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三浦国宏 50男・規格外の就活 第4話『地獄にヨシオカ』

前回までのあらすじ

勢いと成り行きで、アマチュア史上最強のボクサー三浦国宏を再び自宅に招いた味玉。

『泊めるのは2月いっぱいまで』という絶対条件をつけられたものの、なんとか元嫁の許しも取りつけ、寝床のなかった三浦と味玉の『10日間の就活合宿』がスタートを切った。

果たして、三浦は無事に期限までに仕事見つけ、味玉の家を出ることができるのか?

波乱の10日間をどうぞお楽しみください。

 

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

 

第4話 地獄にヨシオカ

 

2月20日水曜日 合宿2日目の夜

 

「はぁ…じゃ、また最初からやり直しですか…」

 

 

味玉は、ダイニングテーブルで夕食を食べる三浦と向かい合い、ため息をついた。

 

 

「あいすみませんせんねぇ…4tトラックの運転手は40歳までだって言うし、他は、寮があっても賄い付きじゃなかったり…あ、1っこだけ寮付きで、賄い付きの仕事があったんですけど、寮費が1日1,500円、食事が500円×3食で1,500円も引かれるんですよ。そんでもって、1万2千円て書いてあったのに、最初は見習いだから9千円からって言うんですよ…1日6千円じゃぁねぇ…」

 

 

もう3度目だと言うのに、三浦は今日も味玉の家に真っ直ぐ辿り着けなかった。

大して難しくない道を迷った三浦の帰りを待ちきれず、味玉と息子のKは、先に食事を済ませた。

いま Kは風呂に入っている。

 

 

「贅沢言ってる場合じゃないでしょう。どこもそんなもんですよ。真面目にやってりゃ、そのうち日当も昇げてくれますって。それに、不思議に思ってたんですけど、なんで、そんなに賄い付きにこだわるんです?コンビニとか…それが嫌なら寮の近くで安い定食屋さんとか見つければいいじゃないですか」

 

 

「マグロが大好きなんですよ」

 

 

「は?…何ですか?よく聞こえなかった」

 

 

「いや、だからマグロが大好きでねぇ」

 

 

「意味分かんないんすけど…言っときますがね、ウチはマグロなんて高級品は膳に上らないですよ。食いたきゃ自分で買ってきてくださいよ」

 

 

「いや、そうじゃなくてですね…ほら、私昔あそこで働いてたじゃないですか、なんつったけなぁ…蝶々…じゃなくって、竹内…でもなくて…」

 

 

「あんた分かってて言ってるでしょ…みやこ…築地場外にある『まぐろのみやこ』でしょ?それが?」

 

 

「そう!そのみやこ!賄いにマグロがよく出てさ、コレがウマいのなんのって…だからやっぱり賄い付きの仕事がいいなぁって…ね♡

 

 

 

殺意…

 

 

何が『ね♡』なのか…

 

 

 

「全く…なに言っちゃってるんだろうね、この全身パンチドランカーは…あのねぇ会長、それは、たまたま働いてたのがマグロ屋さんだったからですよ。牛丼屋で働けば牛丼、ラーメン屋ならラーメンが賄いなの!」

 

 

え?!そうなんですか?へぇ…だから、前の会社の寮じゃ全然マグロ出てこなかったんですね。ケチな会社だなぁってずっと思ってました…へぇ…」

 

 

「何が『へぇ…』ですか、それに、そんなにマグロが食いたきゃ、賄いなしの寮に入るとか、自分で安アパート借りるなりして、スーパーとかで買ってきて好きなだけ食べればいいじゃないですか」

 

 

そ、そう言われたらそうですね!…全然思いつかなかった!いや〜味玉くんキミ頭いいねぇ〜…へぇ〜…」

 

 

 

再び殺意…

 

 

バカにしてんのか?コイツ…

 

 

 

「ねぇ…本当にそれが賄い付きにこだわってた理由なんですか?それとも冗談?もしホントにそうなら、だいぶ仕事探しの幅が広がりますよ、ちょっと他の業種も探してみますか?」

 

 

「いいですねぇ〜!お願いします…あ、ちょっとトイレに…」

 

 

「はい、行ってらっしゃい。もう間違えないですから大丈夫ですよ」

 

 

三浦は、家までの道順どころか、大して広くもない味玉の家のトイレの場所さえ、なかなか覚えなかった。

 

 

何度となく用を足しているのに、必ず廊下の反対側のウォーク・イン・クローゼットのドアを開けてしまうのだ。

 

 

三浦が夜中にトイレに起きると、そのままクローゼットに用を足してしまわないか心配で、味玉も起き出し、その都度トイレの場所を教えた。

 

 

しかし、もう大丈夫。

先ほど三浦の帰宅前に対策を講じたのだ。

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

何回間違えるんすか?…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

風呂上がりのKに歯磨きをさせ、進研ゼミのタブレットを持たせ寝室に向かわせた。

「9時には寝るように」とも付け加える。

 

 

「じゃぁ、明日は少し幅を広げて職探ししてみますよ。寮付き賄い付きにこだわらなければ、色々あると思いますよ。安アパートも見ときますから」

 

 

「悪いですねぇ…お願いします。アパートは3畳くらいあればいいですから。風呂もいらないしトイレも共同でいいですから」

 

 

「分かってますよ、風呂付き物件なんて住んだらバチが当たって地獄に堕ちますよ…さ、明日も早いし一杯飲んで寝ましょ」

 

 

「え?もう寝るんですか?…いやね、お土産があるんですよ。味玉くんも一緒にどうかなぁって思ってね」

 

 

「え?お土産?…そりゃ、ありがたいっちゃ、ありがたいけど…そんな無駄遣いしなくていいですよ…それに道草しないで早く帰ってきてくださいよ」

 

 

味玉は、そう言いながらも(やはり世話になる身…彼なりに気を使ってくれてるのかな…)と、改めて、いつでも誰にでも優しかった三浦を思い出した。

 

 

和室でリュックをゴソゴソやっていた三浦が「あったあった、ありましたよ!」と言いながら、何やら手にして戻ってくる。

 

 

テーブルに置かれたそれは…

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

ま、またですか?…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

「ねぇ…1回殺していいですか?…てか、このDVD随分ぶ厚いけど、もしかしてVHSじゃないですか?ウチにはビデオデッキなんかないですよ…あっても絶対使わせないけど」

 

 

「え?!VHS?!…いやいやいや、参ったな…あの中古屋さん…」

 

 

「全く、しょうがない男だねぇ…」

 

 

そう言って、味玉は三浦が買ってきた『熟女系ヒーリング映像』のケースを手に取り、何気なく「パカっ!」と開けてみた。

 

 

すると…

 

 

 

「な、なんじゃゴラァア!?!!!」

 

 

 

ブーーッ!…ちょっと、ビックリさせないでくださいよ味玉くん、吹き出しそうになったじゃないですか」

 

 

 

出しそう、じゃなくて思いっくそ吹き出していたが構わず続けた。

 

 

「会長…コレVHSじゃないです。分厚かったのはコレが原因です」

 

 

三浦国宏 50男・規格外の就活

いっぱい入ってるし…( ̄▽ ̄;)💧

 

 

えぇぇーーー!いっぱい入ってる♡わぁ〜嬉しいなぁ〜♡」

 

 

 

満面の笑みである。

 

 

「良かったですねぇ会長…って、いやいやいや、そうでなく!コレが見たかったら、とっとと仕事と住むとこ見つけて出てってくださいよ!そうすりゃ好きなだけ見ていいですから」

 

 

「分かりました!頑張ります!押忍!」

 

 

まずい『押忍!』が出てきた。

この「押忍」と「あ、そうですか!」が出てきたら、酔ってきた証拠、危険信号だ。

 

 

 

「さ、それ飲んだら、もう寝てください。明日の現場も新宿でしたよね」

 

 

「わっかりました〜寝ま〜す!新宿で〜す!押忍、押〜忍!」

 

 

🌙

 

三浦国宏と2段ベッド

ご飯の間に海苔を挟んだ弁当を『2段ベッド』というらしい…



 

2月21日木曜日 合宿3日目

翌早朝

三浦を起こし、朝食を食べ、弁当を持たせ駅に向かった。

 

 

すると偶然、駅前で辻立ちするFacebookの友人に出くわす

 

三浦国宏と猪野たかし

平日は毎日何処かしらの駅に立つ猪野さん

 


「あ、おはようございます猪野さん。コレ、例の三浦国宏です」

 

 

猪野さんは、僕のブログを読んでくれているので、三浦のことも知っているのだ。

 

 

「あ!この人が噂の…どうも初めてまして猪野です。よろしくお願いします」

 

 

丁寧に頭を下げる猪野さんに、その昔、いま話題の桜田義孝大臣の秘書(と言っても、ただの雑用係だろうが)をしていたことがある三浦が、昔話を始める。

 

 

三浦国宏の過去

秘書なんて出来ないだろうに…

 

 

いつまで経っても三浦の話は終わりそうにない。

猪野さんも、いい加減迷惑そうだ。

 

 

「会長!あんまり油売ってると遅刻しますよ!」

 

 

 

なおも話そうとする三浦を、猪野さんから引っぺがし、駅の改札へ降りる階段へと向かわせ、味玉も自転車にまたがり自分の現場へ向かった。

 

 

いつものように仕事は暇なので、早速スマホで仕事探しをする。

現場監督が何か話しかけてきたが「今忙しいから後にして!」と突っぱねた。

 

 

寮付き、賄い付きにこだわらなければ、年齢制限のない仕事もたくさんあるだろう。

建築・土木関係に限定しなければ、なおさらだ。

 

 

しばらく検索していると、目に留まったのは『新聞配達員』である。

 

 

(あー…いいかもなぁ、新聞配達員…寮もあるし、休刊日も年に数回だから、日雇いの土方と違って、仕事にあぶれることもない。朝…というか深夜から朝刊の準備して配達して、終わったら仮眠して、すぐ夕刊の時間だから逆に毎日が休肝日だ。酒もやめられるかも…)

 

 

『配達先の家を覚えられるのか?』という最も重要な問題を抱えつつも、電話をしてみる。

 

 

 

「もしもし、お忙しいところすみません。ネットの求人をみたんですが…」

 

 

電話に出たのは、吉岡さんと名乗る人物。

『厚生労働大臣の認可を得た有料職業紹介業』を営む社長さんで、東京近郊の新聞販売所に人材を紹介することを主な業務としている。

少ないが建築・土木の求人案件もあると言う。

 

 

自身も新聞奨学生を経験し、努力の末に会社を立ち上げた苦労人だとのこと。

どんな質問にも、とても親切丁寧に答えてくれる吉岡さんに好感を持った味玉は、全てを正直に話してみることにした。

 

 

実は、職を探しているのは自分ではなく、三浦国宏という、とんでもない厄介な男であること…

道に迷ったり、家のトイレの場所もなかなか覚えず、配達先のお宅を覚えられるのか甚だ怪しいこと…

酒を飲むとさらに厄介さに拍車がかかり、これを機に酒をやめさせたいこと…

 

 

しかし長所もあり

 

 

築地や豊洲で働いていたので朝は強いこと…

頭は悪いけど、自転車で何処へでも行くほど、体力だけはあること…

熟女が大好きで結構モテるから、年配の女性には、うってつけの拡張員になれる可能性があること…

 

 

 

などなど。

 

 

吉岡さんは、笑って答えてくれた。

 

 

「大丈夫です、全然問題ありませんよ。いま新聞配達員は不足していて、東南アジアから来た外国人も多く雇っています。土地勘もなければ、日本語すら覚束ない彼らでもビジュアルで配達ルートが分かるアンチョコもあります。それに、ルートを覚えるまで、ちゃんと先輩のサポートが付きますから安心してください」

 

 

「そ、そうなんですね!ありがとうございます!じゃ、今日三浦が帰ってきたら新聞配達やる気があるか確認して明日また電話します。もし、三浦がその気になったら是非よろしくお願いします!」

 

 

「分かりました。お待ちしています。私の方でも、いま募集している配達所をいくつかピックアップしておきますよ。それでは」

 

 

 

 

電話を切った味玉は思った。

 

 

いや〜〜

いい人だなぁ…吉岡さん♡

よし!帰ったら会長を説得して、何がなんでも新聞配達をやらせよう!

そんで、とっとと出てってもらおう。

邪魔だから…

 

 

 

そして、その夜

4度目にして、ようやく迷わず帰って来られた三浦に「ほら!家の場所だって覚えられたじゃないですか、新聞配達だって大丈夫ですよ!」と説き伏せ、最初は渋っていた彼を、なんとかその気にさせた。

 

 

2月22日金曜日 合宿4日目

その日の日中

再度、吉岡さんに電話をかけ、三浦が興味を示している旨、しかし、やはり若干の不安もあるようだと伝えた。

 

 

すると、吉岡さんは、国分寺の会社から江東区の僕の自宅まで出向いて、三浦の不安が解消するよう、仕事のやり方やサポート体制、詳細な労働条件などを説明しにきてくれるとのこと。

その上、それでも気に入らなければ断ってもらって構わない、とまで言ってくれたのだ。

 

 

味玉は思わず電話口で頭を下げながら、今日の仕事終わり、吉岡さんと自宅で会う約束を取り付けた。

 

 

味玉は、電話を切って胸をなでおろし、思った。

 

 

(あぁ…なんて素晴らしい人だ!地獄に仏…いや、『地獄に吉岡あり!』だ。これを味玉家の家訓に加えよう…そして、もう吉岡さんに全てお任せしたい…なんなら、そのまま国分寺に持って帰ってもらえないかな…邪魔だから…)

 

 

希望の光が差すのを感じた味玉は、搬入車両もないのに鼻唄を歌いながらゲートに向かった。

 

 

 

 

たまには仕事しよう!

 

 

 

第5話に続く…

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