前回までのあらすじ
およそ3年ぶりにJK好きの赤鹿と同じ現場で働くことになったガードマンの味岡玉夫(通称味玉)。
マンモス女子校にほど近いこの現場で赤鹿と働くのは大いに不安だったのだが、赤鹿はこの3年で変わっていた。ただのJK好きから、JKのスカートを風から守ることを使命とする変態ガードマンに変態していたのだ。
味玉と赤鹿のFunnyな毎日が再び始まる。
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連載アホ小説
ガードマン味玉のFunnyな毎日♬・Season2
第2話 プレミアムな彼女
午前の車両は11時を回るころ無事に終わった。ただし赤鹿は、午前の休憩に入ったまま、なかなか戻って来ず、お陰で味玉はろくに休憩も取れなかった。
コンクリートガラを積んだダンプが、処理場まで行って荷を降ろし、再び帰ってくるまでおよそ1時間〜1時間半ほどだ。道路状況や処理場の混雑具合によって、ダンプの戻り時間は変わるので、本来なら30分弱の休憩を交代で回し、次の搬入に備える。
しかし、赤鹿は1時間経っても戻って来ない。味玉は9月も半ばとはいえ、未だ残暑の厳しい日陰のない路上に立ち、背中を流れる汗にイライラしながら赤鹿の戻りを待っていたのだ。
おそらく、通学するJKがいないため、やる気が出ないのだろう。なにしろ赤鹿の本来業務は車両誘導ではなく、JKのスカートを風から守ることなのだ。
ようやく赤鹿が戻ってきた時、さすがの味玉も『どこに行って何してたんだよ。この変態エロおやじっ!』と詰め寄ったが、赤鹿は物ともせず『向かいの公園でスクワットをやっていた』とシレッとのたまうのだった。
しかし、さすがに悪いと思ったのだろうか『午後のダンプを搬出したら自分がゲートに立つので、味玉くんは、ゆっくり休憩でもしていてくれ』とも言った。
まぁ、本当の狙いは、下校する女子高生だろうから釈然としなかったが、せっかくのご厚意。お言葉に甘えて、そうさせてもらおう。そしてふたりは、少し早めの昼休憩を取ることにする。
「赤鹿さん、少し早いけどメシにしよう。どうする?弁当かなんか持ってきた?」
「うんにゃ持ってきでね。どっかに美味い店ないのが?」
「あーじゃぁ俺がいつも行くラーメン屋でも行こうか。結構美味いんだよ」
「お!いいねぇ~、ラーメン屋ならちょうどいいべ」
何がちょうどいいのかよく分からなかったが、赤鹿の言うことをイチイチ気にしていると面倒くさいので、スルーしてラーメン屋に向かった。
古い民家の1階を店舗にしているカウンターだけのラーメン屋の暖簾をくぐる。味はいいのだが、住宅街に建つ立地もあってか、いつも客はまばらだ。今日は、昼時には少し早いので尚更である。
「マスター、オレいつものネギ味噌チャーシューね。麺固め、味濃いめ、玉ねぎ増し増しで!」
味玉は、エアコンの風の吹き出し口の真下に陣取るとサッサと注文し、カウンターの箇所箇所に備え付けてあるピッチャーのひとつから、グラスに並々と水を注ぐと一気に飲み干した。そしてすぐ2杯目を注ぎ、今度はゆっくり口に含む。
「んならばオラァもおんなじの。んでトッピングに味玉20個で!」
「ブっ!」
味玉は口に含んだ水を思わず吹き出す。
「あんた今なんつった?味玉20個って聞こえたんだけど?オレの聞き間違いだよね」
怪訝そうな顔をした寡黙なマスターが、ふたりのやりとりを盗み聞く。
「うんにゃ。間違いなんかじゃね。さっきの公園スクワットでイヤってほど大腿筋イヂメ抜いたからタンパク質補給して筋肉の超回復だべ。トレーニング後30分以内のタンパク質摂取はアスリートの常識だっぺ?」
( ̄▽ ̄;)💧
あーはいはい。
もうどうでもいいや。
やがて、チラホラやってきた客が、カウンター越しに差し出された赤鹿注文のラーメンを見て『ギョっ』としている。他人を装いたいところだが、お揃いの制服がそうはさせない。
黙々と…いや、ズルズルと派手な音をたて、ラーメンをすすった。
午後2時
最後のダンプを搬出し、本日の業務が終了した。
今日は燃料車も来ないから、可能性があるとすれば、注文していた土のう袋やらガムテープやらを金物屋が届けにくるくらいだ。
手渡しで受け取れるので、わざわざ現場内に2t車を搬入する必要もない。本来、路上での荷降ろしはルール違反なのだが、国道を走る後続車を止め、歩行者が行き交う歩道をバック誘導で横切らせるより圧倒的に危険は少ない。交通規制課のパトカーも、自転車で走る警らの巡査も大目に見てくれるだろう。
人ふたりが、すれ違うことができるくらいの隙間を残してゲートを閉め、赤鹿に確認する。
「じゃ、悪いけどオレ休憩入るわ。赤鹿さんゲート見ててくれるんだよね」
「ああ任せとけっ!ゆっくり休んでけろっ!」
午前とは打って変わってハツラツとしている。
「…まぁ、ホントはゲートに立ってる必要もないんだけど、赤鹿さん初日だし、監督にアピールしといた方がいいでしょ?『ボク仕事してますよ!』的な」
「アピールでもバザールでもねぇ。オラァやるでござーる!」
そう言って赤鹿は悠然とゲートに立った。
ガードマンボックスでエコーを『ぷかぷか』させながら、しかし味玉はどうにも落ち着かない。
(ん~…もうすぐ下校時間だよなぁ。朝の様子だと大丈夫とは思うんだけど、赤鹿のことだ。どこからともなくトラブルと喜悲劇を呼び寄せる…ホントに大丈夫か?)
やがて、ケツの座りが悪すぎて我慢できなくなった味玉は、そっとゲートに近づき、仮設トイレの陰から赤鹿の様子を伺う。
学年ごとに下校時間が違うのだろう。部活動などがあるJKもいるはずだから、朝に比べると意外なほどJK通りはまばらだ。
しかし、それでも絶え間なくやってくるJKのスカートを風から守り続けるのは至難の業であろう。いくら鍛えているといっても、鉄筋屋時代に腰をイワした50男だ。スタミナも心配である。
しかし豈図らんや。軽快なフットワークとローブロー気味の左右のフックで、赤鹿は次々とJKスカートセーフティングをこなしていく。
(ほう!なかなかやるもんだな。)
しかし味玉は、やがておかしなことに気づいた。赤鹿は時々、JKが近づいても、ぼうっと呆けていることがある。焦点の合わない腐ったサバのような目で虚空をぼんやり見つめたまま突っ立っているのだ。
(あ!あの野郎!さてはJKを選り好みしてやがるな!ウヌヌ…許せん!)
味玉は、そう判断すると、ツカツカとゲートに歩み寄り赤鹿の右肩を「グイっ!」っと引っ張り、場内に引きずり込んだ。
「おい!この変態エロおやじっ!テメェJKを選り好みしてやがるな。見損なったぜ赤鹿さんよ。JKスカートセーフティングは、ガードマンの社会的任務じゃなかったのかよ!俺はあんたはもっと仕事に誇りを持った人間だと思ってたよ。え?!どうなんだ?!」
しかし、赤鹿は『ヤレヤレ』といった表情で応える。
「ちがうだぁよ、味玉ぐん。オラァが見逃したじょす高生、ありゃぁ『ぶるまぁ』だ」
「え?ブルマ?マジすかポリス?…そんなことが…」
「んだ、オラにぁ分かる」
「で、でもどうやって…」
「ん~…ま、初心者はアレだな『ぼでーらいん』だな。慣れれば足から上半身・首周りの肉付きからして明らかに不自然なウエストの膨らみが分かるようになる」
「マ、マジで?」
「んだ。でもオラァ位の『らべる』になるとそこで判断するわけでねぇ」
「す、するとドコで?」
「表情だ」
「ひょう…じょう…」
「んだ。『あぁ…ワタシ今日『ぶるまぁ』履いてない…駅の階段や、強い風が吹いたら見られちゃうかも?キャっ💕(//∇//)』みたいな乙女の恥じらいと、ほんの少しの期待が入り混じった複雑でデリケートな表情だ。ほんのり色づいた頰、あたりを伺う不安げな視線、一見しただけでは分からない緊張する眉間のシワ…その他諸々だ」
「ス、スゲェ!あんたプロだな!ガードマンの中のガードマンだ!」
「ふっふっふ…よせよ味玉ぐん、照れるじゃねぇか」
そう言って再びゲートに立つ赤鹿の背中に、味玉は『漢(オトコ)』という文字が浮かんで見えた。
赤鹿のJKスカートセーフティングが再開され、見つめる味玉の胸に熱くこみ上げる何かが生まれかけた時…
その人は現れた
スラリと伸びた脚
ひざ下の脛が長い
華奢だが、そのゴム毬が弾むような軽い足取りはバネの強さを感じさせる。
透き通るような色白の肌に、明るさを抑えたアッシュの髪は肩にかからない。
歩くたび、その艶やかな髪はしなやかに揺れる。
背筋がピンと伸びた、やや長身のそのプレミアムなJKは明らかに他のJKとは違う。
(こんな娘いたっけか?オレがこんな娘を見逃すはずがない)
不思議に思う味玉を余所に、赤鹿はひときわ大きく、そしてゆっくりと息を吸い込み、姿勢を正した。
空手の息吹だ。
赤鹿の丹田に気が集まるのを感じた。
ヒリヒリとした緊迫感が辺りに弥漫する。
『 ス… ス… 』と歩みを進めるプレミアムJKの動きは、なぜかスローモーションに映る。
あと10m…5m…3m…
ざわつき始めた午後の海風が、最初は柔らかく、そして急激に磁力を孕み、ゲートに向かって突進してきた。
『ずちゃっ!』
赤鹿の右足がアスファルトを焦がす。
「!?」
しかし、赤鹿が踏み込んだその先には、プレミアムJKの姿はなく、くるりと反転した状態で赤鹿の左斜め前、制空圏外で赤鹿に対峙していた。
「あにすんだよ。この変態エロおやじ。取り敢えず警察に通報だな」
クールで少しハスキーな声色は、それでもよく通る不思議な音色だ。
「え?ちょ、ま、おらぁただ…その…風を守る…スカートから…セーフティングで…」
「は?アンタ変態なだけじゃなくて、ネジも何本か緩んでるね。警察の他に救急車も呼んでやろうか?」
慌てて味玉が駆け寄り、割って入った。
「ちょ、タンマ、タンマ!確かにこのオッサンは変態でネジも緩んでんだけど、そうじゃないんだ!これには深い訳が…実は斯く斯く然々…」
工事現場で警察沙汰はよろしくない。必死で説明する。
「ふうん、そうなんだ…でも、アンタにそこまでの力があるかしら?」
にわかには信じてもらえないと思いつつ説明したのだが、あっさりと受け入れてくれた様子。
「そうね、じゃアタシについて来な」
首を傾げ、暫しの黙考の後、プレミアムな彼女はそう言うと、拍子抜けする味玉らを残し、さっさと現場の裏手、住宅街に挟まれた入り組んで狭い裏路地に向かう。
慌てて彼女を追っていったその先に、にわかには信じられない光景が広がっていた。味玉と赤鹿の声が揃う。
「なんじゃごらぁ!」
「なんだべごらぁ!」
そこには、餌に群がる蟻のような無数のJK群が、キャッキャうふふと嬌声をあげながらひしめきあっていた。
「朝は正門から学校に入んなきゃだけど、裏門からこっち抜けた方が駅への近道なんだ。帰りは大体みんなこっち通ってる。アタシは今日、知り合いのジムに出稽古に行く予定があったから大通りを通ったんだけどね」
(なるほど。そうだったのか…だからゲート前は、下校時間のJKがそれほど多くはなかったんだな)
納得する味玉らにプレJKは続ける。
「さぁオッサン。そこまで言うなら見せてごらんなさいよ、アンタの実力を」
腕を組み、鋭い眼光で赤鹿を睨んだプレJKが言葉を放つ。
「赤鹿さん、無理だよ!こんだけの数のJK。それに、ここまで混み合っていたら自慢のフットワークも使えない。素直に負けを認めよう」
しかし赤鹿は、ゆっくりと味玉の肩に両の手を乗せ、こうつぶやいた。
「味玉ぐん…オラァ行かなくちゃなんね。この場所には日本一…いや世界一の数のJKがオラァを待っていてくれるんだ。だから…行かなくちゃ」
「赤鹿さん!」
「ありがとう」
そう言って、赤鹿からJKの群を塞ぐように立っていた味玉を、その肩に乗せた両手でゆっくりと横にどけて、静かに踏み出した。
「赤鹿さん!」
味玉の頬を涙が伝う。
(こうなったら最後まで見届けよう。これがガードマンの真の生き様だ。そしてオレは、この現場の警備隊長なんだから…)
右脳の隅っこで『いや、それガードマンの仕事ちゃうから』と呟く声は限りなく小さく聴こえない。
ゆらり ゆらり
滑るようなスッテプを踏み、JKの群れの中に入っていく赤鹿。やがて、路地のほぼ中央までたどり着くと立ち止まり
静かに呼吸を整えた
風が止まった
まるで、闘いのゴングが鳴る前の一瞬の静寂のように。
第3話↓↓↓に続く…
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