味玉のシングルファーザー生活♬

ひとり親の子育て/テキトー料理レシピ/アホ小説/ボクシング&格闘技/ダイエット(減量)/指定難病と過去のうつ病…ほか・・ごゆるりと♬

連載アホ小説 第8話 『走レ!エロス』

ガードマン味玉のFunnyな1日♬

バックナンバー

第1話 『漢の闘い』

第2話 『闘いの後には』

第3話 『みっちゃんとマキさん』

第4話 『焦げとヤマトと満月と』

第5話 『あゝ愛しの権田原』

第6話 『無差別級負傷者搬送』

第7話 『浅草駅前留学』

第8話 『走レ!エロス』

 

 「しかし、こりゃサイ&コーだな」

 

オランダ人のプリプリおけつを見送りながら味岡は呟いた。

 

味岡玉夫(通称味玉)は、ガードマンである。

管制の長谷部の指示で、しばらく前からこの浅草の道路工事の現場に派遣された。

現場は隅田川のほとり、川に沿って這う裏路地で、浅草駅前を南北に貫く江戸通りから1本入った一方通行の狭い道路だ。

 

路地の両脇には古い酒屋や商店、老舗の麦とろ飯を食わせる店、小ぢんまりしたビジネスホテルが立ち並ぶ。

堤防があるため隅田川の水面は見えないが、建物の隙間から橋の欄干やスカイツリーがのぞく長閑な場所だ。

 

長谷部の言った通り、現場道路を南に50mほど行った先には、外国人に人気の小さなゲストハウスがあり、パツキンボインちゃんや小顔タイ人などがバンバン通る。

 

現場には、エレベーター付きの地下鉄の出口を新設するらしく、施工の邪魔になる既存のガス管や水道管を数メートル横に移設しなければならない。

ついでに、この一帯の古い水道管を耐震用のものに更新する。

菅のつなぎ目をジャバラ状のジョイントで接続し、多少の地震で管が動いても耐えられるようにするのだそうだ。

 

しかし、監督は言う

 

「まったくバカげとる。こんなことに予算を使っても、ここより上流の水道管がやられたら結局断水するだろうが。浄水場から全ての家庭までの水道管ぜーんぶやらなきゃ、ほとんど意味ないだろう」

 

サンタクロースみたいなヒゲを生やした、190cmはあろうかという大男だ。

顔は『くまモン』みたいに可愛いのだが、初対面だとかなりの威圧感を感じる。

道で会ったら目を合わせたくないタイプだ。

 

「へぇ…そうなんすね…でも、少しづつでもやっていかないと、いつまで経っても地震に弱い国のままですよね」

 

「ま、そらそうだ。それに俺たちゃこれで、おマンマ食ってんだから有難い話ではあるんだけどよ」

 

この現場監督は、口は悪いが、気さくでいい人だ。

移動販売の八百屋の軽トラが来ると、ブドウやアメリカンチェリーを買って、職人さんやガードマンに振舞ってくれる。

 

ユーモアもある。

 

着工初日の朝礼ではこうだ。

 

「…以上で工事概要の説明を終わる。んで最後にひとつみんなに質問なんだがな」

 

まん丸い目をひん剥いて、整列した各職方をギロンと眺め回し、再び続ける。

 

「見ての通りこの現場は道幅が狭い。朝礼もこんなに狭苦しく纏まらないと出来ない狭さだ。…で、ラジオ体操なんだけどな、どうする?やる?こん中で、どうしてもラジオ体操やりたい!ってヤツいる?」

 

シン…

 

皆どう答えて良いか分からず黙っている。

 

「あれ?誰もいないの?おかしいな…じゃ、体操じゃなくて社交ダンスだったらどうだ?」

 

シン…シン…

 

冗談なのか本気なのか図りかね皆キョトン顔だ。

 

しかし、味岡はひとり、笑いをこらえながら言った。

 

「あ、僕ブレイクダンスだったらやりたいかも」

 

「あーダメダメ、以前若い土工がクルクル回ってたら首をグキってやって救急車呼んだことがあんだよ。オマケに『ブレイクダンスやってました』って言ったら労災もおりなくてよ」

 

ナイス返しww

 

「あーそれからな。ここら辺は下町でお年寄りが多い。段差には充分気をつけてもらうようにな。足元がおぼつかないバァさんは要注意だ。ちゃんと手を引いてやるんだぞ。分かったか?ガードマン」

 

「ハイっ!分かりました!」

 

「じゃ、ハイヒール履いた若いOLさんが来たらどうする?」

 

「えーと…お姫様抱っこ?とか?」

 

バカもん!警察呼ばれるぞ。OLさんには手を触れちゃいかん!」

 

ハハハ!

 

ハイ!OLさんには手を触れちゃいけない件、了解!」

 

それから浅草での楽しい毎日が始まった。

これでもかっ!ってくらい肌を露出したフォーリンピーポーが闊歩する。

 

味岡は120%の笑顔で声をかけた。

 

「ぐっもーにーーーーーーん♬」

 

「Ha〜〜〜〜i ♡」

 

みんな手を振り笑顔で返してくれる。

日本人にはないノリだ。

 

地図やガイドブックを手にキョロキョロしている可愛子ちゃんがいたらボーナスタイムだ。

 

「めい あい へるぷ ゆ〜?」

 

「Oh!Thanks Were is the ASAKUSA station?」

 

「ぎんざらいん?おぁ あさくさらいん?」

 

「ASAKUSA Line」

 

「あい しぃ〜 ごーすとれいと あんど ざっと しぐなる たーん れふと あばうと… ふぃふてぃめーとる。ぜん ぜありず ざ ぽすとおふぃす。ゆーきゃん るっく すてっぷ ふぉー さぶうぇい」

 

「Gooooooood!thank you ♡」

 

「ゆ〜あ〜 うぇるかむ ぷり〜ず ご〜〜♬」

 

文法が合っているのか分からないが、適当に知ってる単語を並べても案外ちゃんと通じるもんだ。

 

すると同僚のガードマン、赤鹿(あかしか)が、目を丸くして近づいてきた。

東北訛りの独特のイントネーションで話しかけてくる。

 

「こらたまげたぁ…味岡くん、英語さ喋れるのけ?」

 

「いや〜、テキトーっすよ。この現場外人が多いって聞いてたんで中学の頃思い出してテキトーに。何しろパツキンちゃんのオンパレードすからね、こんなチャンス滅多にない」

 

「ふぅ〜ん、そうなんだぁ。でも、おらぁ外人はこりごりだぁ」

 

「え?赤鹿さん、外人となんかあったの?まさか付き合ってたとかじゃないよね?」

 

赤鹿は、もうすぐ50歳だと言うけれど、かなりの男前だ。

若い頃は相当モテただろう。

元々は鉄筋屋だったが、腰をいわして辞めたそうだ。

味岡が、ガードマンも立ちっぱなしだからキツイだろう?と言ったら、鉄筋屋に比べれば屁でもないと、それに勃ちっぱなしには慣れているとも言った。

 

「いんや、昔フィリピンパブにハマって毎日のように通ってたことがあんだぁ。金がねぇもんだからカードさ切ってよ。したらば、翌月に50万の請求書が来てよぉ」

 

うへぇ!50万!…ぱネェっすね」

 

「カァちゃんに『あんたぁ、コレどないすっぺ?払えるのけ?』って聞かれてな『ばっかやろう!払えるわけねぇっぺ!ふざけやがってカード会社の野郎、見てろビシッと言ってやっぺ』つって電話したんさぁすみませんっ!分割にしてくださいっ!』つってな!あっはっは!

 

あ、赤鹿さん…。

( ̄▽ ̄;)💧

 

「なぁんだ…でも、じゃ、やっぱ好きなんじゃん。外人ちゃん♡」

 

「いんや、おらぁ外人にゃ興味さね。じょす高生専門だ。しかもナマ足のみだぁ」

 

あ、赤鹿さん…。

( ̄▽ ̄;)💧

 

「わ、分かりました。…じゃ、JKが通ったら無線で知らせます」

 

「おお!よろしく頼っぺよ味岡くん」

 

しかし、ここは通学路ではない。

それからの数日間、待てど暮らせどJK は通らなかった。

 

何日目だったろうか。

やっとひとりのJKが通り、味岡は喜び勇んで無線を飛ばした。

 

「赤鹿さん!来ましたよ!間も無く角を曲がってそっちに行きます!」

 

ナヌ!とうとう来たか!よっしゃ!」

 

JKが角を曲がり味岡の視界から消えておよそ1分。

 

「赤鹿さん、どうでした?なかなか可愛子ちゃんだったでしょ?」

 

「うんにゃ、ダメだぁ味岡くん。アリャじょす中学生だ。おらぁ中学生は青くて食えね」

 

あ、赤鹿さん…。

( ̄▽ ̄;)💧

 

しかし、それからさらに数日後

一心不乱、真面目に働く味岡らに、イタズラ好きのJKの女神が微笑んだ。

 

「!?!!!!!」

 

(マ、マヂか!?)

 

「至急!至急!赤鹿さん!赤鹿さん!取れますか?!どうぞ!」

 

「味岡くん、味岡くん、こちら赤鹿。どした?」

 

「前方より女子高生の集団接近!数は…少なくとも30人はいます!おそらく修学旅行の自由行動だと思われます!どうぞ!」

 

「ナヌぅっっっ!!じょ、じょす高生が集団で自由恋愛の件?!…了解っ!!至急現場に向かう!マスターおあいそっ!『え?!お客さんまだラーメン作ってる最中…』」

 

ブツっ…

 

無線が切れた。

 

あたたたた…(>。<)

そうか、赤鹿さん昼休憩中だったか…。

間に合うかな?

 

30秒ほどのち。

交差点の信号待ちで地団駄を踏んでいる赤鹿が、信号が変わるや否や脱兎のごとく走り出し、突進してくる姿が見えた。

 

「ナマ足ぃぃーーーーーーーーーーーっ!!!!」

 

鬼の形相で叫びながら疾走してくる。

 

アレがヘルニア持ちの50男の走りか?

自転車で警ら中のデコ助が、赤鹿をギロリと睨む。

母親が、物珍しそうに赤鹿を指差す子供の目を手で覆った。

 

(頑張れ!赤鹿さん!)

 

しかし…

 

気まぐれな天使は、いつだって意地悪だ。

あとひとつ信号を渡れば現場到着というところで、また青信号が点滅を始めた。

構わず突っ切ろうとした赤鹿に、先ほどの警官が警笛をけたたましく鳴らす。

 

(なんてモッてない男なんだ…)

 

現場では、味岡の目の前を、今まさにJKの集団が「きゃっきゃ」言いながら通り過ぎようとしている。

 

我こそは!

と短さを競うようなスカート

初夏の日差しにうっすらとかいた汗でキラキラと輝く素肌

爽やかな柑橘系の香りが、ふんわりと味岡の鼻をくすぐった。

 

(あ…あ…行ってしまう…どうしよう…あ!そうだ!)

 

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そして、信号が変わり、再びマッハで駆けつけた赤鹿が、両手を膝につき激しく肩を上下させながら言った。

 

「ハァ!ハァ!ハァ!…ナ、ナマ足は?!…ゼイ!ゼイ!」

 

「赤鹿さん…残念ですが…」

 

「ジーザス…」

 

赤鹿はそのままその場に崩れ落ちた。

この倒れ方はヤバイやつだ。

もう立てないだろう。

 

「でも赤鹿さん、オレ咄嗟にスマホで動画撮っといたんすよ。犯罪だけど」

 

「と、友よっ!」

 

バネ仕掛けの人形のように跳ね起きた赤鹿が、背骨が軋むほど味岡を抱きしめた。

 

「あ、赤鹿さん!シ、シヌ!」

 

元鉄筋屋の力は侮れない。

 

 

そうして、その日の仕事が終わり、ふたりしていつもの焼き鳥屋に来た。

注文を受けてから食材を買い出しに行く、ふざけたオヤジがやっている小汚い店だ。

他の客が入っているのを見たことがない。

 

今日は早く帰りたかったのだが、仕方なくこうなった。

と言うのも…

 

「味岡くん、今日1日そのスマホ貸してくんねぇか?明日必ず返すからさぁ」

 

「は?何言っちゃんてんだろうね、このアホエロ変態オヤジは…そんなのフツーに無理っしょ。動画ならメールで送りますよ」

 

「うんにゃ、おらぁガラケーだから動画はみれね。しかもメールやったことね」

 

「でも、携帯貸したら俺が困るし…あ、じゃあ久々に飲みにでも行きますか?JKツマミにして飲むのも悪くないかも」

 

「おお!ありがとう味岡くん!もちろんおらが奢るっぺ!」

 

 

もう店に入って軽く3時間は過ぎていた。

赤鹿は、2時間ほど前からネギマを手にしたまま、延々スマホの画面に見入っている。

ブツブツ何かを呟いてニヤニヤしては、時折顔をしかめたりしている。

 

会話も出来ず、味岡はひや酒のピッチが上がり、手元が怪しくなってきた。

視界もぶれ、赤鹿が3人くらいに見える。

 

不気味だ…

 

例のごとく他に客はおらず、オヤジはカウンターの中で、ふんぞり返って高いびきだ。

 

黒板にミミズがのたくったような字で書かれた、本日のおすすめ『鯖の塩焼き』は、客がひとりもいないのにオヤジは『売り切れた』と言い放った。

 

味岡は思う。

 

アレはホントにそうなんだな…

昔の人はよく言ったものだ。

 

『類をもって集まる』

 

 

JKの嬌声が繰り返し繰り返し流れる他は

静まり返った焼き鳥屋

 

アホウが集う

 

夜は更ける

 

そして明日が忍び寄る

 

第9話に続く…

 

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