背伸びして受験した私立高校にまぐれ合格した。
中学の担任には『お前には無理だ。もうワンランク落とせ』と言われたが、ボクはその男子校に行く必要があった。
当時付き合っていた彼女が受験する女子高が、その高校と同じ駅にあったからだ。
毎朝、満員電車で彼女と揉みくちゃになりながら通学することを夢見て受験勉強に励んだ。
記憶力に悪影響があるという噂を聞き、試験日の半年くらい前から禁煙した。
果たして、見事合格し、その男子校に入学することになる。
彼女とピッタリくっついて満員電車に乗る毎日。
恥ずかしがり屋な彼女の上気する頰を眺めながらの通学は、そりゃもう!
しかし、最初の夏休みを迎える前に彼女とは別れてしまった。
男だけのつまらん日々が始まった。
因みに…
県内の私立では、イチニを争う進学校であるその高校での僕の成績は、5百何十人中、5百何十位くらいだった…と思う。
いつも成績表から目を背けていたから、正確な順位は覚えていないのだ。
無理して入った高校だから当たり前っちゃ当たり前なのだが、中学まではそれなりの学年順位をキープしていたので、そのヒドイ順位が受け入れれなかった。
プライドだけは無駄に高かったのだ。
かといって勉強する気も起きず、授業も上の空、更においてきぼりという悪循環が続いた。
やがて、同じような落ちこぼれ仲間ができた。
その中のひとり
ここより更に上位校を目指して中学受験から挑戦して連戦・連敗してきたヤツだ。
小学生の低学年から、友達と遊ぶこともせず、塾に行って勉強しまくるも中学受験に失敗…
その悔しさをバネに、中学でも部活も入らず、彼女も作らず、友達とも遊ばず、ひたすら勉強に励んだ。
が、高校受験もあえなく撃沈…
仕方なく、滑り止めだったこの高校に来たのだ。
もう、人生どうでもいいらしい。
何もかも嫌んなっちゃったらしい。
無理ないと思った。
幼い頃から、やりたいことも我慢して親の期待に応えようと必死で努力したんだろう。
人生の半分近くの年月を費やし、名門校に入ることだけを目標にやってきて、見事に報われなかったんだ。
大学受験で逆転サヨナラ弾を放つには、あと3年間、今まで以上の努力をしなければならない。
それでまた失敗したら?…
そんなのボクには無理だ。
度々、ふたりで授業を抜け出して遊んだ。
彼の部屋は、両親が経営する賃貸アパートの1室だったので、次第に落ちこぼれ達の溜まり場になった。
金もないし、何をするでもない。
タバコを吸って、酒を飲んで、アダルトビデオを観てクダを巻くだけだ。
そのうち、誰かがバイクの免許を取ると言い出した。
いいアイディアだと思った。
早生まれのボクは、彼らにだいぶ遅れて免許を取った。
バイト先の女の子の先輩という人から、5万円でヤマハのTZR250ccを譲ってもらった。
最初の恋人だ。
続…かないと思う。