないと」

 

 

「なんでですか?…あ、分かった!スマホで熟女動画見るためでしょ!…ホントどうしようもないバカだな」

 

 

「いえいえ、違います。テリトスです」

 

 

「は?何ですって?」

 

 

「テリトスですよ!ほら、上からブロックが降ってきて、クルクル回転させて隙間を埋めていくやつ。アレやんないとダメなんで…」

 

 

「…会長、それテリトスじゃなくて…ま、どっちでもいいや。でも、テリトス…じゃなくてテトリスのためだけに高いスマホってのもなぁ…あ!いいこと考えた。電話はガラケーにして、テトリスのゲーム端末を別に買えばいいじゃないですか。そっちの方が安く済みそう」

 

 

「へぇ!テリトスのゲーム機売ってますか?」

 

 

「さぁ…知らんけど…でも、秋葉原とか行けば、あるんじゃないですかね」

 

 

「じゃ、今日は、まず自転車で秋葉原行って、それからとし子ママ、そんで17時に味玉くんの家に帰って来ますよ。いや、忙しくなるなぁ…」

 

 

 

(電車代はケチるくせにテトリスのためなら金を使うのか…( ̄▽ ̄;)💧)

 

 

くだらない会話をしていると、あっという間に出勤時間になったため、三浦と共に家を出る。今日Kは元嫁の家に行くから、これが三浦との最後のお別れとなる。

 

 

味玉は、まだ寝ているKを起こして言った。

 

 

「Kくん、三浦会長とサヨナラだよ。ご挨拶しなさい」

 

 

「…はぁい…三浦会長さようなら、頑張ってね」

 

 

「Kちゃん、ありがとう!頑張るからねぇ〜」

 

 

三浦国宏と息子Kの別れ

三浦との別れを惜しむK

 

 

三浦と別れ、現場に向かう自転車をこぎながら味玉は思った。

 

 

なんだかKのやつ寂しそうだったな…

それとも寝ぼけてたのかな…

いや、やっぱり寂しかったんだ

 

 

 

ひとり親の寂しさを感じさせないよう、出来るだけ楽しく過ごそうとアホなことばかりしている。

それでも、いつも2人きり…

最近は言わなくなったけど弟か妹が欲しいって言ってた時期もあった。

 

 

会長にもたくさん遊んでもらって、楽しそうだったもんなぁ…

 

 

三浦国宏が我が家にきた!

三浦とK 久々の再会

 

三浦国宏と息子のK

おはようございますww

 

三浦国宏と息子のK

三浦に手ほどきを受ける息子のK

 

三浦国宏にフックの教えを受けるK

フックも習いました!

 

三浦国宏と息子のK

入れ歯を外すお得意のキメ顔ww

 

 

味玉は、Kと2人きりの生活に戻る来週から、今まで以上にアホなくらい楽しく過ごそうと心に誓った。

 

 

その日の昼休み

 

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味玉弁当Deluxe

 

 

久しぶりに1人分しか作らなかった味玉弁当を食べていると、見知らぬ番号から電話がかかってきた。

電話の主は新しい携帯を買って上機嫌の三浦だ。

 

 

「押忍押〜忍!今スマホゲットしました〜♬お店のおねぇさんに頼んで、テリトスもできるようにしてもらいました〜♬」

 

 

「へぇ、良かったですね、ゲーム機より安く買え…」

 

 

「今日は500円だけ払えばいいんだって〜解約違約金は1万5千円くらいで来月払えばいいから全然オッケー!オッケー牧場で〜す!これからとし子ママのところに向かいまーす」ブチっ…ツー…ツー…

 

 

一方的に話して電話を切りやがった。

ま、いいか。

これで三浦の動向が把握できる。

 

 

把握したところでコントロールできないから、あまり意味はないのだけれど…

 

 

 

その日の仕事終わり

17時より少し早めに自宅に戻った味玉は、荷物を整理して三浦の帰りを待つことにした。

荷物をまとめて、玄関に並べ終わると時計の針は17時半になろうとしている。

 

 

どうせ時間通りに戻ってくるとは思っていなかったから、白澤社長には船堀に到着する時間が分かったら電話することにしていた。

 

 

綺麗に片付きガランとした和室を眺め、10日間+延長1日の就活合宿を振り返る。

 

 

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ちょっと寂しいから不思議だww

 


本当に大変だった…

でも、その苦労も今日で終わり。

迷惑ばかりかけられたけど、三浦は三浦で気を遣っていた。

 

 

三浦を家に泊めると決めた時、本当はすごく不安だった。終末期のミウラスタジオの荒廃ぶりは、目を覆いたくなるような状態だったからだ。

 

 

リングや練習スペースは、皆で掃除をしたからなんとか見られる状態だったが、3畳ほどの三浦の部屋は酷かった。

 

 

万年床の周りには、いつ使ったか分からない食器や、発酵して正体不明になった食材が底にこびり付いた鍋などが、そこかしこにウズ高く積まれていた。

 

 

掃除しようにも、何かを動かすと雪崩の如く全てが崩れてきそうで、対処不能の末期癌のような部屋だったのだ。

 

 

 

しかし、いざ蓋を開けてみると、三浦の生活態度は至って真面目だった。

 

 

お弁当箱は、毎日現場で洗って持って帰ってきたし、玄関の靴も自分の分だけでなく全て揃えていた。

 

 

風呂桶もちゃんと裏返してイスに立てかけていたし、布団の上げ下げもした。

 

 

洗い物は、三浦がやると洗剤が足りなくて油汚れが残り、ヌルヌルするからやめさせたが、それでも積極的に手伝おうとした。

 

 

 

豪快を装っているけど、本当は繊細で気の弱い男なのだ。

 

 

248戦のキャリアのうち負けた28敗は、ほとんどが外国人相手の国際試合、三浦が負けた日本人は高校時代から含め、4人しかいないと聞いている。

 

 

味玉は、オリンピックなど大舞台に弱いと言われた三浦にその理由を聞いたことがある。すると三浦はこう言った。『だって味玉くん、外国人て強そうで怖いじゃないですか』味玉は内心(あの頃のあんたの方がよっぽど強そうで怖いよ(笑))と思ったものだ。

 

 

永遠のチャンピオン大場政夫さんとチャチャイさんの試合を見てボクシングを志すも、勇気がなくて岩泉高校のボクシング部にはマネジャーとして入部した。

 

 

ある日、意地悪な先輩に『鍛えてやるからリングに上がれ』と命令されリングに立つ三浦。ボコボコに殴られ鼻血を流しながらも、一歩も引かず前に出続ける三浦を、偶然見かけた監督が選手に誘わなければ、彼はボクサーになっていなかっただろう。

 

 

後に世界チャンピオンになった平仲明信(本名信明)さんがアマチュアとして最後に三浦と対戦する試合、酔っ払って計量に現れ、リベンジに燃える平仲さんを激怒させたのは、決して相手をナメていたからではない。

 

 

酔いを覚ますために寝ていたラブホテルで目覚めた時、平仲さんに無残なKO負けを喫する夢をみた三浦は全身にベットリと脂汗をかいていた。酒は平仲さんへの恐怖を紛らわすためだったのだ。

 

 

他にも…

 

 

 

電話が鳴り味玉の回想は遮られた。

スマホの画面には三浦の名前が表示されている。

時間は18時少し前だ。

 

 

「味玉くん、おまたせ〜、あと10分か15分で着くよ〜」

 

 

「あーはいはい。じゃ、あと30分くらいですね。待ってまーす」

 

 

三浦時間にはもう完璧に対応した。

電話を切り、腹が減ったので漬けた味玉を2つほど皿に取り1杯だけやることにした。

案の定、三浦はきっちり30分後に帰ってきた。

 

 

「遅かったじゃないですか会長。じゃ荷物下に運んでください。僕もタクシー呼んだらすぐ下に降りますから」

 

 

タクシーを手配し、マンションのエントランスを出てギョッとした。

 

 

 

「なんすかこれ!」

 

 

 

「いや〜思ったより荷物がいっぱいあってさぁ〜意外と手こずりましたよ」

 

 

「嘘でしょ?!これで自転車乗ってきたんですか?」

 

 

「ダイエーでパートのオバちゃんがヒモくれなかったらヤバかったですね。でもヒモで荷台にダンボール箱縛りつけてからは楽勝でしたよ〜」

 

 

この荷物を載せて自転車に乗る規格外の三浦国宏

マジすか…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

す、すごい…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

やっぱ規格外の男だ…

どうやったらこの荷物を自転車で運んで来れるんだろう…

 

 

「と、取り敢えず会長は自転車で船堀に向かってください。僕はタクシーが来たら荷物積んで追っかけますから」

 

 

三浦が船堀に向かって程なく、タクシーが到着した。荷物を積み込んで運転手に行き先を告げたところで白澤社長に電話する。

 

 

「もしもし、お待たせしました味玉です。今からタクシーで船堀に向かいます。僕は、15分くらいで到着しますが、三浦は…多分小一時間はかかるでしょうから、のんびり来てください」

 

 

 

三浦は10分ほど先に船堀に向かった。自転車でも真っ直ぐ行けば30分ほどで船堀まで到着するが、大事を取ってそう伝える。

 

 

船堀街道を南に下り、高架のガードをくぐった先のセブンイレブンの前で大量の荷物とともに味玉が待っていると、白澤社長から船堀に到着した旨の連絡があった。

 

 

指示された方向を見ると、白のワンボックスの運転席の窓から、白澤社長とおぼしき人物が手を振っている。

 

 

車をつけてもらい、荷物を積み込み三浦の到着を待つ間、社長と車の中で話をした。

 

 

「社長、今回は色々とすみませんでした。お手間ばかりかけてしまって…」

 

 

「いいんですよ。三浦さん8tの免許も持ってるし、体力も自信あるって言ってたから期待してます。ウチも、これからどんどん人を増やしていきたいんで助かります」

 

 

白澤社長は、思ったよりずっと若く、誠実そうな好青年だった。おそらくまだ30代半ばだろう。面接を行った南千住には自宅があり、母親とお子さんの3人暮らしをしているそうだ。元奥さんはネグレクトで数年前に離婚したという。

 

 

思わぬところでシングルファーザーに出会った味玉は、親近感が湧き、子育てと仕事の両立の難しさなどの話で盛り上がった。

 

 

会社経営となると、その大変さは自分の比ではないだろうと尋ねたが、同居する母親が助けてくれるから、なんてことはないと言う。

 

 

話に夢中になり、三浦のことなどすっかり忘れていたが、気づけば味玉の家を出てから、かれこれ1時間近く経つ。

 

 

さすがに、もう着いてもいい頃だ。

 

 

「社長、すみません、ちょっと探してきます。また道に迷ってるかもしれない」

 

 

味玉はそう言って車を降り、電話をかけながら船堀街道を北に上った。

 

 

「もしもし、会長?今どこにいます?」

 

 

「あーすみません。今ちょうど駅に着いたところですよ〜、味玉くん、どこにいますか?」

 

 

「随分遅かったですね、また道草食ってたんですか?僕も今駅ですよ…あー!見つけた!おーい!」

 

 

 

前方から自転車を押しながら歩く三浦の姿を捉えて電話を切る。

 

 

(全く…今度はどこで道草食ってたんだ…ん?)

(´・ん・`)?

 

 

「…会長なんすかコレ?」

 

 

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なんですか?コレ…

 

 

「ん?…あーコレですね、途中の八百屋さんで、お客さんが剥がしたやつもらったの。どうせ捨てるから持ってっていいって。どう?味玉くんも食べる?」

 

 

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八百屋さんでお客が剥がしたキャベツの端材ですww

 

 

いらんわっ!んなことより、さっきからずっと白澤社長待ってるんですよ!早く行きましょ!」

 

 

三浦には自転車でついてくるよう言って、味玉は白澤社長の車に乗り込み、車で5分ほどの距離にある寮に到着。

 

 

部屋に荷物を運び込み、雇用契約書にサインして、食堂や浴場、ランドリーコーナーを案内してもらう。

 

 

大清水建設の所有物件だけに、綺麗で立派な施設だった。

 

 

三浦国宏入寮す

テレビも布団も完備された三浦には勿体無いお部屋!

 

三浦国宏

緊張気味に雇用契約書にサインする三浦国宏ww

 

ランドリーも充実!

 

こりゃいい湯だな♬

 

 

何度も頭を下げ、自宅に向かう白澤社長の車を見送り、引っ越しは完了した。

 

 

「味玉くん色々ありがとう。お礼に1杯奢りますよ」

 

 

「いいですよそんなの。次の給料日まで、まだ1ヶ月以上ある、節約してください。でも飲みには付き合いますよ」

 

 

熟女ママの経営するスナック青葉を見つけ上機嫌の三浦国宏

熟女ママの経営するスナック青葉でパシャリ♬

 

 

少し歩いた路地にぽつりと灯りのついた看板。

三浦の大好物の熟女ママが経営する『スナック青葉』という店を見つけ、カウンターに陣取った。

客は味玉と三浦の2人だけだった。

 

 

声で熟女ママをオトす三浦国宏

熟女は歌でオトしますww

 

三浦国宏と僕

三浦国宏と味玉 最後のツーショット

 

 

ママと3人で和気藹々、飲んで、話して、歌って、三浦の門出を祝った。

 

 

お開きの時間が迫る頃、味玉は最後の念押しをした。

 

 

「会長、何度も言いますが本当に頑張ってくださいよ。次になんかあっても、もう僕は手助けしませんからね。辛抱強くやってれば日当だって上がるだろうし認められれば職長にもなれる、これから大きくなる会社だから行く行くは会社の幹部にだってなれるかもしれない。頼みますよ!」

 

 

「分かってますよ、頑張ります。コツコツお金貯めて、またジムやりたいですからね」

 

 

「え?!嘘でしょ?会長ジムやる気あるんですか?本当に?」

 

 

「好きなんですよね…ボクシングがやっぱり…またやりたいなぁ…ワンツー!ワンツー!ってね」

 

 

「会長…」

 

 

 

大島のジムも、オープンから数年は多くの練習生で賑わい、会長も熱心に指導していて活気があったと聞く。

 

 

おかしくなったのは、気の優しい三浦が、お金がない会員の会費を大目に見てあげたり、それを見てつけ込みワザと会費を支払わない会員達に強く言えなかったことも原因の1つだろう。

 

 

資金的に余裕のないジムで、他にトレーナーを雇う余裕はない。会長1人では練習生全員の指導には目が行き届かないだろう。それに不満を持った練習生が1人、また1人とジムを去り、さらに経営は苦しくなる。

 

 

もちろん、三浦本人の責任が一番大きいのは言うまでもない。

 

 

酔ってジムを放ったらかしたり、数年後の取り壊しを決定しているビルのオーナーから多額の立ち退き料を約束されていたことにも甘えていたのだろう。

 

 

結局、取り壊しの前に岩手に戻ってジムを開いたため立ち退き料は手にしていない。

 

 

地元のジム開業のため三浦を担いだ地元後援会は雲散霧消した。

 

 

詐欺紛いのブローカーに、相場の倍近い仲介手数料と内装工事費をふんだくられ、文句を言うため訪ねた住所が田んぼのド真ん中だったというのも、三浦につけ入る隙があったからだ。(※これは本人談なので真偽のほどは不明)

 

 

 

心底驚いた。

晩年のミウラスタジオの荒廃ぶりや、そんな経緯を知っている味玉は、まさか三浦がそれに懲りず、再びジムを開く夢を持ち続けているとは露ほども思っていなかったからだ。

 

 

グラスに残っていた焼酎を飲み干し、ママに会計を頼んで立ち上がった味玉は三浦に言った。

 

 

「分かりました。会長がジムやっても、どうせまた失敗するでしょうから、そん時は僕がマネジャーやってあげますよ。こう見えても昔は営業部長です。会員募集も未払い債権の回収もお手の物です。それまで頑張ってくださいね!」

 

 

照れ臭そうな笑顔を見せる三浦とガッチリ握手して店を出た。

 

 

薄暗く、人ひとり通らない寂しい路地

寮に向かう三浦の背中をしばらく眺めていた

三浦は振り返らない

 

 

味玉は

どんな境遇でも明るく振る舞う彼を

誰の悪口も、恨み節ひとつ口にしない彼を

そして、大好きなボクシングへの情熱を持ち続ける彼を

 

想った

 

 

 

かつて、うつ病上がりだった僕に元気をくれた時と同じ…

 

 

いや、それ以上の『生きる勇気』

腹の底から湧き上がってくる

 

 

踵を返し帰途につく

 

 

タクシーはつかまりそうにない

 

 

 

 

走って帰るか!

 

 

 

 

 

 

終わり

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三浦国宏 規格外の就活 バックナンバー

 

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最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。三浦は現在も、白澤建設(仮称)で元気に頑張っています。彼の頑張りを応援してあげてください。

♪(´ε` )

三浦国宏 50男・規格外の就活 第6話『しっかりしろよ!』

前回までのあらすじ

振り出しに戻ったアマチュア史上最強のボクサー三浦国宏の就活。ようやく希望通り白澤建設という会社で土方の仕事(寮・賄い付き)を見つけ、面接することになった。

しかし面接の時間は18時。三浦の現場は、面接を受ける船堀まで電車で1時間以上かかる多摩市の聖蹟桜ヶ丘。いつものようにマゴマゴしていると遅刻してしまう。

仕事が終わったであろう頃、味玉が電話するも何度かけても三浦の携帯は着信音が鳴るばかりで応答はない。

果たして三浦は約束の時間に間に合い、無事に採用されるのか?

三浦のダメっぷりをどうぞご堪能ください!

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

 

第6話 しっかりしろよ!

 

2月27日水曜日 合宿9日目の夜

面接に行ったはずの三浦が電話に出ない。

家に帰り、Kの宿題の丸つけと音読に付き合い、夕飯の用意をする間、味玉は10回以上電話をかけたが応答はなかった。

 

 

どうしたんだろう…

まさか現場で事故にでもあったのか?

それとも、急いで面接に行くため電話に出られなくて、そのまま面接が長引いているだけなのか?…

 

 

どうしようもないので先にKと食事を済ませ、風呂に入った。21時になったので、歯磨きをさせてKは寝かせた。

 

 

まだ電話は繋がらない。

さすがに心配になる。

 

 

いったい何をやっているんだ!

まさか、遅刻して不採用になって、そんでもって自暴自棄になって…

 

 

いやいやいや、そんなことくらいで、そんなことするなんて三浦に限っては絶対にあり得ない。

 

 

これまで、あの男に降りかかった厄災に比べたら面接に落ちることなんて、蚊に刺された…いや、そよ風が吹いたくらいの出来事だ。

 

 

おおかた採用が決まって、いい気になって一杯やってるんだろう…

 

 

無理やり自分にそう思い込ませたものの、心配で仕方がない。ジリジリしながら待っていると、ようやくインターフォンが鳴った。

 

 

時計を見ると22時半を回っている。

 

 

 

「何やってたんすか会長!心配したじゃないですか!」

 

 

 

Kが寝ているにも関わらず、玄関のドアが開くなり味玉は語気を荒げた。

 

 

「いやぁ〜参りましたよ…携帯無くしちゃってねぇ…自分が立ち寄ったところ全部探したんだけど見つからなかった」

 

 

「え!マジすか?!…で、面接は?」

 

 

「遅くなっちゃったから間に合わなかった。公衆電話から白澤社長に電話して明日にしてもらったから大丈夫ですよ。明日は南千住で面接ですって」

 

 

(何をやってるんだこの男は…)

 

 

味玉は、三浦のダメっぷりに心底腹が立った。

 

 

 

「何が大丈夫なんすか!せっかく面接組んでもらったのにメッチャ印象悪いじゃないですか!それに、明日もまた、道に迷ったり、財布落としたり、熟女のDVDに気を取られたりしてどうせ遅刻するじゃないですか!先方が仕事の都合で急遽予定が変わることだってあるんですよ!どうやって連絡取り合うつもりなんですか?!」

 

 

 

「ん〜どうしましょうかねぇ…」

 

 

「どうしましょうかねぇ、じゃないよ!このスットコドッコイが!こんな大事な時に…いい加減しっかりしてくださいよ!」

 

 

「すみませんねぇ…本当にダメですねぇ…こんな大事な時にねぇ…」

 

 

 

肩を落とし、しょんぼりする三浦の姿を見て味玉はハッと我にかえった。

 

 

(少し強く言いすぎたかな…こんな元気のない会長見るの初めてだ…)

 

 

興奮した自分を反省し、今度は穏やかに言った。

 

 

「明日、白澤社長には僕から電話しますよ。そんで何かあったら僕の携帯に電話してもらうようにお願いします。会長は…10時と3時の一服、それから昼休憩、仕事終わり、南千住に着いた時、公衆電話から僕に電話してください。必ずですよ、分かりましたか?」

 

 

「分かりました…よろしくお願いします」

 

 

「分かればよろしい…さぁ、今日はもう遅い。飯食って寝てください」

 

 

「いえ…ご飯はいいです。もう寝ていいですか?」

 

 

そう言うと、三浦はすごすごと和室に移動し布団を引くと崩れ落ちるように横になり、瞬く間に寝息を立て始めた。

 

 

 

疲れているんだな…

 

 

味玉は、大島のジムを畳んで以来、何をやっても上手くいかない三浦のここ数年を思い、何とも言えぬやりきれない感情が込み上げてきた。

 

 

気持ちが高ぶり眠れそうもない味玉は、ロックグラスに氷を入れウィスキをドボドボと注ぎ、考える。

 

 

悪い男じゃないんだけどな…

ただ不器用なだけで…

あと酔うと手に負えないし、すぐ騙されて詐欺被害に会うし、頻繁に道に迷うだけで…

 

 

ホントは優しい男なんだ…

ただ少し時間にはルーズだし、何度説明してもクローゼットとトイレを間違えるし、熟女好きの変態だけど…

 

 

なんだか考えているうちに段々バカバカしくなってきた。

 

 

ふと見ると、三浦は何度言っても理解しないようで、いつものように毛布を蹴散らしシーツを掛け布団にして寝ている。

 

 

三浦国宏

だから、それは掛け布団じゃないっつーのww

 

 

思わずクスリとしてしまった。

気を張っている自分がアホらしくなってきた。

 

 

なんだよ

携帯なくしたくらいどうってことないじゃないか

ケ・セラ・セラだ…

俺も寝よう!

 

 

 

2月28日 木曜日 合宿10日目の朝

味玉は3ヶ月に1度の定期検診で、かかりつけの病院に行くため仕事は休みだ。

 

 

三浦も現場が近かったため、いつもより遅めの朝食を摂っていると目を擦りながらKが起きだしてきた。

 

 

「おはよう!Kくん」

「おはよう!Kちゃん」

 

 

味玉と三浦が同時に声をかける

 

 

「おはよ〜…なんか昨日は、うるさかったけど何だったの?」

 

 

「あーごめんごめん、眠れなかった?いやね、アホな誰かさんが携帯無くしちゃって大変だったんだよ。だから今日も大変なんだよ、アホな誰かさんのせいでね」

 

 

「そ、そんなことよりKちゃん!納豆の正しい食べ方って知ってる?」

 

 

焦った三浦は、誤魔化すようにKに話しかける。

 

 

「え?納豆に正しい食べ方なんてあるの?」

 

 

三浦国宏

アホみたいにいつまでも納豆をかき混ぜ続ける三浦国宏ww

 

 

「もちろんあるよ〜、こうしてね右回りに100回かき回してから食べるんですよ…私は200回かき回すけどね。左回りじゃダメなんですよ、何で左じゃダメだか分かるかな?」

 

 

「分かんない」

「分かんない」

 

 

Kと一緒に味玉も聞き返す。

すると三浦はニヤッと笑って言った。

 

 

「私も分かんないです」

 

 

…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

「ね、やっぱアホでしょ?Kくん。今日は大切な面接の日だってのに携帯もないんじゃね」

 

 

「ふぅん…僕の携帯貸してあげようか?どうせ学校に持って行っちゃいけないし」

 

 

「え?!いいの?!」

「ダメ!絶対ダメ!」

 

 

今度は三浦と味玉。

 

 

「こんなアホに携帯貸して、また無くしたらどうすんの?確かにGPS機能が付いてて便利っちゃ便利だけど…でも絶対ダメです!」

 

 

「え〜!いいじゃないですかぁ〜、GPSカッコイイのになぁ〜…道に迷うこともなさそうだし」

 

 

「そういうGPSとは違うわっ!いいからさっさと飯食ってトットと仕事行け!」

 

 

三浦国宏

Kの携帯「マモリーノ」を諦めきれない三浦国宏ww

 

 

空き時間には逐一電話を入れるよう再度念を押して三浦を送り出す。Kにも朝食を摂らせ見送ると、味玉も病院へ向かった。

 

 

検診が終わり、10時の一服時間を見計らい白澤社長に電話をかける。

 

 

「もしもし、お忙しいところすみません。ワタクシ味玉と申しまして…」

 

 

事情を話すと白澤社長は快く了承してくれた。

 

 

「分かりました。何かあったら味玉さんに電話します。ウチも人が足りなくて困っているんで、三浦さんには是非きて欲しいんですよね、よろしくお願いします」

 

 

「こ、こちらこそよろしくお願いします!アホな奴ですけど悪い人間じゃないんです!体力もアホみたいにありますし!新宿の現場まで自転車で2時間かけて行くくらいのアホみたいな体力です!だから、死ぬほどコキ使ってやってください!必ず役に立ちます!アホですけど…」

 

 

「あはは…そんなアホアホ言わなくても分かりましたよ。まぁ面接と言っても形式的なもんで、もう寮の手配もしてあります。土曜日の夕方から入れるようにしてありますから」

 

 

「ほ、本当ですか?!ありがとうございます!」

 

 

聞けば、白澤社長はつい数年前に親父さんを亡くし、会社を引き継いだばかりだそうだ。継ぐまでは別の会社で働いていたと言う。

 

 

多い時は100人近い職人を抱えていた会社だったが、先代が亡くなったことで一時的に仕事がなくなり、多くの職人が退職して他に移った。

 

 

残った人間は、他に移れないような問題アリの人間ばかりだったため全員解雇し、イチから従業員を雇って再出発したそうだ。

 

 

現在、従業員は社長以下4名、三浦が5人目になる。大清水建設の下請けで現場に入り、仕事の依頼が引っ切り無しにあるが人不足で全て断っていると言う。寮も大清水建設の所有物件だそうだ。

 

 

電話を切った味玉は思った。

 

 

(こりゃもう採用決定じゃないか…あのアホが何かとんでもないことをしない限り…しかし、三浦がウチに泊まれるのは今日までだ。土曜日の夜から入寮可能ってことは明日の寝床がないな…どうしよう…)

 

 

味玉は、三浦の居候を1日だけ延長させて欲しいと元嫁にお願いしてみることにした。

 

 

2月一杯という約束を違えることになるが、ケツが決まっているし、1日くらい大目に見てくれるだろう。

 

 

そうして元嫁の許しを得た味玉は、夕食の買い出しのため、御用達のAEONへ向かった。

 

 

 

その夜

 

 

「な、なんですか?!これ!」

 

 

面接を終え、採用の報せとともに帰宅した三浦が驚きの声をあげる。

 

 

「ふっふっふ…就職祝いですよ。築地のマグロにゃ敵わないですけどね」

 

 

Kは一足先にいただきます!

 

三浦国宏

思わぬマグロの登場に呆然とする三浦国宏ww

 

 

「いや〜すごいですねぇ〜…有難いなぁ…」

 

 

「さ、そんなとこで突っ立ってないで食べましょ」

 

 

「あ、ちょっと待ってください。酒が入る前に履歴書書かなきゃいけないんですよ」

 

 

「え?!履歴書?なんで?」

 

 

「白澤社長がね、採用は決定なんだけど社員の管理をしたいから書いてきてくれって、あと職務なんとか書ってのもいるんですって。若いのにしっかりした人なんですねぇ…社会保険も完備だから年金手帳も持ってきてくれって」

 

 

「へぇ…従業員5人の会社なのにすごいですね…あ、そうか!大清水の下請けだからその辺うるさいんだ…でもちゃんとした会社で良かったじゃないですか、働き方改革のお陰ですね!」

 

 

しかし、三浦は名前まで書いたところで『ひと仕事やり終えた!』といった顔をして、我慢しきれず箸を取った。

 

 

三浦国宏

名前書いただけで力尽きるww

 


(ま、メシの後でもいいか…)

 

 

味玉も腹が減っていたし、めでたい日だから大目に見て乾杯した。

 

 

 

失敗だった。

 

 

食事が終わり、履歴書を書き始めた三浦だが相当酔っ払っていてミミズがのたくった後、干からびてアスファルトに貼り付いたような文字が並ぶ。

 

 

「ちょ、ちょっと会長!そんなんじゃダメですよ!解読不能ですって!もっと丁寧に書いてください!」

 

 

「大丈夫、大丈夫。全然オッケー!オッケー牧場ですよ〜押忍、押〜忍♬」

 

 

そう言って書く文字は、もはや文字の体裁をなしていない。

 

 

「あー!もう!ダメだっつーの!俺が書くから新しい履歴書出しやがれってんだ!」

 

 

味玉は三浦が書いていた履歴書をひったくると、クシャクシャに丸めてゴミ箱に捨てた。

 

 

「はい、じゃ、高校卒業からね。岩泉高校卒業は何年でしたっけ?」

 

 

「えーと確か昭和56年…」

 

 

三浦国宏

なんで僕が書かなきゃなんないの?…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

そうして、味玉が三浦の履歴書を書き終える頃には三浦は完全にグロッキー。よろけるように布団に転がった。

 

 

全くしょうがない奴だな…

職務経歴書は…いいや、適当に書いておこう。

 

 

就寝。

 

 

 

3月1日 金曜日 合宿延長日

共に仕事を終え、帰宅した味玉と三浦の最期の晩餐である。

バタバタして最近漬けていなかった味玉を振る舞った。

 

 

三浦国宏

味玉特製の味玉ww

 

 

「会長、いよいよ今日で最後です。明日仕事が終わったら引っ越しして月曜からは新しい職場ですよ。頑張ってくださいね」

 

 

「分かりました。色々世話になりましたね。ありがとうございます」

 

 

グラスを合わせ、長いようで短かった合宿生活を振り返る。

昔話にも花が咲いた。

 

 

「んで、明日はどうします?仕事休みなんですよね。僕は17時過ぎには戻りますけど」

 

 

「そうですね…とりあえずプラプラして、とし子ママの家に預けてある荷物取りに行って…あ、そうだ!新しい携帯を買いに行こうかな、味玉くんとも連絡とりたいし」

 

 

「あーそうですね。じゃ、携帯買ったら電話してください。そんでとし子ママのところに行って荷物持って17時ごろ帰ってきてください。そしたら一緒に引っ越ししましょう」

 

 

「分っかりました〜!押忍押〜忍♬」

 

 

肩の荷が降りた味玉と三浦の最期の晩餐は和やかに進んだ。

 

 

明日でようやく終わる。

 

 

ホッとしたが…

 

なんだか少しさみしい。

 

 

 

 

最終話に続く…

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三浦国宏 50男・規格外の就活 バックナンバー

 

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三浦国宏 50男・規格外の就活第5話『振り出しに戻る』

前回までのあらすじ

アマチュア史上最強のボクサー三浦国宏が賄い付きの仕事にこだわっていた理由が、以前築地のマグロ屋で働いていた時『賄いが毎日大好物のマグロだったから』という衝撃の告白を受け、業種によって賄いの内容は変わることをなんとか理解させた味玉。

改めて業種を広げ仕事探しをするうち、新聞配達員を仲介する人材紹介会社の社長「吉岡さん」に巡り合う。

親切な吉岡さんは、配達先の住所が覚えられるか心配している三浦の不安を解消するため、わざわざ味玉たちの住む江東区まで足を運んで説明してくれると言うのだ!

果たして三浦は無事、新聞配達の仕事に就き、期限までに味玉の家を出ることが出来るのだろうか…

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

第5話   振り出しに戻る

 

2月22日金曜日 合宿4日目

仕事を終え帰宅した三浦とGoogleマップで明日の現場の住所を確認していると程なく、インターフォンが鳴り吉岡さんの到着を告げた。

 

 

Kには『大切なお仕事のお話だから…』と言ってタブレットを持たせ寝室に向かわせた。

 

 

「すみません吉岡さん。こんなアホな奴のためにわざわざ国分寺からご足労いただいちゃって…」

 

 

 

迎え入れた味玉に、値段の張りそうなコートを脱ぎながら吉岡さんは爽やかに笑って答える。

 

 

「大丈夫ですよ。いつもこんな感じです…こう言っちゃなんですが、住み込みで新聞配達やろうなんて人はワケありの人が多いんですよ…今日の寝床すらないなんてザラです。仕事が決まれば、寮に入るまでホテル代を貸してあげることだってあります」

 

 

「へぇ!そこまでやるんですか…すごいですね」

 

 

 

味玉は、吉岡さんのコートをハンガーにかけながら、その徹底した対応ぶりに舌を巻いた。

 

 

もちろん求職者が採用されれば紹介料が得られる。利益をあげるため仕事としてやっていることなんだろうが、ホテル代を握りしめたままトンズラされる危険性だってあるのだ。

 

 

この人は必ず成功するだろう。

 

 

起業家には、行動力やアイディアも大切だが、最も重要なのは意思や理念だ。吉岡さん自身も新聞奨学生から苦労して起業したと聞いている。

 

 

おそらく、自分と同じように何らかの事情で経済的、社会的に困窮した人を手助けしたい、自分を育ててくれた新聞配達業界にも貢献したい、という想いがその根底にあるのだろう。

 

 

いくら頭がキレて斬新なビジネスモデルを考え出したとしても『儲かればなんでもいい』などというスタンスで起業すると継続はしない。

 

 

ビジネスで成功するには『揺るがない哲学』が必要なのだ。

 

 

 

 

ダイニングテーブルに座り、三浦が吉岡さんからレクチャーを受けている間、味玉は夕飯の準備をする。

 

 

食材の余分な買い置きはないため、吉岡さんのおかずは昨日の余り物なども使い適当に作った。

 

 

ひと通り説明が終わった頃に夕飯の支度ができたので揃って食卓に着いた。

 

 

「どうです?会長、新聞配達できそうですか?」

 

 

「ん〜そうですねぇ、やってみようかなぁ…」

 

 

「ホントですか?!いや〜良かった良かった。吉岡さん、ありがとうございます!」

 

 

「いえいえ。三浦さんならきっと優秀な新聞配達員になれますよ。どうです?実は今日面接してもいいって言ってくれてる販売所が浦安にあるんですよ。良ければ行ってみますか?」

 

 

モノ凄い手回しの良さだ。

 

 

「え?!マジすかポリス?!いいじゃないですか会長!メシ食ったら行ってきてくださいよ」

 

 

 

そうして2人を送り出し、味玉は胸をなでおろした。

 

 

(ふぅ…これでなんとかなりそうだ…良かった)

 

 

三浦国宏

吉岡さんと3人で♬

 

 

2時間ほど後

三浦から電話があり、トラックの運転手として採用されたと不可解な連絡が入った。

 

 

聞けば、その販売所の所長さんは佐川急便の下請けの運送屋も経営をしていて、丁度ドライバーを探していたとのこと。8tの免許を持っている三浦をドライバーとして採用したいらしい。

 

 

「へぇ…良かったですね…でも、新聞配達ですら配達先が覚えられるか不安だったのに、毎日届け先が違う宅配の仕事なんてできるんですか?」

 

 

「そうなんですよねぇ…だから明日も別の新聞販売所に面接に行くことになりました。場所は木場駅ですって。吉岡さんが言うには、そっちの方が私に合ってるんじゃないかって」

 

 

「そうなんですね…じゃ明日まで保留か…」

 

 

 

翌23日土曜日 合宿5日目

今日の三浦の現場は、運良く木場公園の近く、味玉の現場も通り道になるので途中まで一緒に出勤することにした。

 

 

三浦国宏

意外とチンタラ走る三浦国宏ww

 

 

仕事が終わったら待ち合わせをし、一緒に面接に行く約束をして別れた。

 

 

日中吉岡さんに電話して話を聞いたところ、なんでも木場にあるその販売所の所長さんは、購読者拡大のため度々集客イベントを開催しているらしい。

 

 

元オリンピック選手の三浦に大変興味を覚えていて、ボクシング教室などやれば結構な集客ができるのでは?と考えているそうだ。

 

 

モノ凄くいい話である。

そこで実績を挙げれば給与にも反映されるし、コツコツ頑張ってお金を貯めれば、そこで育てたファンを会員候補に見込んで、またジムを開くことだって夢じゃない。

 

 

三浦と待ち合わせして木場駅に向かうまでの間、味玉は「もう四の五の言わずに今日の新聞販売所にお世話になりなさい」と強く説得した。

 

 

しかし三浦は何やら上の空である。体調でも悪いのかと気になったが面接の時間が迫っていた。吉岡さんと駅前で落ち合い、そのまま3人で販売所に向かった。

 

 

所長さんからひと通りの説明を受け、実際に使用している配達用のアンチョコも見せてもらった。

 

配達すべき部屋が色付けされたマンションの郵便受けの配置図や、外国人でも分かるよう道順やポストの色などが記号や略字で書かれた小冊子もある。

それに1人で配れるようになるまで先輩配達員がサポートしてくれるそうだ。

 

 

 

これなら、なんとかなりそうだ。

 

 

しかし、三浦はなぜか浮かぬ顔、テンションが異様に低い。所長さんと三浦が店舗の3階にある寮を見学している間、面接室に残った味玉は吉岡さんに質問してみた。

 

 

「吉岡さん、昨日の面接の時も三浦はあんな感じでしたか?なんだか、やけにテンションが低いんですが…」

 

 

「確かにそうですね…昨日は、もう少し元気があったような…でも、あれじゃないですかね、ほら、昨日はご飯食べてから面接行ったじゃないですか。今日はお腹が空いていて元気ないとか」

 

 

「そ、そんなことは……いや、あり得ますね、あはは…」

 

 

 

味玉は、そう答えながらも思った。

 

 

(いやいやいや…欠食児童じゃないんだから…酒が飲めなくて元気ないならわかるけど…)

 

 

親切に対応してくれた所長さんに、丁寧に頭を下げ販売所を出る。少し離れた大通りまで来たところで三浦に聞いてみた。

 

 

「どうです会長、所長もいい人そうだし、あれなら配達の仕事も出来そうじゃないですか。寮も空いてたし決めちゃってくださいよ」

 

 

しかし、三浦はテンションが低いままこう言った。

 

 

「いやぁ…やっぱり新聞配達は無理ですよ。配達先覚えるのもそうですし、どうもあの、ちょっと働いて仮眠して、またちょっと働いて、っていうのがねぇ…」

 

 

 

散々世話をしてくれた吉岡さんの恩情を無に帰す発言に、いい加減キレかかった味玉は、強い口調で三浦を問いただす。

 

 

「何を贅沢なことを…じゃ、宅配ドライバーにするんですか?!そっちの方が、道に迷った挙句、届け先を間違ったりして破茶滅茶なことになりそうですけどね!」

 

 

「あっちもねぇ…考えてみると、あのホレ、機械でピッピってやるやつ?あれ出来ないんですよね…だから前に佐川でバイトした時も助手席の横乗りしかやらせてもらえなかったし…」

 

 

「……」

 

 

あまりの我儘、あまりの身勝手さに、本気で殴りたくなった。いや、パンチは避けられてカウンター喰らうから、ハイキックでも出そうかと思ったが、グッとこらえ

 

 

「吉岡さん、すみません。一旦家に戻って三浦と話してみます。今日のところは保留にして持ち帰らせてもらえませんんか」

 

 

吉岡さんも流石に残念そうにしていたが、すぐに切り替え快く了承してくれた。

 

 

 

 

2月24日日曜日 合宿6日目

あの後話をしたが、結局三浦の意思は変わらず、やはり寮・賄い付きの土方の仕事を探すということで落ち着いた。

 

 

そもそも、建築系は、天候や現場の繁閑で仕事にあぶれる日があるから安定した仕事を検討していたのだが、深夜の牛丼屋とかでバイトするからそれでも構わないということだった。

 

 

味玉の自宅の近所に、6畳風呂無しトイレ共同のアパート月額2万3千円という物件を見つけ、今日下見に行く予定だったが、それもキャンセルした。

 

 

敷・礼金は無いのたが、最初に支払う初月と翌月の家賃、火災保険料、仲介手数料、退居時の清掃料諸々を合計すると10万円程用立てなければならない。今の三浦にはキツイ。

 

 

味玉は、半ば嫌気がさし『ジムに行くから自分が帰るまで、どこかで時間を潰してくれ。コンビニでタウンワークでも貰ってきて仕事探しをすればいいんじゃないか?』と言って三浦を家から叩き出した。

 

 

ジムでは、久しぶりに厄介ごとを忘れ、いい汗をかいた。

 

 

気を持ち直し、明日からまた仕事探しだ。

 

 

 

 

2月25・26日 合宿7・8日目

 

 

味玉弁当

賞味期限切れの焼きそばがあったからお弁当にしたよ♬

 

月曜日

振り出しに戻り、寮・賄い付きの建築系の仕事を探し、5社ほどメモにした。

その日の夜、休憩中に電話するよう言って三浦に渡す。

 

 

火曜日

三浦と夕食を摂りながら結果を聴くと、そのうちの1社、白澤建設という会社の面接を受けることになったという。

 

さっそく明日の仕事終わり、社長である白澤さんと18時に船堀で待ち合わせだそうだ。

先方も乗り気で、今回は上手くいきそうだと自信満々に三浦が語る。

 

 

「へぇ…そりゃ良かったですね。でもウチに居られるのも今日含めてあと3日しかない。決まればいいですけど、もう後がないんですから頑張ってくださいよ」

 

 

味玉は内心(流れ的にもうひと波乱くらいあるのがお約束だよなぁ…)と思いながら、嫌味タップリに激励する。

 

 

「はい、頑張りますよぉ〜!ところで明日の現場どうやって行けばいいのかなぁ…確か、ナンとか桜ヶ丘って駅に7時集合なんですよ」

 

 

「は?ナンとかじゃ分かんないですよ。ナニ区ですか?」

 

 

「区じゃなくて市だったな…えーっとポチじゃなくて、ハチでもなくて…」

 

 

「もしかしてタマ…いや、多摩市すか?」

 

 

「そう!その多摩市!そんでナンとか桜ヶ丘!」

 

 

「会長、それ多分ね、聖蹟(せいせき)桜ヶ丘。確かジブリ映画の舞台にもなった聖地ですよ」

 

 

「お!いいですねぇ、マグロも好きですけどブリも好きですよ」

 

 

「そのブリじゃなくて、ジブリっていうのはね…いや、そんなことより大丈夫なんですか?18時面接ですよね?間に合います?」

 

 

「大丈夫です。いつも早く終わる現場だって言ってたし、急いで行けば楽勝っすよ!押忍押〜忍!」

 

 

 

ネットで電車の時間を調べると、早くても1時間、乗り継ぎが悪ければ1時間半ほどかかる場合もある。

現場が駅からどれくらい離れているか知らないが、遠ければその時間も見ておかなければならない。

 

 

「 ねぇ…この時間じゃもう迷惑だから、明日の昼休憩の時にでも白澤社長に電話して、現場の終わり仕舞いによっては少し遅れる可能性があるって伝えといた方がいいんじゃないですか?約束の時間に遅れたら印象悪いでしょ?」

 

 

「チョっちゅね!わっかりましたぁ〜!電話しまーす!押忍!押〜忍!」

 

 

 

ダメだ…

酔っ払ってきた…

今日はもう何を言っても無理だな。

 

 

2月27日 水曜日 合宿9日目

 

味玉朝メシ

朝メシ〜…(*´﹃`*)

 

 

三浦がちゃんと電話したかどうか不安であったものの、この日の味玉の現場はコンクリート打設の日だったため三浦を気遣っている余裕はなかった。

 

 

朝礼前からポンプ車を搬入しミキサー車を30台以上搬入出、コンクリートが打ち終わり、ポンプ車が現場を後にすると既に17時に近かった。

 

 

念のため三浦に電話をかけるも出ない。

移動中だろうか?

時間をおいて何度かかけるもやはり繋がらない。

 

 

味玉は、なんとも言えぬ不吉な予感が込み上げてきたが、どうすることもできない。

 

 

 

ま、ケ・セラ・セラ

なるようにしかならないさ♬

 

 

 

と、Kの待つ自宅へ向け自転車のペダルを踏み込んだ。

 

 

 

 

第6話に続く

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三浦国宏 50男・規格外の就活 第4話『地獄にヨシオカ』

前回までのあらすじ

勢いと成り行きで、アマチュア史上最強のボクサー三浦国宏を再び自宅に招いた味玉。

『泊めるのは2月いっぱいまで』という絶対条件をつけられたものの、なんとか元嫁の許しも取りつけ、寝床のなかった三浦と味玉の『10日間の就活合宿』がスタートを切った。

果たして、三浦は無事に期限までに仕事見つけ、味玉の家を出ることができるのか?

波乱の10日間をどうぞお楽しみください。

 

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

 

第4話 地獄にヨシオカ

 

2月20日水曜日 合宿2日目の夜

 

「はぁ…じゃ、また最初からやり直しですか…」

 

 

味玉は、ダイニングテーブルで夕食を食べる三浦と向かい合い、ため息をついた。

 

 

「あいすみませんせんねぇ…4tトラックの運転手は40歳までだって言うし、他は、寮があっても賄い付きじゃなかったり…あ、1っこだけ寮付きで、賄い付きの仕事があったんですけど、寮費が1日1,500円、食事が500円×3食で1,500円も引かれるんですよ。そんでもって、1万2千円て書いてあったのに、最初は見習いだから9千円からって言うんですよ…1日6千円じゃぁねぇ…」

 

 

もう3度目だと言うのに、三浦は今日も味玉の家に真っ直ぐ辿り着けなかった。

大して難しくない道を迷った三浦の帰りを待ちきれず、味玉と息子のKは、先に食事を済ませた。

いま Kは風呂に入っている。

 

 

「贅沢言ってる場合じゃないでしょう。どこもそんなもんですよ。真面目にやってりゃ、そのうち日当も昇げてくれますって。それに、不思議に思ってたんですけど、なんで、そんなに賄い付きにこだわるんです?コンビニとか…それが嫌なら寮の近くで安い定食屋さんとか見つければいいじゃないですか」

 

 

「マグロが大好きなんですよ」

 

 

「は?…何ですか?よく聞こえなかった」

 

 

「いや、だからマグロが大好きでねぇ」

 

 

「意味分かんないんすけど…言っときますがね、ウチはマグロなんて高級品は膳に上らないですよ。食いたきゃ自分で買ってきてくださいよ」

 

 

「いや、そうじゃなくてですね…ほら、私昔あそこで働いてたじゃないですか、なんつったけなぁ…蝶々…じゃなくって、竹内…でもなくて…」

 

 

「あんた分かってて言ってるでしょ…みやこ…築地場外にある『まぐろのみやこ』でしょ?それが?」

 

 

「そう!そのみやこ!賄いにマグロがよく出てさ、コレがウマいのなんのって…だからやっぱり賄い付きの仕事がいいなぁって…ね♡

 

 

 

殺意…

 

 

何が『ね♡』なのか…

 

 

 

「全く…なに言っちゃってるんだろうね、この全身パンチドランカーは…あのねぇ会長、それは、たまたま働いてたのがマグロ屋さんだったからですよ。牛丼屋で働けば牛丼、ラーメン屋ならラーメンが賄いなの!」

 

 

え?!そうなんですか?へぇ…だから、前の会社の寮じゃ全然マグロ出てこなかったんですね。ケチな会社だなぁってずっと思ってました…へぇ…」

 

 

「何が『へぇ…』ですか、それに、そんなにマグロが食いたきゃ、賄いなしの寮に入るとか、自分で安アパート借りるなりして、スーパーとかで買ってきて好きなだけ食べればいいじゃないですか」

 

 

そ、そう言われたらそうですね!…全然思いつかなかった!いや〜味玉くんキミ頭いいねぇ〜…へぇ〜…」

 

 

 

再び殺意…

 

 

バカにしてんのか?コイツ…

 

 

 

「ねぇ…本当にそれが賄い付きにこだわってた理由なんですか?それとも冗談?もしホントにそうなら、だいぶ仕事探しの幅が広がりますよ、ちょっと他の業種も探してみますか?」

 

 

「いいですねぇ〜!お願いします…あ、ちょっとトイレに…」

 

 

「はい、行ってらっしゃい。もう間違えないですから大丈夫ですよ」

 

 

三浦は、家までの道順どころか、大して広くもない味玉の家のトイレの場所さえ、なかなか覚えなかった。

 

 

何度となく用を足しているのに、必ず廊下の反対側のウォーク・イン・クローゼットのドアを開けてしまうのだ。

 

 

三浦が夜中にトイレに起きると、そのままクローゼットに用を足してしまわないか心配で、味玉も起き出し、その都度トイレの場所を教えた。

 

 

しかし、もう大丈夫。

先ほど三浦の帰宅前に対策を講じたのだ。

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

何回間違えるんすか?…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

風呂上がりのKに歯磨きをさせ、進研ゼミのタブレットを持たせ寝室に向かわせた。

「9時には寝るように」とも付け加える。

 

 

「じゃぁ、明日は少し幅を広げて職探ししてみますよ。寮付き賄い付きにこだわらなければ、色々あると思いますよ。安アパートも見ときますから」

 

 

「悪いですねぇ…お願いします。アパートは3畳くらいあればいいですから。風呂もいらないしトイレも共同でいいですから」

 

 

「分かってますよ、風呂付き物件なんて住んだらバチが当たって地獄に堕ちますよ…さ、明日も早いし一杯飲んで寝ましょ」

 

 

「え?もう寝るんですか?…いやね、お土産があるんですよ。味玉くんも一緒にどうかなぁって思ってね」

 

 

「え?お土産?…そりゃ、ありがたいっちゃ、ありがたいけど…そんな無駄遣いしなくていいですよ…それに道草しないで早く帰ってきてくださいよ」

 

 

味玉は、そう言いながらも(やはり世話になる身…彼なりに気を使ってくれてるのかな…)と、改めて、いつでも誰にでも優しかった三浦を思い出した。

 

 

和室でリュックをゴソゴソやっていた三浦が「あったあった、ありましたよ!」と言いながら、何やら手にして戻ってくる。

 

 

テーブルに置かれたそれは…

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

ま、またですか?…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

「ねぇ…1回殺していいですか?…てか、このDVD随分ぶ厚いけど、もしかしてVHSじゃないですか?ウチにはビデオデッキなんかないですよ…あっても絶対使わせないけど」

 

 

「え?!VHS?!…いやいやいや、参ったな…あの中古屋さん…」

 

 

「全く、しょうがない男だねぇ…」

 

 

そう言って、味玉は三浦が買ってきた『熟女系ヒーリング映像』のケースを手に取り、何気なく「パカっ!」と開けてみた。

 

 

すると…

 

 

 

「な、なんじゃゴラァア!?!!!」

 

 

 

ブーーッ!…ちょっと、ビックリさせないでくださいよ味玉くん、吹き出しそうになったじゃないですか」

 

 

 

出しそう、じゃなくて思いっくそ吹き出していたが構わず続けた。

 

 

「会長…コレVHSじゃないです。分厚かったのはコレが原因です」

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

いっぱい入ってるし…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

えぇぇーーー!いっぱい入ってる♡わぁ〜嬉しいなぁ〜♡」

 

 

 

満面の笑みである。

 

 

「良かったですねぇ会長…って、いやいやいや、そうでなく!コレが見たかったら、とっとと仕事と住むとこ見つけて出てってくださいよ!そうすりゃ好きなだけ見ていいですから」

 

 

「分かりました!頑張ります!押忍!」

 

 

まずい『押忍!』が出てきた。

この「押忍」と「あ、そうですか!」が出てきたら、酔ってきた証拠、危険信号だ。

 

 

 

「さ、それ飲んだら、もう寝てください。明日の現場も新宿でしたよね」

 

 

「わっかりました〜寝ま〜す!新宿で〜す!押忍、押〜忍!」

 

 

🌙

 

三浦国宏と2段ベッド

ご飯の間に海苔を挟んだ弁当を『2段ベッド』というらしい…



 

2月21日木曜日 合宿3日目

翌早朝

三浦を起こし、朝食を食べ、弁当を持たせ駅に向かった。

 

 

すると偶然、駅前で辻立ちするFacebookの友人に出くわす

 

三浦国宏と猪野たかし

平日は毎日何処かしらの駅に立つ猪野さん

 


「あ、おはようございます猪野さん。コレ、例の三浦国宏です」

 

 

猪野さんは、僕のブログを読んでくれているので、三浦のことも知っているのだ。

 

 

「あ!この人が噂の…どうも初めてまして猪野です。よろしくお願いします」

 

 

丁寧に頭を下げる猪野さんに、その昔、いま話題の桜田義孝大臣の秘書(と言っても、ただの雑用係だろうが)をしていたことがある三浦が、昔話を始める。

 

 

三浦国宏の過去

秘書なんて出来ないだろうに…

 

 

いつまで経っても三浦の話は終わりそうにない。

猪野さんも、いい加減迷惑そうだ。

 

 

「会長!あんまり油売ってると遅刻しますよ!」

 

 

 

なおも話そうとする三浦を、猪野さんから引っぺがし、駅の改札へ降りる階段へと向かわせ、味玉も自転車にまたがり自分の現場へ向かった。

 

 

いつものように仕事は暇なので、早速スマホで仕事探しをする。

現場監督が何か話しかけてきたが「今忙しいから後にして!」と突っぱねた。

 

 

寮付き、賄い付きにこだわらなければ、年齢制限のない仕事もたくさんあるだろう。

建築・土木関係に限定しなければ、なおさらだ。

 

 

しばらく検索していると、目に留まったのは『新聞配達員』である。

 

 

(あー…いいかもなぁ、新聞配達員…寮もあるし、休刊日も年に数回だから、日雇いの土方と違って、仕事にあぶれることもない。朝…というか深夜から朝刊の準備して配達して、終わったら仮眠して、すぐ夕刊の時間だから逆に毎日が休肝日だ。酒もやめられるかも…)

 

 

『配達先の家を覚えられるのか?』という最も重要な問題を抱えつつも、電話をしてみる。

 

 

 

「もしもし、お忙しいところすみません。ネットの求人をみたんですが…」

 

 

電話に出たのは、吉岡さんと名乗る人物。

『厚生労働大臣の認可を得た有料職業紹介業』を営む社長さんで、東京近郊の新聞販売所に人材を紹介することを主な業務としている。

少ないが建築・土木の求人案件もあると言う。

 

 

自身も新聞奨学生を経験し、努力の末に会社を立ち上げた苦労人だとのこと。

どんな質問にも、とても親切丁寧に答えてくれる吉岡さんに好感を持った味玉は、全てを正直に話してみることにした。

 

 

実は、職を探しているのは自分ではなく、三浦国宏という、とんでもない厄介な男であること…

道に迷ったり、家のトイレの場所もなかなか覚えず、配達先のお宅を覚えられるのか甚だ怪しいこと…

酒を飲むとさらに厄介さに拍車がかかり、これを機に酒をやめさせたいこと…

 

 

しかし長所もあり

 

 

築地や豊洲で働いていたので朝は強いこと…

頭は悪いけど、自転車で何処へでも行くほど、体力だけはあること…

熟女が大好きで結構モテるから、年配の女性には、うってつけの拡張員になれる可能性があること…

 

 

 

などなど。

 

 

吉岡さんは、笑って答えてくれた。

 

 

「大丈夫です、全然問題ありませんよ。いま新聞配達員は不足していて、東南アジアから来た外国人も多く雇っています。土地勘もなければ、日本語すら覚束ない彼らでもビジュアルで配達ルートが分かるアンチョコもあります。それに、ルートを覚えるまで、ちゃんと先輩のサポートが付きますから安心してください」

 

 

「そ、そうなんですね!ありがとうございます!じゃ、今日三浦が帰ってきたら新聞配達やる気があるか確認して明日また電話します。もし、三浦がその気になったら是非よろしくお願いします!」

 

 

「分かりました。お待ちしています。私の方でも、いま募集している配達所をいくつかピックアップしておきますよ。それでは」

 

 

 

 

電話を切った味玉は思った。

 

 

いや〜〜

いい人だなぁ…吉岡さん♡

よし!帰ったら会長を説得して、何がなんでも新聞配達をやらせよう!

そんで、とっとと出てってもらおう。

邪魔だから…

 

 

 

そして、その夜

4度目にして、ようやく迷わず帰って来られた三浦に「ほら!家の場所だって覚えられたじゃないですか、新聞配達だって大丈夫ですよ!」と説き伏せ、最初は渋っていた彼を、なんとかその気にさせた。

 

 

2月22日金曜日 合宿4日目

その日の日中

再度、吉岡さんに電話をかけ、三浦が興味を示している旨、しかし、やはり若干の不安もあるようだと伝えた。

 

 

すると、吉岡さんは、国分寺の会社から江東区の僕の自宅まで出向いて、三浦の不安が解消するよう、仕事のやり方やサポート体制、詳細な労働条件などを説明しにきてくれるとのこと。

その上、それでも気に入らなければ断ってもらって構わない、とまで言ってくれたのだ。

 

 

味玉は思わず電話口で頭を下げながら、今日の仕事終わり、吉岡さんと自宅で会う約束を取り付けた。

 

 

味玉は、電話を切って胸をなでおろし、思った。

 

 

(あぁ…なんて素晴らしい人だ!地獄に仏…いや、『地獄に吉岡あり!』だ。これを味玉家の家訓に加えよう…そして、もう吉岡さんに全てお任せしたい…なんなら、そのまま国分寺に持って帰ってもらえないかな…邪魔だから…)

 

 

希望の光が差すのを感じた味玉は、搬入車両もないのに鼻唄を歌いながらゲートに向かった。

 

 

 

 

たまには仕事しよう!

 

 

 

第5話に続く…

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三浦国宏 50男・規格外の就活バックナンバー

第1話 ローバ帝国 〜冬の時代〜

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第2話 自転車があればなんでも出来る!イチ・二・サンっ!ダァーーー!

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 第3話 10日間の就活合宿 〜拳の衝動〜

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三浦国宏 50男・規格外の就活 第3話『10日間の就活合宿〜拳の衝動〜』

前回までのあらすじ

息子のKが元嫁の家に泊まりに行っている日曜日だけ』という条件で、寮付きの仕事を辞めてしまい寝る場所がないアマチュア史上最強のボクサー『三浦国宏』を自宅に招いた味玉。

三浦に、スマホを使った仕事探しのやり方を教えようとしたのだが、iPhoneしか触ったことがない味玉は、三浦とともにアンドロイドの前で固まり途方にくれる。

仕方なく自分のiPhoneで三浦に合いそうな仕事をいくつかピックアップしてメモにして渡した。

今日の現場である新宿まで自転車で行くために、先ずは昨日放置した自転車を取りに錦糸町まで歩いて行くという三浦。

果たして無事寮付きの仕事にありつけるのだろうか。

 

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

第3話 10日間の就活合宿 〜拳の衝動〜

 

 

アレから2日後の火曜日

昼飯の弁当を食べ終えて、ブログでも見ようかとスマホを手にした時のことである。

まるで、それを見計らったように味玉の携帯が震え、三浦からの着信を告げた。



三浦国宏 50男・規格外の就活 第3話

三浦国宏からの着信が新たなトラブルの始まりを告げる

 

 

心なしか、バイブレーターの振動が、いつもと違う気がした。不機嫌さと不安さが入り混じったような不安定な振動に感じるのだ。

 

 

(もしかして仕事が決まったか?…まさかな、あの男に限って、そんなに上手く事が進むわけがない、今度は何だろう…)

 

 

「あー!味玉くん。いつも悪いですねぇ。今電話して大丈夫ですか?押〜〜忍♬」

 

 

「大丈夫じゃないけど…しょうがない。何ですか?仕事決まりましたか?」

 

 

 

いつもの通り…いや、むしろ、いつも以上に能天気な三浦の声 に(まさか本当に仕事が決まった知らせか?…)と淡い期待を浮かべながら聞き返す。

 

 

「あのねぇ、ちょっと聞きたいんですけど、東京のどっかにアイチって言う住所ありましたっけ?」

 

 

「え?東京でアイチ?…いや、聞いたことないですけど…でも、どうでしょうね、もしかしたらあるかもしれませんけど…何でですか?明日の現場が、そのアイチってとこなんすですか?」

 

 

「いや、それがですね…味玉くんがスマホで教えてくれた仕事の検索のヤツさ、僕も真似して、今やってるんですけどね。何回やっても愛知って住所の仕事しか出てこないんですよ。それも不思議なことに、車工場の仕事ばっかりなんですよね。何でですかねぇ…でもね、すごく条件がいいんですよ!寮付き賄い付きで40万円〜って書いてあるんですよ!もう、ここに決めようかと思ってましてねぇ」

 

 

 

殴りたい…

いや、ダメだ。

 

スリッピングされてカウンター食らう…

 

 

「あのねぇ…会長。それ東京じゃなくて愛知県ですよ。ア・イ・チ・ケ・ン!なんすかそれ!エリアを絞り込む時に「東京」じゃなくて「愛知」を選んだんじゃないんですか?…てゆーか、ボクが渡したメモの会社はどうしたんですか?まさか全部ダメだったとか?」

 

 

「いや、それがねぇ…」

 

 

「何ですか?まさかメモを無くしたとか、まるで漫画か小説のネタみたいにマヌケなこと言うんじゃないでしょうね」

 

 

「………」

 

 

マ、マジすかポリス!!何やってんすか…全く」

 

 

「おかしいんですよねぇ…確かにポッケにしまったはずなんですけどねぇ…」

 

 

 

殴りたい…

いやダメだ。

 

ガードされて、そのガードした左手でフックを返される…

 

 

「どうしましょう…愛知行ってみようかなぁ」

 

 

ダメです。未経験で車の組み立ての仕事なんか採用されるわけないですよ。おそらく年齢制限とかもあるだろうし。それに万がイチ採用されたとしても、その仕事はやっちゃダメです。ようやく落ち着いたリコール問題が、また世界の自動車業界を震撼させます」

 

 

「はぁ…なんでしたっけ?そのブラジャーみたいな問題って」

 

 

「ええ、ノーブラで自動車運転すると乳が揺れて運転しづらいですよって…そりゃワコールじゃーいっ!…ってね会長…アンタとこうやって遊んでるほどボクは暇じゃないんすよ…ブログも書かなきゃなんないし、Facebookのコメント返信したり「いいね」押したりしなきゃなんないし、こう見えて忙しいんですよ」

 

 

「へぇ、それが味玉くんの今やってる仕事ですか?なんか面白そうですねぇ。僕もやってみたいなぁ」

 

 

「い、いや、これは仕事じゃなくて、暇だからやってるだけで…いや、決して暇じゃないんだけど…あーーー!もう、めんどくさっ!もう1回だけ教えるから、今日仕事終わったらウチに来てください。わかりますよね?ウチの場所。道草食わずにちゃんと帰って来るんですよ。DVDも買っちゃダメですよ!」

 

 

「あいあい、わっかりましたぁ〜!じゃ、仕事終わったら電話しまーす!押忍!押忍!」(ブチっ!ツー…ツー…)

 

 

(あー…勢いでつい、言っちゃった…。ま、しょうがないか…)

 

 

ウチに帰り、一杯ひっかけながら夕飯の支度をしているとKが帰ってきた。

宿題の丸付けと明日の用意を終えたところでK に尋ねてみる。

 

 

「ねぇKくん。三浦会長って覚えてる?」

 

 

「うん!覚えてるよ。としかげ会長のことでしょ?」

 

 

「いやいや、としかげさんは木村会長。としかげ会長は、いま行ってるジムの会長で木村鋭景っていうの。三浦会長は、としかげさんのジムに行く前、Kくんが保育園の頃にパパとよく行ってたジムだよ」

 

 

「あー!思い出した。あの色んなボールで遊んでくれた人?」

 

 

「それはトレーナーの田中ちゃん。ボクの中学の同級生」

 

 

三浦国宏の経営するミウラスタジオにて

25年ぶりに偶然再会した中学の同級生田中ちゃん

 

「えーとじゃ、分かんないかも…」

 

 

「ホラ、メディシンボールを枕にするから首が90度直角に曲がったままリングで寝てたり…タグのついたままの帽子をかぶった上に、ビリビリに破いた拓大カラーのオレンジのTシャツを着て街をウロついたり…受付のカウンター席に座ってパソコンで仕事してるフリしながら熟女のエロ動画見てたりする、いつも酔っ払ってる変なおっさん」

 

 

「あー!あのいつも『押忍!押忍!』って言ってる変な酔っ払いね!アレが三浦会長なの?用務員のおじさんかと思ってた」

 

 

「いやKくん、それは用務員のおじさんに大変失礼だよ。取り消して謝りなさい」

 

 

「はぁい…ごめんなさい。で、その三浦会長がなんなの?」

 

 

「今日ウチに来るんだよ。お仕事の話をしにね。そんで、一緒にご飯食べようと思うんだけどどうかな?」

 

 

「うん、別にいーよ。なつかしーなー!ボクのこと覚えてるかなー!」

 

 

Kはそう言って、ソファに飛び乗り、ピョンピョン跳ねてる。

 

 

良かった…なんだか楽しそうだ。

いつもふたりきりの食事だから、やっぱり寂しいのかな?…

 

 

タグ付きの帽子をかぶるお茶目な三浦国宏

なんのアレですか?…( ̄▽ ̄;)💧

 

お気に入りの拓大カラーオレンジをアレンジする三浦国宏

お気に入りの拓大カラー「オレンジ」を「アレンジ」

 

 

KがリビングでYouTubeを見てる間に、寝室に行って元嫁に電話をかけた。

 

 

「あーもしもし?あのさ、ボクが前行ってたジムの会長で三浦国宏っていう、元オリンピック選手がいるんだけどさ、色々あって今泊まるところがないんだ、ちょっとの間だけウチに泊めてあげてもいいかな?」

 

 

「……Kは、なんて言ってるの?」

 

 

「Kは『いいよ』って言ってる。保育園の時に何度も会ってるし、知らない人ではないんだ。鍵は渡さないし、ボクがいない時に家に居させることはしない。もちろんKとふたりきりにもしないから。まぁ変な人だけど悪い人じゃないから、そこまで神経質になることもないんだけどね」

 

 

「分かった。でも、期限を切って…そうね、2月一杯で住むところ見つけて出て行ってもらって。それ以上は絶対ダメ」

 

 

「分かった。ありがとう」

 

 

 

よし。

これで当面の寝床は確保できた。

あとは、寮付きの仕事を一刻も早く見つけてあげよう。

 

 

そして、駅に着いたと電話があってから、いつまでたっても家に辿り着かず、盛大に道に迷った三浦を迎えに行き、夕食を済ませてテーブルに向かい合った。

 

 

Kは、風呂に入らせ歯磨きをさせて、いつもより早めに寝室へ向かわせた。

 

 

 

「いいですか?会長、いま言ったのがルールです。それでよければ2月いっぱいはウチに寝泊まりしていいです。あと10日しかないけど、その間に新しい寮付きの仕事をなんとかして見つけましょう」

 

 

「分かりました。本当に申し訳ないですねぇ。よろしくお願いします」

 

 

ペコリと頭を下げ、やけに神妙な三浦に「少し強く言いすぎたかな?」と反省しながら席を外し、夕飯の洗い物をしにキッチンに向かった。

 

 

 

洗い物をしている間、三浦は何やらブツブツ呟いていたが、水道の水がシンクを叩く音と、食器同士がぶつかり合う音で、何を言っているかは所々しか聞き取れない。

 

 

適当に相槌を打っていると…

 

 

「おかしいなぁ…確かに、このポケットにメモをねぇ…ん?…アレ?」

 

 

「え?何ですか会長?」

 

 

ポッケをゴソゴソしていた三浦が何やら取り出し、叫んだ。

 

 

 

あああっ!!!」

 

 

 

!?…う、うるさいよ!…Kが寝てるってのに…なんなんですか?まさか無くしたメモがあったとかじゃないですよね?」

 

 

 

布巾で手を拭い、再びテーブルについて三浦に向かい合うと…

 

 

「吉野家さんの味付け海苔が出てきた…」

 

 

味付け海苔の袋を手にした三浦が、驚愕の表情で目を白黒させている。

 

 

 

な、殴りたい!

いや、もう殴ろう!

今なら酔ってるから当たるかもしれない!

 

 

 

味玉がそう思って、拳を握り締めた時、もっと味付け海苔がないかとポッケを探っていた三浦が再び目をまん丸にして味玉の顔を凝視した。

 

 

適当に写真を撮っていると全てがネタになる三浦国宏

適当に写真を撮っていると全てがネタになる三浦国宏

 

 

「あ…あった…」

 

 

 

そう言って、アホヅラで呆けている。

味玉は、あまりのバカらしさに力が抜けて殴る気力もなくなり三浦に言った。

 

 

「あのね、会長…いくら貧乏でも、ウチにだって海苔くらいありますよ。欲しいならあげますから持って行って昼の弁当と一緒に食べていいですよ…なんなら今食べますか?」

 

 

「いや。海苔じゃなくて、例のメモ」

 

 

「…は?…え?」

 

 

混乱する味玉を尻目に、三浦は、海苔とメモを両手でぶら下げて、嬉しそうにしている。

 

 

ポッケから吉野家さんの味付け海苔が出てきて嬉しそうな三浦国宏

ポッケから吉野家さんの海苔が出てきて嬉しそうな三浦国宏

 

 

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

もう、どうでもいいや…

 

明日も早いし…寝よう…

 

 

 

こうして、味玉と三浦の『10日間の就活合宿』が始まった。

 

 

味玉はこの時『いま建築業界を始め、どこも人手不足だし、選ばなきゃ仕事なんてすぐ見つかるだろう』と、安易に考え、このあと常軌を逸したトラブルが次々と巻き起こるとはツユにも思っていなかったのであった。

 

 

第4話に続く…

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三浦国宏 50男・規格外の就活 バックナンバー

 

第1話 老婆帝国 〜冬の時代 〜

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 第2話 自転車があればなんでも出来る!イチ・二・サンっ・ダァーーーっ!!

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三浦国宏 50男・規格外の就活 第2話『自転車があればなんでも出来る!イチ・二ィ・サンっ・ダァーーーっ!!』

前回までのあらすじ

職探しをしようにも、スマホ操作もネット検索も覚束ない三浦国宏を不憫に思った…というよりも、何度も電話がかかってきて「検索のやり方を教えてくれ」と言う三浦に、いい加減ウンザリした味玉は、彼を誘い、飲みに行くことにした。

実際にスマホの画面を見ながら、転職サイトの使い方を教え込むためだ。

待ち合わせの錦糸町に住む「ちとせさん」も誘い、3人で乾杯すると程なく、三浦は、せっかく見つけた住込みの土工の仕事を、何日か仕事にあぶれたという理由でアッサリ辞めてしまったことが発覚。

DVDプレイヤーどころか、今日から寝る場所すらないのに、何故か熟女系のエロDVDを買って喜んでいる三浦を囲み、彼の今後を話し合ったのだが…

 

 

 

↓↓↓第1話はこちらから↓↓↓

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三浦国宏 50男・規格外の就活

第2話 『自転車があればなんでも出来る!イチ・二・サンっ・ダァーーーっ!!』

 

 

「え?何の話ですか会長。もう1回最初からいいですか?」

 

 

ちとせさんと、今日から三浦をどこに寝泊まりさせようか、と相談していた横で、なにやらひとり呟いていた三浦が「ちょっと!ふたりとも聞いてますか?」と話に割り込んできた。

 

 

話を聞いてあげないと、いつまでも絡んでくるし、終いには拗ねてしまって鬱陶しいので、とても面倒だったが三浦の話を聞くことにした。

 

 

「じゃぁ、もう1回説明しますよ…だからぁ思い出すんですよ…エクアドルとかぁ…フィリピンとかぁ…50℃になると思い出してぇ『あー自分の故郷はあったかかったなぁー!』つぅんで…思い出すらしんですよ」

 

 

「…誰が?」

「…何を?」

 

 

味玉とちとせさんが同時に聞き返す。

 

 

「バナナ」

 

 

「は?」

「え?」

 

 

味玉とちとせさんの声がステキにハモる。

 

 

「だから50℃に戻してぇ…バナナを…それを5分間、そうすると、故郷を思い出して『わぁ〜〜懐かしぃ〜〜』ってなって甘〜〜くなるの♡それが最高のバナナなの…ね♡

 

 

 

 

 

何が『ね♡』なのか…

 

 

 

「ちとせさん、こんなバナナ奴はホっといて、さっきの話を続けましょう」

 

 

「そうね…まるで、楽しみにしていたバナナが腐ってしまって、泣く泣く処分したような最悪の気分ね。…で、あるにはあるんだけどね、私が倉庫代わりに使ってるマンションが。そこは、荷物があるだけで、誰も住んでないから使ってもらって構わないんだけど…」

 

 

「えー!さすがちとせさん、いいじゃないですか!それで解決ですね。良かった良かった!」

 

 

「いやそれが、場所が埼玉の奥地なのよ。駅からも結構な距離あるし…」

 

 

 

卓球の審判よろしく、味玉とちとせさんのやり取りに合わせ、ふたりの顔を交互にガン見していた三浦が、また割り込んできた。

 

 

「あ、大丈夫ですよ。私には自転車がありますからどこだって行けちゃいます。こないだも4時間くらいかけてナントカってとこに面接に…」

 

 

「それは、さっき聞きました!で、その4時間かけて行った面接に見事に落ちたんでしょ?ハイハイ、いいから、ちょっと黙っててください」

 

 

 

三浦は、どうやら最近のオキニらしい、そのエピソードを遮られ、しょぼん顔になる。

口をへの字ににして、箸で蟹味噌をこねくり回し始めた。

 

 

「ん〜〜埼玉かぁ…それはちとツライですね。現場は日々変わるから、ヘタしたらホントに4時間かけて仕事に行くハメになるなぁ…」

 

 

「でしょ?ちょっと他もあたってはみるけど…どのみち今日の明日じゃ、どうにもなんないわね」

 

 

 

困ったな…

このままじゃ、ホントに公園で寝泊まりする、ホンモノのホームレスになっちまう。

 

まぁ、この人のことだから、真冬でも風邪ひとつ引かないだろうとは思うけど…万が一ってこともあるからなぁ…

 

高校生の『オヤジ狩り』にあったこともあるし…

 

 

 

「しょうがないな…今日は、取り敢えずボクの家に連れて行きますよ…スゲーイヤだけど。ちょうどKも元嫁のところに泊まりに行ってるんで1日だけなら…明日以降のことは、また考えましょう」

 

 

「え!?いいの!?味玉くんやっさしぃ〜♡」

 

 

「ま、仕方ないですよ。この人には散々お世話に…アレ?…なってないな…むしろ、お世話しかしてない気が…」

 

 

「あはは〜!だよねー!でも、ホントにいいの?」

 

 

「乗りかかった舟ですわ、いや、毒を喰らわば皿まで、かな…それにボク一応マネジャーってことになってるし。ジムはもうないけど」

 

 

「へぇ、味玉くんて会長のマネジャーだったの?芸能人でもないのに?」

 

 

「いや、そういうマネジャーじゃなくてジムのマネジャーです。本来のマネジャーっていうのは、会員の入・退会を管理したり、選手の試合やスパーリングのスケジュールを調整したり、他にも色々と仕事があるんですけどね」

 

 

「ふぅん、でも、会長のオンボロジムは練習生も10人そこそこだったし、プロジムじゃなかったから試合に出る人もいなかったよね」

 

 

「そうです。だからボクの仕事は、酔った会長を担いでジムに運ぶのと、会長のFacebookをメンテナンスするのと、会長が飽きた頃に新しい熟女系のエロサイトを探して、パソコンのデスクトップにショートカットを作ることくらいでした」

 

 

「バカ過ぎる…」

 

 

「あはは!ですよね。でも、二郎さん…あ、送別会の時、ちとせさんも会ったでしょ?渡辺二郎さん。初めて二郎さんに会った時に会長が『コレがウチのジムのマネジャーです!よろしくお願いします!押忍!』ってボクを紹介してくれたんですよ。ボク同じ岡山出身で、二郎さん大好きだったからメチャクチャ嬉しかったんですよね」

 

 

「へぇ〜…そんなことがあったのね。でも、それを恩義に今でも面倒見るなんて、やっぱ味玉くんは優しいわ…あ!いけない、忘れてた!ウチの人も誘っといたんだけど、もう家に帰ってる頃だ。ちょっと電話してくるね」

 

 

 

そう言って、ちとせさんはスマホを手に席を外して、電話するには少し騒がし過ぎる店を出た。

 

 

(ほう!例のちとせさんの『愛しのパパン』が来るのか!確かプロレスラー…しかも覆面レスラーだって言ってたな…どんな人だろう…)

 

 

 

やがて、ちとせさんと共に現れたその人は、とてもプロレスラーとは思えないほど紳士で物静かなイケメンだった。

 

 

「どうも、初めまして渡辺です。お噂はかねがね…どうぞよろしくお願いします」

 

 

そう言って丁寧に頭を下げ、席に着いた。

 

 

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ジャージのエンブレムがチョーイカす♡

 

 

なぜ覆面をかぶっているのだろう?

素顔の方が、女子にモテそうなもんだが…

 

 

「こちらこそよろしくお願いします。いやぁ…ボクサーは何人も知ってますけど、レスラーの人とお会いするのは初めてです。興味あるなぁ…お話聞かせてください」

 

 

クールな表情のまま、しかし、ほんの少しだけ口角を上げた渡辺さんとグラスを合わせた。

 

 

プロレスの裏話を聞いたり、味玉オススメの短編小説、プロレスラーを主人公にした中島らも大先生の『お父さんのバックドロップ』の話などをしていたところで、渡辺さんが、ふと視線を三浦のビニールバッグに向けた。

 

 

開いたファスナーから覗いたDVDのケースに気づきヒョイとつまみ出して尋ねる。

 

 

「何ですか?コレ」

 

 

「あ…老婆時代です…」

 

 

渡辺さんは、クルクルとケースをひっくり返しながら真剣な顔でDVDの説明書きを読み込んでいる。

 

 

「きょ、興味ありますか?」

 

 

「はい…あ!いや、そ、そういう訳じゃ!」

 

 

ちとせさんが『そんな話聞いてない!』とでも言いたげな、驚きと怒りと呆れが入り混じった表情でパートナーを見つめる。

 

 

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覆面レスラーは熟女好き?

 

 

「あはは!良かったら持って行ってください。どうせ三浦はDVDプレーヤー持ってないし、ボクの家にはありますけど絶対使わせないですから」

 

 

「え!?いいんですか?ありがとうござ…アダっ!!

 

 

ちとせさんが全力で脳天唐竹割りをくらわせた。

 

 

「ギャハハ!ウケる!(≧∀≦)」

  

 

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お客さん この娘は顔出しNGですよ

 

 

そうして散々盛り上がり、そろそろ散会することになった。

 

 

肝心のスマホ操作は一切手付かずだが…ま、仕方がないだろう。

 

 

 

ちとせさんと渡辺さんが仲良く並んで歩く後ろ姿を見送ると、三浦がタクシーで帰るというので、味玉は表通りの国道14号線まで出て車を捕まえ、店の前で待つ彼の元に回した。

 

 

しかし、バカでかい荷物を何個も抱えた上に、自転車にまたがったままタクシーに乗り込もうと待ち構えている、どこからどう見ても頭がイっちゃってるパンチドランカーを見ると、そのまま通過して走り去ってしまった。

 

 

ジムワークをこなした上、結構な量を飲んでしまった味玉は疲労もあってか、三浦をたしなめる気力も湧かず、また14号線に向かった。

 

 

ようやく停車してくれた、3台目のタクシーの運転手は、荷物はいいけどトランクが閉まらないので自転車はダメだと言う。

 

 

「どうしましょ?自転車がないとマズイっすよね。面接も行けないし」

 

 

「あ〜いいのいいの!自転車なんかなくても全然オッケー、OK牧場!」

 

 

「え?何言ってんですか?明日は仕事でしょ?会長が地下鉄の乗り継ぎなんかしてたら永遠に地上に出られなくなりますよ」

 

 

「大丈夫だぁ〜!走って行きますから。新宿なんてすぐそこでしょ?」

 

 

 

( ̄▽ ̄;)💧

もう、どうでもいいや…

 

 

そうして、店の前に自転車を放置したまま我が家に帰り、家に着くなり仲良くダブルノックダウンした。

 

 

 

🤮🤮🤮

 

 

 

翌朝未明

まぁまぁの2日酔いを『気のせいだ!』と自分に言い聞かせ、なんとか起きだした味玉は、朝食とふたり分の弁当を用意すると三浦を叩き起こす。

 

 

朝食はガテン系のキホン♬

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ついでなんでね

 

 

「会長、起きてください!新宿で仕事ですよ!」

 

 

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大丈夫かな…この人…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

『今日は仕事行かない!』と駄々をこねる三浦をようやく起こし、朝食を済ませてテーブルに向き合った。

 

 

「会長、これから転職サイトの使い方を教えるから、よーーーーーく見て覚えてくださいよ。ホラ、携帯貸してください」

 

 

味玉は、三浦が自分で仕事を探せるようにと、スマホ操作を教えようとしたのだが…

 

 

「アラ?これ端末なんですか?どうやって画面開くの?」

 

 

iPhoneしか使ったことがない味玉は、ホームボタンが見当たらないスマホの使い方が分からず、三浦に尋ねた。

 

 

「え〜と…どうやるんでしたっけ?私もよく分かんないんですよね…」

 

 

しばらくスマホをイジクリ回して、ついに諦めたオッさんふたりは、三浦のスマホを眺め、しばし途方にくれた。

 

 

「しょうがない…ボクのスマホで調べるから見ててくださいよ。そんで良さそうなのがあったら電話番号をメモにしてあげます。休憩中か仕事終わりで電話してみてください」

 

 

 

そう言って5つほど求人募集している会社を見繕ってメモにして三浦に渡した。

 

 

三浦は平身低頭、メモを押し頂き、大事そうにポッケにしまう。

 

 

「んで会長、どうやって仕事行きますか?地下鉄の乗り継ぎ分かります?」

 

 

「自転車で行きますよ」

 

 

「は?自転車いらないって言うから錦糸町に置いてきましたよ」

 

 

「え?!そうなの?私そんなこと言った?…ありゃりゃりゃりゃりゃ…しまったな…ま、いいか。錦糸町まで取りに行きますわ。すぐそこでしょ?」

 

 

「いやいやいや、歩いたら小一時間はかかりますよ。いや、そんな荷物抱えてたらもっとかかるかも」

 

 

「大丈夫、大丈夫!楽勝ですよOK牧場イエイ!」

 

 

 

 

…もう好きにして

( ̄▽ ̄;)💧

 

三浦国宏 50男 規格外の就活

ホントに歩いて行くのね…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

そうして、荷物を抱え錦糸町まで歩く三浦の背中を、しばらく眺めた後、自分も仕事に向かうため、自転車の向きを変えてペダルを踏みこんだ。

 

 

 

仕事決まるといいな…

 

 

 

 

第3話に続く…

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三浦国宏 50男 規格外の就活 第1話 『ローバ帝国〜冬の時代〜』

三浦国宏が我が家の和室で寝ています。

 

布団からはみ出して寝る規格外の男 三浦国宏

お洒落な色違いの靴下♡

 

さすがは三浦国宏

 

ソウル・ロス2度のオリンピック出場

全日本社会人選手権8度制覇

246戦218勝28敗

 

アマチュア史上最強で最恐のボクサーであり、あらゆる常識からはみ出した規格外の男

 

 

我が家のチンケな布団に収まるような男じゃございません。

 

 

三浦国宏 50男 規格外の就活

はみだしっ!

 

そしてダイニングの床には、求人誌のタウンワークが広がっています。

 

 

三浦国宏 50男 規格外の就活1

「どうか三浦さんに目をつけられませんように」と願う募集主たち

三浦国宏 50男 規格外の就活2

なぜそこに並べる…

 

 

こうなったのには深〜い訳があります。

 

 

話すと、ものすごーーーーーく長くなるので話しますね。

 

 

え?

聞きたくない?

まぁ、そう言わずww

 

 

三浦国宏 50男 規格外の就活

 

第1話 ローバ帝国 〜冬の時代〜

 

先週末(確か金曜日くらいかな)のこと

また、いつものように三浦国宏から電話があり

 

 

「味玉くん、何度もすんませんねぇ…どうもこのネットのアレが苦手でねぇ…『お!この仕事いいなぁ』って思って、ナンカを押したんだけど、そっから先が分かんない。次はどこをどうしたらいいんですかね?…あ!これかな?…あれ?やっぱり違うなぁ…ね♡

 

 

 

か、かいちょ…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

「いや…『ね♡』って言われても…だから何度も言ってますけど、ボクもその画面見ながらじゃないと分かんないんですって…ん〜…困ったな…あ、そうだ!じゃ、久しぶりに一杯やりますか?そんで一緒に仕事探しましょうよ」

 

 

「いいですねぇ!じゃ今から行きますわ。どこに行けばいいですか?」

 

 

「いやいやいや、いま仕事中だし、しかも、まだ12時前っすよ。明後日の日曜日、錦糸町あたりでどうですか?」

 

 

「いいですよ。明後日は新宿で仕事だから終わったら電話します!いや〜、助かります押忍!いつもすんませんね〜〜押忍、押忍!イエ〜イ♬(ブチっ…)」

 

 

 

電話が切れた…

相変わらずだな…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

(そうだ!錦糸町なら、ちとせさんを誘おう!『なんか力になれるかも』って言ってたし…)

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

と言う訳で、日曜日の練習終わり

 

 

Liberation Boxing by Toshikage Kimura

ボクの通うボクシングジム

 


ジムの前のウッドデッキで一服してると電話が鳴った。

 

 

「押〜忍!いま仕事終わりました。どこに行けばいいですか〜?」

 

 

「錦糸町ですよ。え〜と仕事は新宿でしたよね?JRで来ますか?」

 

 

「いえ、自転車で行きます」

 

 

「は?嘘でしょ?自転車で?」

 

 

「楽勝っすよ〜♬都内ならどこだって自転車で行きますから。こないだなんて4時間かけてナントカってとこに面接に行きました。さすがにビックリされましたよ。面接は落ちましたけど

 

 

「…そ、それは残念でしたね…じゃ、気をつけて来てください」

 

 

「押〜忍!30分くらいってナビで出てますからすぐ行きます。余裕ですよ〜!押忍、押忍!(ブチっ…)」

 

 

 

電話が切れた…

相変わらずだな…

( ̄▽ ̄;)💧

 

 

てゆーかナビは使えるんかいっ!

 

 

どうせ時間通りに来るわけないし、ちとせさんと待ち合わせて先に始めちゃいました。

 

 

安あがりに南口の『磯丸水産』です。

 

 

三浦国宏 50男 規格外の就活

 

 

ちとせさんと会うのも随分久しぶり

 

 

えーと…確か…

そうだ!

3年前、三浦国宏の送別会で渡嘉敷さんの弟さんがやってる南砂の『鳥味』で一緒になって以来だ。

 

 

三浦国宏 50男 規格外の就活

 

 

 久しぶりの邂逅に、三浦国宏のことなどすっかり忘れて、蟹味噌なんぞ焼きながら楽しく呑んでいたところ電話が鳴り、スマホの画面が三浦の到着を告げた。

 

 

30分くらいと言っていたけど、やはり1時間半くらいかかっている。

 

 

「もしもーし!お疲れ様でーす。着きましたかぁ?」

 

 

「はいはい、ただ今到着、錦糸町の駅前です。どこに行けばいいですか?」

 

 

「南口の丸井分かります?そこまで迎えに行きますよ」

 

 

「あー丸井分かります。じゃお願いします。押忍!」

 

 

で、丸井の前まで行って三浦国宏を探すも見当たらない。しばらく待っても一向に姿を見せない。

 

 

(あれ?おかしいな、どこにいるんだろう…)

 

 

電話をかけても留守電。

店に上着を置いてきたのが悔やまれる。

 

このクソ寒い中、いつ現れるとも知れない三浦を待つのはまっぴらゴメンだ。

 

いったん店に戻ろうかと思ったが、丸井の1階にスタバを見つけコーヒーでも飲みながら待つことにした。

 

 

カウンターに並んで注文して気づいた。

 

 

あ、財布店に置いてきた…

 

 

 


『全然恥ずかしくありませんよ!』て顔でスタバを出たところで、ちょうど三浦を発見。

 

 

「何やってたんすか会長。駅前にいるって言うから迎えにきたのに、もうかれこれ…ホラ!20分も経ってるじゃないすか」

 

 

「めんご、めんご♡ちょっと欲しいもの見つけたんで買い物をね」

 

 

「ふぅん…ま、いいや、寒いし店行きましょ。すぐそこですよ」

 

 

ようやく3人揃って乾杯♬

 

 

三浦国宏 50男 規格外の就活

 

 

「ところでスゲー荷物ですね。何を買ったんですか?」

 

 

パンパンに詰まった大きなリュックと貴重品が入っているだろうショルダーバッグ、さらにバカでかいチェック柄のビニールの袋に何やら一杯詰まってる。

 

 

「いや、これは違うの。昨日で寮を出なきゃ行けなかったんで荷物を全部まとめたんですよ。買ってきたのはコッチです」

 

 

三浦がビニールバックから取り出したのは、彼の大好きな熟女系ヒーリング映像

 

 

その名も時代 ❤️』

 

 

三浦国宏 50男 規格外の就活

パート2やないかい…もしかしてパート1も見たんかいっ!

 

 

「え?寮を出たって…じゃ、住むとこないんですか?今日はどこに泊まるの?なんでそんなもん買ってんの?バカなの?」

 

 

「そうだなぁ…錦糸町なら錦糸公園かな。広いし」

 

 

「いや、ダメですよ会長!下手したら死にますって…いや、死なないか…バカだから」

 

 

「ま、そんなことは後で考えましょ!ホラホラ!かんぱ〜い♬イエ〜イ♬」

 

 

しかし、泊まるとこもないのに、なんでDVDを買ったんだ…

どうやって見るつもりだったんだろう…

 

 

やはりこの男…

 

規格外だ。

 

 

 

第2話『自転車があればなんでも出来る!』に続く… 

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