味玉のシングルファーザー生活♬

ひとり親の子育て/テキトー料理レシピ/アホ小説/ボクシング&格闘技/ダイエット(減量)/指定難病と過去のうつ病…ほか・・ごゆるりと♬

連載アホ小説 『第7話 浅草駅前留学』

ガードマン味玉のFunnyな1日♬

バックナンバー

第1話 『漢の闘い』
第2話 『闘いの後には』
第3話 『みっちゃんとマキさん』
第4話 『焦げとヤマトと満月と』
第5話 『あゝ愛しの権田原』
第6話 『無差別級負傷者搬送』

第7話 『浅草駅前留学』

「ふぅ…びっくりさせやがって…ま、オレが不合格なワケないんだけど、さすがにちと焦ったぜ」

味岡玉夫(通称味玉)はガードマンである。

先日ガードマンの国家資格のひとつ『交通誘導警備業務2級』の合宿試験を終え、今日がその合格発表の日だ。
東京都警備業協会のホームページで確認できる。

ところが、何度見直しても自分の受験番号の欄には「✖️」が付いていて味岡は大いに慌てた。
何しろあれだけの大見得を切ったのだ。

「こりゃ、かなり恥ずかしいことになっちまうな…」

と冷や汗が出る思いだったが、よく見るとそれは味岡たちが参加した合宿ではなく、ひと月前、別日程の合宿参加者の合格発表だった。

改めて別ページに移動して見てみると今度は無事合格を確認することができたのだ。

「お!大豆生田くんも受かってる。権田原さんは…ダメだったか、やっぱりな…」

権田原は、筆記はなんとかなったようだが、そのあと行われた実技試験では四苦八苦していた。

実技試験では、あらかじめ決められたセリフを言う場面が至る所にあり、そのセリフを一言一句間違えてはいけない。

例えば『2次災害防止要領』における事故車の搭乗者に対するセリフはこうだ。

『大丈夫ですか?!停止表示板と発煙筒をお持ちですか?2次災害防止のため私が設置します。非常点滅灯をつけてください。発煙筒を取ります!』

というもので『発煙筒』と言うところで『発煙筒』と言っただけで減点になってしまう。
「なんじゃそら!」と思うのだが、そういう試験なのだから仕方がない。

そして権田原はセリフを間違う間違わない以前に例のアレがある。
最初にアホなワンフレーズを言ってからでないと喋り始めることが出来ない例の癖だ。
練習では常にこうだった。

「エンストとパンストって似て非なるものだよね。大丈夫ですかっ?!」

「おいっ!45番!今なんつった!!」

教官の怒号が飛ぶ。

「サザエさんって今誰が書いてるの?あとクレヨンしんちゃんも。負傷者の搬送、終了です!!」

「コラッ!45番!またお前か、真面目にやれっ!!」

「カレー味のう◯こと、う◯こ味のう◯こ…」

「いい加減にせんかっ!!」



昼の休憩時間、肩を落とし、うなだれる権田原を囲み、大豆生田と3人で作戦会議を行った。

「権田原さん、試験の間だけ我慢できませんか?」

大豆生田の問いかけにうつむいたまま首を横に振る権田原。

「初めて彼女が家にきた時『おいしいちんすこうあるけど食べる?』って聞いたらグーで殴られたんだけどボク悪くないよね。ダメなんだよ大豆生田くん…もう30年以上コレでやってきている。今さら変えられないよ」

権田原さんの言葉に諦めの色がにじむ。

「じゃ、せめて頭のところは教官に聞こえないように小声で呟いて、本チャンのセリフから大きな声で喋るとか」

「なんで金色じゃないのにキン◯マって言うんだろうね!そ、それだっ!!ありがとう味岡くん!!」

そうして昼休みが終わるまで、延々と自主練を繰り返す権田原の周りには鬼気迫るオーラが漂っていた。

その余人を寄せつけない雰囲気に、味岡と大豆生田のふたりも権田原の元を離れ、それぞれ試験前最後の練習に励んだ。


権田原は練習の甲斐もあり、午後から始まった本試験では順調に課題をこなしていった。

自分の実技試験の順番待ちをしながら、権田原の様子を気にしていた味岡は

(よしよし、コレならばなんとかなりそうだ。あともう少しだ、頑張れ権田原さん!)

心の中でエールを送る。


しかし、いよいよ最後の科目、コレを無事に終えれば、おそらく合格を勝ち取ることができるであろう『警察機関等への連絡要領』の時、その事件は起こった。



ジリリリン…ジリリリン…ガチャ

「はい、警察です。どうしましたか?」

「…ぃ……ぅ……ょ…。交差点で事故が発生しました。」

「場所はどこですか?」

「…ぉ……が……ど……よね。晴海通り沿い、築地本願寺前の交差点です」

「…?」

権田原のセリフがなんだかあやしい。
警察官役の教官も不審に感じたようだ。

おそらく、慣れない小声のしゃべり方でストレスがピークに達しているのだろう。
試験の緊張感も合わさってか権田原の肩は小刻みに震えていた。
後ろ姿なので、その表情をうかがい知ることができないが、耳が真っ赤に紅潮しているのが見える。

(マズイな…)

果たして、続いた次の教官とのやり取りで味岡の不安は現実のものとなる。


「負傷者はいますか?状況を説明してください」

「さ…さ…さ…」

「さ?…どうしたんですか?何があったんですか?!」

「さ…さ…さ…」

「は、早く負傷者の状況を言いなさいっ!」

さ、先っぽだけなら挿れたことにならないよねぇーーーーーー!!!!
…あ…ジイさんが道で倒れてます…」


シン…


と静まり返る試験会場。
一拍おいて教官の怒号が響き渡った。

「バ、バ、バ、バカもーーーーーーーーーんっ!!!!」


しかし、試験が終わり、気遣う味岡らの心配をよそに、荷物を抱え合宿所を後にする権田原の表情は晴れやかなものだった。

「『さようならドラえもん』の時の“のび太”はカッコよかったよね。いいんだ…コレで。ボクはこれからも未踏の地を拓きながら歩いて行くよ。それで死んでも我が生涯に一片の悔いなしだ」

そして去ってゆく権田原の背中を見送った後、その潔い生き様に、少しの感動と大部分のアホらしさを感じながら大豆生田くんと電車に揺られながら帰途に着いたのだった。



回想を終え、スマホのウェブページを閉じながら味岡は独り言ちた。

「ま、いいか…権田原さんは権田原だ。でも、あーゆー2級資格者がいてもいいけどな…世界が平和になるぞ」


さて、どうしよう。
仕事を終え、家に帰ってきたところで、この合格発表だ。

誰かとパァッと1杯やりたいところだけど、生憎みきさんと今日香ちゃんはお出かけだ。
なんでもチロルチョコ専門店がどうしたこうしたとか。

味岡に友達は…いない…


「仕方ねぇな、ヤマトとふたり寂しくお祝いするか!」

ヤマトが迷惑そうに味岡をチラ見し、またフイと向こうを向いて丸くなった。

「ふふふ、いいのかな?ヤマトちゃん♡こうなるだろうと思って買ってきたマグロの中落ち、俺ひとりで食べちゃうよ」

ヤマトはギョッと目を見開き、少しバツが悪そうに、ソロソロとちゃぶ台に寄ってきた。

そうそう
素直がイチバンww


ヤマトとふたり
中落ちをツツキながらビールのグラスを片手に考える。

それはそうと、問題は週明けからの現場だ。

2級資格を取ったからには、やはり警備隊長として要資格現場に配置されるのだろうか?

だとしたらメンドクセーな…

いい現場に常駐できればラッキーだけど、資格が必要な交通量の多い幹線道路に面した現場は危険も伴う。

それに、クセのある監督や生意気な職人がいる現場に隊長として派遣されたら最悪だ。

それとも、他の2級資格者が病気や私用で休んだ際の穴埋め要員として、アチコチ飛ばされるのか?

それはそれで、面倒だな…毎回荷物を持って移動するのもいい加減ウンザリだ。

長谷部のことだから、どうせロクでもない現場を回してきやがるだろう。

よし、合格の報告もしなきゃだし、ちと釘を刺しとくか。

グラスに半分ほど残ったビールを一気に空け、スマホの画面を開いた。


「あーもしもし長谷部さん?オレ2級受かりましたよ。んで、早速だけど来週からの現場ってどうなんの?」

「ホントに?!おめでとう味岡くん!いや〜良かった良かった。味岡くんなら絶対やってくれると信じてたよ」

「調子いいこと言ってんじゃねーよ。金髪はダメだとかヒゲは剃れだとか、オマケに問題集は最低5回は繰り返して解けだとか、散々プレッシャーかけてたクセに。ま、別にプレッシャーでもなかったけどさ」

「ごめんごめん。ホラ、万が一ってことがあるからね。もし不合格だったらベテラン押しのけて味岡くんに受験枠回した僕の立場もないし」

「まぁイイっすよ。それより現場はどうなんの?変な現場に回したらタダじゃおかないよ」

「グフフ…それがね、イイ現場があるんですよ。ツイてますねお兄さん」

「アンタがそう言ってマトモな現場だったことがない」

「いやいや旦那、今度の子は間違いない。浅草駅前の道路工事だよ。先月試掘調査が終わってちょうど来週から着工する新人ちゃんだ。しかも現場のすぐ近くに外国人に人気のゲストハウスがあって、パツキンボインちゃんやロシアンビューティーちゃんがバンバン通る。サイコーの眺めが楽しめる至福の現場ですよ♡」

「ナ、ナヌっ?!パツキンボインちゃんだとっ!!」

「ホラ旦那、興味あるでしょ?じゃ、決まりだ。はい1名様ごあんな〜〜い!張り切ってどうぞ!!」


なんだよ…
やれば出来るじゃないか長谷部のヤツ。

味岡はふと思いつき、先ほど電話を切り放り投げたスマホを再び手にした。

「せっかくのパツキンちゃんも会話がなければ楽しさ半減だ。オレ英語苦手だからちょっと予習しておこう」

そしてネットで無料の翻訳サイトを検索して、簡単な日常会話や誘導の時に声をかける言葉をせっせと英訳し、手帳に書き込んだ。

交通誘導警備業務2級の試験前とは雲泥の差だ。

「…しかしコレ学生の頃にやっときゃ、もう少しマシな人生歩めたかもな…やっぱしエロは人類最大のモチベーションだな」

などと考えながら、細かい文字で3ページほど手帳が埋まった頃、半分ほど残っていたウィスキーのボトルは空になって転がり、味岡のロレツは回らなくなっていた。

「ぷりぃ〜ず うぁっち よらぁ〜 すてっぷぅ〜…ってか?へ〜〜い!うぇるかむ ほ〜〜〜む!イヒヒ!」


ヤマトはいつのまにか夜の狩りにでかけ、ボロ屋の離れで怪しげな英語を放つアホエロオヤジがひとり


エロ会話…じゃなくて英会話の予習に夢中になった味岡を、お土産のチロルチョコを持ってやってきたみきさんが窓から覗き、ココロから憐憫の眼差しを味岡に向けていた。

第8話に続く…

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