LOVE LETTER
朝ランを終え、シャワーを浴び、お弁当づくり。
朝食と出勤の準備を済ませましたが、家を出るには、まだ少し早いのです。
ベランダに出て、煙草に火をつけました。(はい。笑ってやってください。失敗しました…禁煙)
向かいのマンションから、出勤する夫と ゴミ出しがてら それを見送る妻が現れます。
40代後半…
いや、50代かもしれません。
3階のベランダからは、薄くなった夫の頭頂部が良く見えます。
夫は小柄で、ややポッチャリ体型
黒ぶちの眼鏡をかけています。
妻は…
まぁ、どこにでもいるような普通のベテラン夫婦です。
さて
今日は、どんなパターンを見せてくれるのでしょう。
集積所にゴミを置いた夫婦は、ひと言ふた言、短い会話を交わしお互い手を振って別れます。
歩き出す夫の背中をじっと見送る妻は、しかし、その場を動きません。
20mほど進んだところで夫が振り返ると、妻が手を振り、夫もそれに応えます。
それを3度ほど繰り返した後、夫が角を曲がり姿が見えなくなりました。
妻は、まだその場を離れません。
と、曲がり角の先から、ヒョッコリ顔を覗かせる夫。
手を振る妻
応える夫
それを、2度ほど繰り返し、ようやく駅に向かったかと思われた夫は、しばらくの間を置いて、おどけた調子の時間差ヒョッコリ。
妻も心得ているようで「待ってました!」とばかりに大きく手を振り、ようやく今日の儀式が終わりました。
これまでも、度々見かけたこの夫婦。
このほかに
- 階段の踊り場から投げキッスパターン
- 途中まで行った夫が駆け戻りHugパターン
などがあります。
新婚ホヤホヤならいさ知らず(いや、熟年結婚した新婚さんかもしれませんが…)長く連れ添ってなお、惜しみない愛情表現をし合える関係に毎回ホッコリさせられます。
と同時に、このようなおしどり夫婦を見ると、ボクは、むしろ畏敬の念すら覚えます。(なにしろエックス2の欠陥人間ですから〜♬)
学生の頃から交際し、そのまま結婚、その後も仲睦まじい夫婦などには、特にその思いが強くなります。
そして、この手の話を見聞きすると、20年ほど前に聞いた、同期入社の友人の言葉を思い出します。
絶対的ペア
大学時代、スキー場の売店で冬季限定のアルバイトを始めた彼。
慣れない仕事でミスを連発する新人くんを、こっぴどく説教し続けたのが、いま彼の隣に笑顔で立つウェディングドレス姿の彼女です。
アルバイトがきっかけで始まった2人
なんと彼は、女性と付き合うのは初めてだったそうです。
そんな2人が、10年越しの交際を経てゴールインした披露宴での新郎挨拶の言葉でした。
中学生の頃イジメにあっていた彼は、修学旅行の班分けなどで友人同士ペアを組むよう言われると非常に強い不安と恐怖心を感じていたそうです。
体育の授業で運動会のフォークダンスを練習する時などは、まるで拷問のようだったと言います。
高校に進学し、イジメがなくなってからも、その思いは消えることがなく『誰かとペアを組みなさい』と言われると
果たして、上手くペア相手が見つかるだろうか?
もし、誰もペアを組んでくれなかったら…
という不安でいっぱいだったとのこと。
そんな彼が言います。
けれど今日
こうして皆さんの前で、隣にいる彼女と正式にペアになることができました。
今はもう、これっぽっちの不安もありません。
いつどんな時も
ペアを組みなさいと言われたら
迷わず彼女とペアを組みます。
世界中どこにいたって
必ず彼女を探し出してペアを組みます。
こんなに幸せなことはありません。
彼らはその後、2人のお子さんに恵まれ、幸せな家庭を築きました。
ボクは7年前に退職し、前職の知人とは連絡が途絶えてしまったので、直接本人からは聞いてはいませんが、今でも変わらず幸せにやっているでしょう。
なんともはや…
素晴らしい夫婦像じゃないですか。
本当に羨ましい限りです。
LOVE LETTER
さて
彼のように『たった1人の女性を生涯愛し続けるであろう至極真っ当な男』を見ると、未熟で欠陥だらけの自分がつくづく情けなく思えるばかりか
もしかしたら、ボクは
人間のような姿をしているけれど、本当は全く違う別の種類の生き物なのではないだろうか?(玉子の一種だったりして)
とまで思ったりもするのですが…
実は、こんなボクでも
ずっと想っている女性が1人だけいます。
大学に入学して間もない頃
初めて彼女を目にしたのは、ある日の体育の授業でした。
よほど気怠かったのでしょう。
こんなに不機嫌な顔を平気で人前で見せる女性が、この世の中にいるものなのか?
と思うほど、微塵もやる気の感じられない様子で準備体操をする彼女の眉間には、遠目から見てもハッキリ分かるシワが数本、怒気すらはらんで刻まれています。
一目惚れでした。←趣味が変なのです。
それからというもの
気がつけば、キャンパスや講堂で無意識に彼女を探している自分がいます。
ある朝の通学電車
これまた不機嫌そうに座席に座る彼女を見つけました。
下りの横須賀線は乗客もまばら
自然と足が動き、彼女に前に立ちました。
後にも先にも、面識のない女性に突然声をかけたのはこの1度きりです。(信じてもらえないかもしれませんが…)
なんて声をかけたかは覚えていません。
ただ、ギョッとした彼女が、不審者を見るような目でボクを見たのだけは覚えています。
それからどうでしょう
半年以上かかりましたかね。
断られても断られても、しつこく口説き続けるボクに根負けした彼女が
「もう、面倒くさいから試しに付き合ってみる?」
と、笑いながら言うまでに。
ストーカーという概念がない時代に生まれて本当に良かったです。
覚えているでしょうか。
バイトが終わり、お土産に31アイスを買って君の待つアパートに帰ったこと
ある日のデート。金欠の2人が、なけなしの金をパチンコにつぎ込み1文無しになって途方にくれたこと
RCのバラードばかりを集めたカセットテープをプレゼントしたけど、尾崎好きの君は全く聴かなかったこと
あまりの混雑ぶりに嫌気が差し、成人式をサボって隣でやっていたサーカスを観に行ったこと
青春でしたね。(言ってて恥ずかしいですがっ!)
その後、卒業して実家のある大阪で就職した彼女との遠距離恋愛が終わったのは、社会人1年目が終わろうかという頃です。
若気の行ったり来たりです。
愚かなボクは、浮気をしてしまったんですね。(信じてもらえないでしょうが、後にも先にもコレが人生で唯一の浮気です。笑!)
そのことを彼女に電話で伝え、関係が終わったボクらは別々の人生を歩みます。
でも、ボクは知っていました。
彼女は1度好きになった人は、どんなことがあっても嫌いにはならないのです。
思い出したように、時おり連絡を取り合いました。
仕事で2年ほど大阪に滞在した時は、何度か食事もしました。
最後に会ったのは2年前(3年前でしたっけ?)
酔いがまわると、ボクは度々言います。
ねぇ…
子供が独立して
両親も…
君の旦那さんも亡くなって
お互い自由になったらさ…
ボクと結婚しないか?
同意も拒否もしない彼女は
でも、その頃あんた
絶対死んでるじゃん(笑)
といつも言います。
予後が不確かな指定難病患者に、そりゃシャレにならんやろ!
て思いますか?
違うんですよ。
ボクには分かります。
これはですね。
だったら節制して、少しでも長生きしてね
っていう彼女の気遣いなんですよ。(全然違ったりして(笑))
まぁ、ぶっちゃけ
実際に結婚するかどうかなんてことは、どっちでもいいんですよ。
彼女のご両親や旦那さんにも是非長生きして欲しいですしね。
ただボクは
そう思える相手が
少し遠い大阪だけど
同じ空の下に存在していてくれる
ってだけで、少しだけ自信を持って生きていけるんです。(バツ2なんですけどね)
さて
今日を乗り切ればボクも夏休みです。
Kと実家に帰省し
明日はサーカスを観に行きます。
皆さんも良いお盆休みを。