味玉のシングルファーザー生活♬

ひとり親の子育て/テキトー料理レシピ/アホ小説/ボクシング&格闘技/ダイエット(減量)/指定難病と過去のうつ病…ほか・・ごゆるりと♬

『HAPPY LIFE』 1-2

長編小説

HAPPY LIFE

第1章  闘いの鐘は鳴る

1-2

 

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動物公園は、平日の昼間にしては賑わっていた。天気が良いのも手伝っているのだろう。ベビーカーを押したママさんらが沢山いる。走り回る子供たちの顔も興奮気味だ。

 

 

この公園は、無料で入場できる割には動物も沢山いて充実している。ペンギンやワラビー、レッサーパンダやオオアリクイもいる。

 

 

春になれば、ソメイヨシノが、なでしこ色に空を埋め尽くす。岡山と土筆のお気に入りスポットの1つである。

 

 

初めて訪れたのは、土筆がまだ幼い頃の夏…確か2歳くらいだったろうか。噴水の水を浴び、びしょ濡れになってはしゃぐ土筆の顔をよく覚えている。

 

 

 

 

仕事が早く終わって、土筆と過ごすポカポカ陽気の昼下がり

無料の動物園、それに人妻付き…

 

最高だな。

 

 

 

 

「あ、土筆ちゃん見てごらん。ハトさんがいるよ。またエサあげてみようか?」

 

 

「ダメだよ。この前ママが、ハトにエサあげちゃいけません、て言ってたもん」

 

 

「もう〜土筆ちゃんのイケズぅ〜。そんなんじゃ男の子にモテないぞ。若いうちは、もっとこう…ハメを外すもんなんだ。それに、エサやり面白いじゃん、アホみたいにハトさんが集まってきてさ。きっと、お腹空いてるんだよ。可哀想だよ」

 

 

「う〜ん…そうだね。じゃ、ちょっとだけだよ」

 

 

「よし、ママには内緒ね!約束だよ」

 

 

 

コンビニで食パンを買ってきて、ちぎってバラ撒いた。本当にアホみたいに集まってくる。

 

 

「わぁ!土筆ちゃんも!土筆ちゃんもやる!」

 

 

「あはは…ほら、あそこに仲間に取られてなかなか食べられない不器用な奴がいるから、アイツめがけて投げてごらん。ハトの格差社会を是正するんだ」

 

 

「かくしゃサカイ?」

 

 

「それは引っ越し屋さん…そうじゃなくて、カ・ク・サ・シャ・カ・イ。要するに、弱い者イジメのことだよ。いけないことだろう?弱い者イジメは」

 

 

「うん!土筆ちゃん弱い者イジメキライ!瑛太くんキライ!」

 

 

誰だっけ?エイタくんて…

 

 

「そうだ、エライね。エイタくんは置いといたとしても、今この国では、国家ぐるみで弱い者イジメが行われているんだ…残念だけどね。でも大丈夫、こうして目の前のハトさんを救うことが解決に繋がるんだ。キヨシさんも言ってただろう?小さなことからコツコツと!てね」

 

 

「分かった。土筆ちゃんコツコツする!でも、キヨシくんなんて保育園にいないよ」

 

 

「ふふ、いい子だね。ほら、エサあげてみな」

 

 

「うん、それっ!…あれ?取られちゃった。コラ、邪魔するな!えいっ!」

 

 

 

夢中になってる。

可愛いなぁ…

 

 

「さ、今度はウサギさん見に行こうか」

 

 

「うん、ウサギさん大好き!」

 

 

 

 

ひと通り動物たちを見学し、公園を後にした。昼寝をしていてなかなか巣から出てこないレッサーパンダの檻の前で粘る土筆をなだめかすのに苦労した。

 

 

「また来ればいいじゃないか…動物園は逃げないんだし」

 

 

 

家の近くのイオンで買い物をし帰宅。

 

 

さぁ!洗濯物取り込んで、ご飯作って食べさせて、洗い物してお風呂入れて…絵本を読んで9時には寝かせなきゃ。

 

 

 

妻の康子は、大手の翻訳会社に勤めていて帰宅は遅い。ごく稀に土筆が起きている時間に帰って来ることもあるが、10時11時は当たり前、日付をまたぐこともしばしばある。

 

 

筑波大学在学中、カナダに留学していた経験を活かし、土筆が1歳になる頃から勤めている。最初は翻訳のアルバイトだったが、現在は正社員に登用されプロジェクトマネジャーをしている。

 

 

岡山は、前職のホテルを退職してから2年以上働いていなかったので、現在では家事のほとんどを担当する。休日には掃除機もかけ風呂掃除もする。生活費を康子に負担してもらっているヒモみたいな立場なのだから仕方がない。

 

 

ガードマンのアルバイトを始めてからは、土筆を寝かしつける時に一緒に寝てしまう。朝は早く、2人が起きる前に家を出る。そのため、すれ違いの康子とのコミュニケーションは、もっぱら冷蔵庫に貼り付けている伝言板で行なっている。

 

 

でも、それくらいがちょうどいいのだと岡山は思う。あまり多くの時間顔をつき合わせていると、お互いストレスが溜まってくるのだ。

 

 

例えば…

 

 

 

「ちょっとアナタ…この包装用のビニールとラップは燃えないゴミでしょ。ちゃんと分別してよ。それにペットボトルのフタ、こっちのボックスに入れてって何度も言ってるでしょ」

 

 

「あ、ごめんなさい…でも、東京都はラップや発泡スチロールは可燃ゴミでいいんだよ。生ゴミは燃えにくいから、こういう樹脂製品が入っている方がよく燃えるんだって。『さんまのホンマでっか?スペシャル』でナントカ教授ってのが言ってたよ。それに、ペットボトルのフタ、めっちゃ溜まってるけど結婚してから1度も持っていったことないじゃん、いい加減邪魔くさくない?」

 

 

しかし、康子はそれがどうしたとばかりに言う。

 

 

「屁理屈言わないの。ゴミの分別は私の信条なの。何人たりとも信条を侵してはならないって憲法に規定されているのよ。中学で習わなかった?それと、ペットボトルのフタはワクチンの精製費用に充てられるんだからとっても大事なの。邪魔ならアナタ持って行ってよ。暇なんだから」

 

 

筑波出でインテリなのだ。

言うことが理屈っぽい。

 

 

「はぁ…じゃぁそうします…」

 

 

何しろヒモだから口答えはできない。

 

 

「分かればいいのよ」

 

 

康子は、やり込めて満足そうだ。

鼻の穴が広がっている。

 

 

 

こんなこともあった。

シンクに置きっ放しにしていた鍋を目ざとく見つけた康子が言う。

 

 

「ちょっとアナタ…このお鍋でラーメン作ったでしょ、しかも玉子入れて…玉子がこびりついちゃってるじゃない。このお鍋は、お湯沸かす専用だからラーメンなんて作んないでよ。ましてや玉子なんか以ての外よ」

 

 

「え?お湯専用?…鍋の用途なんて取り決めた事あったっけ?…それに、いつも思ってたけどお湯ならヤカンか電気ケトルでも買った方が良くない?」

 

 

「ヤカンなんて買ったら邪魔でしょうがないでしょ。お鍋だったら大きい方から順番に重ねておけばコンパクトだし、いざという時は味噌汁作れるし一石二鳥でしょ」

 

 

「あのぉ…なぜラーメンがダメで味噌汁なら良いのでしょうか?」

 

 

それに、いざって時って何だ?

いざ味噌汁!ってか?

 

 

「もう!男のくせにイチイチ細かいわね!そんなんじゃ女にモテないわよ!」

 

 

知らなかった…

今でも女にモテて良かったのか…

 

 

「はぁ…分かりました。以後気をつけます」

 

 

 

万事が、こんな調子だ。

しかし、こうして尻に敷かれるのも満更でもない。今まで気づかなかったが、どうやら軽度のM体質だったらしい。

 

 

・・

 

 

土筆の髪をドライヤーで乾かし、歯磨きをしてあげているとあっと言う間に9時になる。

 

 

 

「さ、土筆ちゃん。そろそろ寝んねのお部屋行って、絵本読んで寝ようか」

 

 

「うん。絵本は2冊まで?」

 

 

「そう。あまり沢山の情報を収集すると脳が混乱するからね。土筆ちゃんは5歳だから2冊くらいがちょうどいいんだよ。ほら、お薬も子どもは沢山飲んじゃダメでしょ?それと一緒。『過ぎたるは及ばざるが如し』だよ」

 

 

「ふ〜ん…分かった。『スギちゃんは、おばさんがゴト師』だね!」

 

 

ん?…ゴト師?…

 

 

 

・・

 

 

 

…今何時だ?

 

 

スマホをまさぐって確認すると深夜の2時だった。寝るのが早いせいか、いつもこのくらいの時間に眼が覚める。最初こそ2度寝しようとしたが、今では無駄な努力だと諦めた。それに、今日はやる事があるのだ。

 

 

康子を起こさないように、ソロソロとベッドを抜け出し寝室のドアを閉める。キッチンでお湯を沸かしコーヒーの準備をする。もちろん『お湯沸かし専用鍋』を使って。何しろご主人様の言いつけは絶対なのだ。

 

 

パソコンの電源を立ち上げ、作業に入った。

 

 

 

・・

 

 

「あ、もうこんな時間か」

 

 

ふと気づくと出勤時間だ。今日からまたいつものマンション建築の現場に戻る。7時に出勤して、ゲートの鍵を開けなければならない。駅から離れた現場に、始発のバスで向かうのだ。

 

 

 

バス停の列には、職長の中山師匠が並んでいた。気風が良い親分肌の中山師匠は、岡山にガードマンのイロハを教えてくれた。

 

 

「おはようございます師匠!」

 

 

「おう、岡山…昨日はどうだったよ」

 

 

「ふっふっふ…めちゃめちゃラッキーでしたよ。やっぱり日頃の行いがいいんだなぁ」

 

 

 

昨日の自慢話をしているうちに到着したバスに乗り込んだ。始発の割に比較的混んでいる。座席は、ほぼ埋まり、つり革に掴まる乗客もチラホラいる。それぞれの風体とバスの経路に所在する施設から考えるに、おそらく、配送センターの作業員、病院の職員や看護師、マンションの管理人、ホテルの朝食係り…あたりだろう。女子高生は部活の朝練だろうか。

 

 

20分ほどバスに揺られ、目指すバス停に着いた。ヒンヤリと静まり返った住宅街を歩き、そこから、さらに10分ほどかかる現場を目指す。

 

 

「師匠…さっきの女子高生めちゃくちゃ可愛くなかったですか?スカートもこーんな短くて」

 

 

「何っ?女子高生だと?…岡山、なんで俺にすぐ報告しねぇンだよ」

 

 

「なんでって…だって師匠、イビキかいて寝てたじゃないですか?」

 

 

「馬鹿野郎!睡眠と女子高生、どっちが大切だと思ってンだよチクショウめ…あ、ところでアノ件はどうなった」

 

 

「高額医療費ですよね。今朝ちゃんと調べてきましたよ。で、やっぱり師匠は後期高齢者だから4万4千円ちょっとで済むみたいですね」

 

 

「本当かよ。そりゃ助かるな」

 

 

「ただし、入院期間が月を跨ぐと倍の8万8千円になっちゃいますよ」

 

 

「分かってらァ、月初入院の月末退院だろ」

 

 

「そうです。それと休業補償給付の方はダメでしたね。年金との併給は認められてないみたいです」

 

 

「そうか。ま、しゃぁねぇわな」

 

 

「それと、これ…申請書もダウンロードしてきましたんで使ってください。間違えてもいいように2部づつ用意しときました」

 

 

「何から何まで悪ぃな…しかし本当にいいのかね?他人様に入院費用出して頂くなんてよ。テメェのことはテメェでやんねぇと、どうもケツの座りが悪ぃんだよ」

 

 

「何言ってんですか師匠。そういう考えは、特に高齢者に多いんですけどね。これは、師匠がコツコツ支払ってきた健康保険料から支払われるんです。自分のお金なんですよ」

 

 

「まぁ、そうは言ってもなぁ」

 

 

「こういう時のための保険なんですから使わなくてどうするんですか。生命保険に加入して死亡しても保険金受け取らない遺族なんていますか?」

 

 

「確かにそんな馬鹿いねぇわな」

 

 

「生活保護とかもそうですね。不正受給は言語道断ですけど、正当な理由があれば何ら恥じることなんてないんですよ。基本的人権は憲法で規定されていますからね。人間は、誰でも健康で文化的で幸せな生活を追求する権利があるんです」

 

 

「へぇ!憲法ってのは至れり尽くせりだな」

 

 

「そうです。その上、鍋の用途まで限定できる権利も持っています」

 

 

「え?憲法には、鍋の使い方まで規定してあんのか?随分と生活に密着してるな…そう言えば『生活の党』ってのがあったな…奴らの仕業か?」

 

 

「違います…けど…まぁ、大まかに言えばそういうことです。とにかくこれは師匠の権利なんですから堂々と使ってください」

 

 

「ああ、そうさせてもらうよ。しかし、岡山には世話になりっぱなしだ…なんか礼をしねぇとな」

 

 

「何言ってんですか。僕はただ自分が知ってることをちょこっと教えただけですよ。師匠だって僕に仕事のイロハを教えてくれたじゃないですか。当たり前のことですよ」

 

 

「いや、しかしそれじゃ俺の気がすまねぇ。せめて1杯奢らせてくれよ。なんか食いたいもんあるか?なんでも言ってくれ」

 

 

「そうですか?じゃお言葉に甘えて…ん〜そうだなぁ…あ、銀座でお姉さんたちとパーーー!っとやりたいですね。そのあとは…吉原かな」

 

 

「馬鹿野郎!調子に乗ンじゃねぇ、そんな金あったら入院先延ばしになんかしねぇよ。新橋のガード下で決まりだな」

 

 

「えーーー!ガード下?いつものところじゃないですか…ま、いいけど」

 

 

 

そうこうしているうち、現場が見えてきた。

今日も仕事が始まる。

 

 

 

 

 

 

1-3へ続く

 

 

 

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