「申請主義」と「縦割り行政」が弱者をコロス
日本の政(まつりごと)の多くは、申請主義で成り立っています。
聞きなれない方もいらっしゃるでしょう。
申請主義とは…
恩恵を受ける側(国民)が申請することにより、初めてその制度を利用(権利行使)できる仕組みのことをいいます。
つまり、受給資格を満たしていたとしても、自分から申請しなければ様々な給付金や還付金、各種行政サービスは、永遠に受けることができないということです。
何のことやら…とお思いかもしれませんがコレ結構厄介です。
例えば年金だって、受給できる年齢になったからといって、勝手に振込みが始まるわけではありませんで、自分から申請手続をしなければビタいち文支払われませんよ。
40年間(場合によってはそれ以上)一度も滞納することなく年金を支払い続けて来たとしてもです。
もっとも年金は、年金機構から受給年齢に達したことを報せる通知が届きますし、年金の存在を知らない国民など、ほぼいないでしょうから、そういったことが頻繁に起こることはありません。
しかし、制度や手続きをよく知らない独居老人や、高齢でも現役で働き、多忙を極める方などが、あふれかえるDMとピザ屋のチラシに紛れた大切な通知を破棄してしまい、そのうち軽い認知症になりそのまま放置、挙げ句の果てに亡くなってしまう…なんてこともあり得るのではないでしょうか。
みなさんがよく知る制度では、年間10万円以上の医療費がかかった場合、確定申告をすれば、その分の所得税・住民税が還付される『医療費控除制度』や、入院や手術などで高額の医療費がかかっても、国民健康保険、若しくは協会けんぽや各種共済に保険料を納めていれば、年齢や所得に応じて自己負担額の上限を超えてかかった費用が支給される(所定の要件を満たし、事前に手続きすれば、予め自己負担分のみ支払うこともできる)『高額医療費』という制度などがありますね。
私も、2018年は、自身の「突発性拡張型心筋症」の定期通院に加え、息子のKが歯の矯正を始めたので、年間の医療費は50万円近くになりました。
ザックリ言うと、この2月に確定申告をすれば、10万円を超えた40万円の15%(所得税5%住民税10%)の6万円が還付されます。
※1、既に各種控除を受けていて納税額が少なければ全額還付されない場合があります。
※2、年収が高く所得税率が高い方は、もっと還付されます。
過去に、心筋症で約ひと月入院した時も「高額医療費」という制度のおかげで、自己負担は8万円程度で済み、加入していた都民共済の医療保険からの保険料でプラスになりました。
もちろん協会けんぽの『傷病手当金』も申請して、給与の(正確には『標準報酬月額 』)の3分の2を受給しました。
他にも国の制度である『児童手当』や失業保険(正式名称は『求職者給付』)など皆さんがよく知る制度は、面倒な申請手続きを経さえすれば受給できますから、受給漏れなどは そう多くはないでしょう。
しかし、世の中には我々がよく知らない各種制度が沢山あります。自治体によってサービス内容や受給要件が異なり、複雑怪奇なものも多いです。
そもそも、そのサービスの存在自体を知らなければ、申請のしようがありませんよね。
自治体ごとにサービスが違えば、引越しなどして新たな居住地で受けられるサービスを長年受けていなかった、なんてこともザラにあります。
皆さん知らず知らずのうちに、エラく損しているかもしれませんよ。
追い討ちをかける縦割り行政
知らないなら聞いてみよう!ということで区役所や保健所などに行き問い合わせたとしますよね。
ところがコレが落とし穴です。
運良く親切なベテラン職員さんの窓口に当たればラッキーです。しかし、そうでない職員も一定数いらっしゃいますね。
自治体によっては派遣スタッフが窓口にいるなんてこともありますよ。
そうなるとたまったもんじゃありません。
聞いた話ですが、ボクの友人がシングルマザーになった時『児童扶養手当』を受給しようとして役所の窓口で「児童手当の手続きをしたい」(「扶養」という言葉が抜けていた)と言ったら「貴方はそのサービスを既に受けています」と言われ、腑に落ちないまま家に帰り、その後しばらく手続きをしなかった、なんてこともありました。
さらに追い討ちをかけるのが「縦割り行政」
お役所仕事の典型ですね。
具体的に言いますと…
例えば、先述した国が行う『児童扶養手当』や、東京都が行う『児童育成手当』など、ひとり親に対する助成制度の多くは、役所の中の「子育て支援課」であるとか「子供政策課」などといった名称の窓口で手続きできます。
しかし他にも、年収に応じて、各種教材費や修学旅行積立金、入学準備金などが支給される『就学援助費』や、学童保育の月額料金やおやつ代などが免除される『減額免除制度』などは「放課後支援課」であるとか「こども未来課」などといった名称で別の課が担当していることが多いのです。
子育て支援課で「学童保育の費用などを助成する制度はありますか?」と聞いても「そんなものはありません」と言われる可能性は大いにあり、人を疑うことを知らない純粋で奥ゆかしいその人は「自分の住む自治体には、そういうサービスはないんだなぁ…」なんて考え、永遠にその恩恵を受けられないなんてことはザラにあるのではないでしょうか?
実際にボクがシングルファーザーになった時、江東区の子育て支援課にて
- 児童扶養手当
- 児童育成手当
- 水道料金減免措置
- 都営バス・都営地下鉄無料券の交付
- 粗大ゴミ手数料の免除の説明
などの手続きを終え「他にひとり親が受けられるサービスはありませんか?」と聞いたところ、窓口の職員は自信たっぷりの笑顔で「これで全部です」と答えましたね。
おかげ様で、その前年、社会保険労務士の受験勉強をしてほとんど仕事をしておらず、区民税が免除になっていたボクが受けられるはずだった学童保育の『減額免除制度』を受けることができませんでしたよ。
知識不足で散々泣きを見るハメに…
ボクはこれまで、この「申請主義」と「縦割り行政」のお陰で散々痛い目を見てきました。
前職では法務や労務も少し担当していたので会社の顧問弁護士や顧問社労士とやりとりをすることもあったし、大学では法学部に在籍していたので、ある程度の基礎知識は持っていたつもりです。
しかし、まさか自分が指定難病患者になるとも、うつ病で労災認定を受けるとも、退職してガードマンになるとも、シングルファーザーになって経済的に苦しむとも思っていませんでしたので、そのような勉強をしたことは当然なく、全てのことが無知識での初めての経験でした。
先述した、学童保育の『減額免除制度』を受けられなかった他にいくつもの失敗があります。
医者の不親切な説明で指定難病患者が受けられる『医療費助成制度』の申請が遅れ、年間20万近くの薬代を1年以上支払い続けました。
うつ病で休職している期間は協会けんぽから支給される『傷病手当金』を受給していましたが、その後『傷病手当金』より2割ほど高額の保障が受けられる労災保険の『休業補償給付』に切り替えることを検討し労災の申請を試みました。
労働債権の時効は2年間です。そのことは知っていたので給付を受けられない期間があることは分かっていました。労災申請したのが闘病生活を終え、うつ病が回復してからだったので時効が成立してしまった期間が結構あったんですね。
しかし『休業補償給付』を受給した場合、返還しなければならない『傷病手当金』の債権・債務の時効は10年間だと聞いて心底呆れましたね。
時効が成立して労災保険の『休業補償給付』が受給できない期間だとしても、既に受給した『傷病手当金』の方は時効前なので返還しなければならないのです。
でもね…
考えてみてくださいよ。
労災が認められるような重度のうつ病患者が、煩雑で労力のかかる労災申請を元気にホイホイ出来ると思いますか?
そんなことが出来るくらいなら仕事しますよ。2年を超えて闘病しなければならないような患者こそ、労災保険で救うことが『労働者災害保障保険法』の本来の法の精神なんじゃないですかねぇ。
とにもかくにも、そういうわけで、本来なら労災認定されたことで、より高額の保障が受けられるはずなのに、お上にばかり都合の良い時効期間の設定によって逆にマイナスになってしまいましたよ。
その額およそ100万円。
もちろん、それを分かって労災申請を決断したわけです。労災が認定されたら、そのマイナス分をはるかに上回る額の損害賠償請求を会社にしてやろうと思ったからですね。
ボクの場合、運良く和解が成立して事なきを得ましたが、訴訟が長引けば、高額の弁護士費用を工面しなければならなかったり、仕事や私生活に影響する時間的な負担を強いられたり、挙げ句の果てに敗訴する可能性もあった訳ですから、たまったもんじゃありません。
他にも、退職時に受けた、いわゆる失業保険、正確には『求職者給付』についても、ハローワークに提出した離職票の退職理由を「自己都合」にしたため『求職者給付』の受給期間や額が「会社都合」の場合に比べ少なくなりました。
リストラなどで解雇された場合だけでなく、自ら退職の意思を示した場合でも『時間外労働』つまり残業代未払いなどの労働基準法違反や、パワハラ・セクハラなどがあったことが退職を決意した原因であれば、ハローワークに申告して「会社都合」にできる場合があります。
そうすると『求職者給付』(いわゆる失業保険)の支給開始時期が早まったり、受けられる期間や額が増えたりするのです。
社会保険労務士を諦めたボクが出来ること
そのような経験を経たことや、ガードマンとして建築現場で働き始めたことがきっかけで、ボクは社会保険労務士の資格を取得することを決意しました。
うつ病の労災申請時に、弁護士事務所や社会保険労務士事務所に相談を持ちかけましたが、ボクは笑えるほどたらい回しに会ったんですよ。
当時のうつ病の労災認定率はわずか20数%、認定までかかる期間は概ね1年、長引けば2年3年とかかる場合もあります。
何年もかけ、煩雑な調査と書類作成を行った結果『不受理』つまり労災が認定されなければ、わずかな着手金のみで成功報酬が得られない彼らはタダ働き同然になってしまいます。
ですので、どうせなら、もっと分かりやすい離婚調停や、傷害事件の損害賠償などを手掛けたいのですね。
絶望的な気持ちの中、それでも電話をかけ続け、ようやく巡り合った社会保険労務士の先生は素晴らしい方でした。
まさに地獄に仏、大海の木片、電話越しでしたけど後光が差して見えましたね。
多くの案件を抱え、とても新たな契約を結ぶことは出来ないが、メールであればどんな質問にも出来るだけ答えるしアドバイスもする、場合によってはスカイプなどを使って面談しても良い、オマケに正式な契約ではないので費用は1円もいらない、というではありませんか!
「世知辛い世の中…これほどまでに立派な人物が存在するものなのか… 」
涙が滲みましたよ。
「せめて5万円の着手金だけでも支払いたい」と粘るボクの申し出を頑なに拒んだその社労士先生のお陰で、ボクはなんと、わずか4ヶ月ちょっとで、しかも普通なら必ず行う「労働基準監督官との本人ヒアリング」をすっ飛ばしてのスピード認定を得られました。
自分で言うのも憚れますが、それまで出世頭でエリートコースの端っこを歩いていると自惚れていた勘違い野郎なボクは、その先生のように
- 自己の利益はそっちのけで
- ひとの痛みや苦しみを知り
- 弱者に優しく手を差し伸べられる
これまでの自分とは正反対の人間に生まれ変わりたいと考えたのです。
働く建築現場は、下請けの小さな施工業者や個人事業主が沢山います。
ほとんどは正しい法知識がないためそうなっているケースが多いのですが、中には悪質なブラック企業もあります。
職人さんも散々ヤンチャしてきたイケイケ出身、ガードマンなんかやっている人間も訳あり人物だらけです。
自分たちが行使できる正当な権利がなんなのか、正確に知る由もありません。
色んな人に沢山のアドバイスをしましたね。
しかし、未熟なボクはまた失敗します。
中には上手くいく人もいましたが、権利を主張した相手の会社には顧問契約した有資格の経験豊富なベテラン社労士がバックに付いているケースもあります。
にわか仕込みの受験生が太刀打ちできるはずもありません。ボクの中途半端なアドバイスにより、巧みに法の網をかいくぐった対策を打たれ、前よりも悪い状況になった人もいました。
また、ボクのアドバイス通りにした方が得なのは分かっていても「これまで世話になった社長にや、働いている仲間に迷惑はかけられない」と言って自ら引く義理人情に厚い職人さんも多かったです。
無力感を感じました。
仮にこの難関な資格試験を突破して社会保険労務士になったとしても、ボクは一体どれくらいのことができるんだろう…
報酬が高く安定しているとは言え、企業お抱えの社労士にはなりたくない。労働者側に立った社労士で果たして食っていけるのだろうか…
そんな時、告げられた元嫁からの離婚の言葉
時間的にも経済的にも、そして精神的にも追い込まれ、とても勉強どころではなくなり、ついには資格取得を諦めてしまいました。
愛する息子との楽しい生活にのめり込み、すっかりそんなことを忘れていた昨年末、ひょんなことから始めたブログを書くにあたり
ボクの経験したことや、持っている知識を発信できたら…
もしかしたら、困っている誰かのチカラになれるかも知れない…
そう思い、まずはブログに慣れ、ある程度の読者様もつき、そして、いよいよこの記事を書いたわけです。
今後の予定
今日は、このくらいにしておきます。
ひとり親
子育て支援
指定難病
各種労務問題
などのカテゴリで、もっと具体的で、皆さまに役立つ情報を発信していきたいと思っています。
ネット社会の世の中、様々な情報が溢れかえっています。このブログ以外にも沢山の情報を収集することができるでしょう。
ですので、このブログでは各種制度の表面的な仕組みだけでなく、出来る限り実際の経験に基づいた手続上の注意点や、上手な制度利用の仕方(もちろん法令に則った)、独自の視点で記事を書いていこうと思っています。
現在準備中の記事は、ひとり親が受けられる『児童育成手当(障害手当もある)』という東京都のみが行う制度についてです。
数多(あまた)の情報サイトがありますが、いくつかの不満がありました。ボクなりに、ボクだけが書ける記事を書くつもりです。
※書きました!
とても煩雑な作業を伴うので、その記事に続きドンドン新しい情報を…とはいきませんが、頑張って書きます。
それとですね。
申請主義と縦割り行政の批判をしましたが、難しい面もあるんですよ。
様々な行政サービスを国民に広く周知するには、莫大な広告費用や普及活動に伴う人件費などがかかります。そして告知が進めば当然社会保障費は膨らみます。
それらの財源をどうするかといえば、さらなる消費税増税しかないでしょう。法人税など増税されても、景気が悪くなるだけですしね。
ですので、押し付けの道徳教育や、実際の会話では使えない英語の授業なんかを減らして、国民の義務と権利について小学校くらいから教え続け、センター試験の受験科目にするか、個人が賢く情報収集するしかないんですよ。
というわけで、新しい記事を書いたらこのページにもリンクを貼っていくつもりなので、ご興味のある方がいらしたら、まずはこの記事にはてなブックマークを、又は読者登録などしていただけると嬉しいです。
もちろん今まで通り、アホ記事もガンガン投稿しますよ〜♬︎
(*ˊᗜˋ*)✨笑笑
それではまた後日♡