チャリ通は常に向かい風…もちろん人生も!

ひとり親の子育て/テキトー料理レシピ/アホ小説/ボクシング&格闘技/ダイエット(減量)/指定難病と過去のうつ病…ほか・・ごゆるりと♬

続・魂のオレっ!

前回までのあらすじっ!

昔ながらの手口しか認めない、折野佐木助(おれの さぎすけ)の元で、オレオレ詐欺を働く破天夫(はてお)

連日詐欺を見破られ、心がオレかけていたある日、『オレオレ』と呼びかけた相手の口をついて出た言葉は『まさか破天夫かい?』という驚きのものだった。

電話の向こうにいるのは、果たして破天夫が幼い頃生き別れた母親なのか?

それとも…

 

※前回のお話はこちら↓ 

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続・魂のオレっ!

 

「母さん!オレだよ!破天夫だよ!ずっと昔に生き別れた破天夫だよ!」

 

 

「え?…まさか、本当に破天夫なの?…いいえ、騙されないわ。いつか破天夫と暮らすためにとコツコツ貯めた貯金を半分も持ってかれたんだから!もう2度と騙されません!」

 

 

「いや、本当だっつーのっ!ええと…どうしたら信じてくれるか…そっ、そうだ!合言葉だ!合言葉を答えるよ!」

 

 

「え?合言葉なんて決めてないわよ…やっぱり、あなた破天夫じゃないわ。迷惑なんで、もう電話しないでもらえるかしら、じゃ!」

 

 

ガチャっ!ツー…ツー…

 

 

しまった…

 

気が動転して、思わず合言葉なんて…

 

何百回、何千回も『本物なら合言葉を答えられるはずだ』って言われてきたせいだ。

 

本物だから答えられるって、つい思っちまった…

 

 

 

 

破天夫は混乱していた。

 

 

本当に母なのか?

 

あの人は、確かに『はてお』と言った…

もちろん同名の別人物の可能性もある。

 

だが、こんなイカした(れた)名前をつける親が果たして他にいるのだろうか…

 

 

破天夫は、スマホを取り出し、他に『はてお』という人物が日本に何人位いるのか、ネットで検索してみることにした。

 

 

 

…名字検索しかなかった。

 

 

そうだ!名字!

 

 

破天夫は、ファイルをめくって、先ほどかけた電話番号の持ち主の名前を改めて確認した。

 

 

 

打狩 八子 

 

 

 

「うつかり…はちこ…」

 

 

間違いない…

 

施設入所時に、取り寄せた戸籍謄本で母の旧姓を知った時『なるほど…』と妙に納得した記憶があるのだ。

 

 

 

 

八子は、うっかり者だった。

 

 

遠足のお弁当に中身が入ってなかったことは1度や2度ではない。

 

 

買い物しようと町まで出かけたら財布を忘れるし、お魚くわえたドラ猫を追いかけて裸足で駆けてくこともあった。

 

 

しかし、破天夫は、そんな愉快で陽気な八子が大好きだったのだ。

 

 

唯一分からなかったのは、あのトロけるように優しかった八子が、なぜ破天夫を置いて1人でいなくなったのか…

それだけだった。

 

 

 

回想に耽っているとオヤジが帰ってきた。

 

 

「破天夫…なぜリストを出しっぱなしにしている?」

 

 

「あ…」

 

 

「破天夫、このリストは、今までの電話帳とはワケが違うんだぞ、情報の重みが桁違いなんだ。それをお前ってヤツは…」

 

 

「ごめんなさい…すぐ片付けます…」

 

 

いつになく神妙な面持ちでリストを片付ける破天夫を見て、折野は言った。

 

 

「破天夫…そこじゃない。そこは冷蔵庫だ」

 

 

 

 

食事も上の空だった。

 

今日は、破天夫の好きな『ネギ玉牛丼』だったが、箸が進まない。

 

折野が、しきりに話しかけてきたようだが、上からマリ…いや、右から左だった。

 

『ああ…』とか、『うう…』とか、相づちを打ってやり過ごすうち、気づけば寝床に入っていた。

 

 

 

明日、もう1度電話をしてみよう…

だけど、オレが本物の破天夫だって分かってくれるだろうか…

 

 

幼かったため、記憶が曖昧で八子との想い出は、それほど多くない。

 

 

なにか、2人にしか分かり得ない出来事はないだろうか…

 

 

 

 

 

いつしか微睡み、気づけば朝になっていた。

 

 

 

オヤジが出掛けるのを確認し、電話機の前で大きく深呼吸してからダイヤルを回した。

 

 

「もしもし、オレ…破天夫だけど…」

 

 

「…またなの?いい加減にしないと警察呼ぶわよ」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ母さん。オレ本物の破天夫なんだよ。その証拠に、アレを覚えているよ。ホラ『らっきょうライス事件』!」

 

 

「…ナニかしら?それ」

 

 

「ナニって…誕生日の夕食が、ご飯とらっきょうだけだった、てやつ。食べ終わって半ベソかいてるオレを慰めるように『忘れてたわ破天夫、デザートがあったの!』ってカレーのルーを出してくれたじゃないか!」

 

 

「そんなの主婦だったら日常茶飯事よ。どの家庭にでもあることだわ」

 

 

「そ、そうなのか?じゃコレは?『校長室乱入騒ぎ』…小学校の入学式で、貼り出されたクラス割にオレの名前がどこにもなくて、母さんが校長室に怒鳴りこんだら、隣町の小学校だったってゆー…」

 

 

「それも調べれば誰だって分かるわ。当時の小学生から情報を仕入れることも出来るし…あ、ネットにも出てたもん、校長が2chに書き込みしたのよ。とにかく、もう電話しないでくれるかしら」

 

 

ガチャ、ツー…ツー…

 

 

 

また、ダメだった…

どうすればいいんだ…

 

 

その日、キムチ牛丼には箸をつけず、破天夫は折野に言った。

 

 

「オヤジ…頼みがあるんだ」

 

 

頭を下げる破天夫を、折野が訝しげに見つめる。

 

 

「オヤジはその昔、かけ子の腕前じゃ右に出る者がいなかったんだろ?どんな相手でも、オヤジの『オレオレ』で自分の息子だと信じ込ませたんだろ?」

 

 

「ああ、そうだ…だが、オレは、かけ子はやらんぞ。他にやることがあるからな」

 

 

「分かってるよ、うけ子とか出し子だろ?それにリストの調達だとか…頼みってのは、そうじゃねぇ、オレに、そのオヤジのテクニックを伝授してくれないか?」

 

 

「…いいか破天夫、本物の『オレ』は決して小手先のテクニックなんかじゃない」

 

 

「テクニックじゃない?…じゃあなんだ?ピクニックか?」

 

 

「それもある…だが最も大切なのは『魂』…だ」

 

 

「た、たましい…」

 

 

「キツイぞ…本気なのか?」

 

 

「ああ、どうしても息子だと信じてもらいたい相手がいるんだ。頼むよオヤジ!オレにその『魂のオレ』を教えてくれよっ!」

 

 

「分かった…だが、今日は牛丼食って寝ろ。『空腹と寝不足は、ところてんを誤る』だ。特訓は明日からだ」

 

 

 

次の日から、血の滲むような特訓が始まった。

 

 

 

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ドーハの悲劇を感じた。

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10日間に及ぶ特訓で、破天夫は確信していた。

 

 

「いける…いけるぞ。コレなら5分もいらねぇ、2分で十分だ※1


※1「にふんでじゅっぷん」ではありません「にふんでじゅうぶん」です。

 

 

 

 

次の日

破天夫は、満を持して受話器をとった。

 

 

 

「もしもし、母さん?」

 

 

 

 

 

 

 

続けられる…気がしないww

 

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