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連載アホ小説『第2話 闘いの後には』

連載アホ小説

ガードマン味玉のFunnyな1日♬

第2話 闘いの後には

 

※第1話 を読んでない方はこちら

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ふたりの漢は微動だにしなかった。

 

 

しかし、その佇まいとは裏腹に、ふたりの間には壮絶な『見えない気』の攻防が繰り広げられていたのだ。

 

 


マズい…

どう攻めても、かいくぐられてカウンターで猫パンチが飛んでくるイメージがある。

 


かつて、ミッキーロークが放ったアレだ。

 

 

アレは、かなり効く…多分だけど…

 

 

なにしろ、アレを食らった対戦者は1発KOだったのだ。

 

 


味岡が、あらゆる攻撃のイメージを放つも、ヤマトは、しなやかにその長い尻尾をくねらせ悠々と受け流す。

 


風に揺蕩う柳のようだ。

 


しかし、味岡も全てを出し切ったワケではない。

 


まだ2手残している。

でなければ、このような無謀な闘いを挑むことはない。

 

 


かの大山倍達氏が言った。

 


「もし仮に人間と猫が闘ったなら、人が日本刀を持って、はじめて対等であろう」

 


と。

 


そう

闘いにおいて猫の敏捷さは、それほどまでの脅威となるのだ。

 

 


そろそろだな…

 


味岡は、いったん攻撃の手をとめ、外に放っていた気の流れをヘソのあたり、いわゆる丹田に集め始めた。

 


次第に大きくなっていく気の塊を、ギュッと圧縮してピンポン球くらいの小さな玉にする。

 


さらにその周囲に新たな気の膜を重ねあわせていく…

 

 

その作業を繰り返すこと十と数回

 


やがて核の如く硬く凝縮された気の塊を、今度はユックリと上昇させ、頭蓋骨の内部、前頭葉の位置に配置する。

 

 


よし、イメージしろ…

限りなく明確に…

 

 


だんだんと形を成したそれは、殺人…いや、殺猫凶器へと変貌した

 


そう

 


『猫じゃらし』だ。

 


これでヤマトの気を引き、その隙を突いてワン・ツーからの左のダブルで決める作戦だ。

 

 


ふふふ…どうだヤマト

気になるだろう?

思わず、お尻がフリフリしちゃうだろう?

さぁ、行くぞっ!

 

 


味岡は、ユラユラと左右に振っていた猫じゃらしをヤマトの鼻先に鋭く突きつける。

 

 


しかし、である。

 


全く意に介さず余裕のダッキングを決めて猫じゃらしを躱したヤマトは、鋭く踏み込んでの猫パンチを繰り出した。

 


ヤマトの左が、味岡の鼻先をかすめる。

 


ツン…

 


とした痛みと滲む涙。

鼻血がポタリとアスファルトに点を作った。

 


マジか?

なんで…

 

 

 

呆然とする味岡に

しかし、追い打ちは来ない。

 


・・・?

 

 


一瞬不思議に思った味岡だが、すぐに悟った。

 


ふふふ…

そうか…解ったよヤマト。

俺が全てを出し切っていないのが気に入らないんだな。

 


いいさ、俺もいよいよマズい。

鼻血で呼吸がしづらいんだ。

よし、次の攻撃が最後だ。

 


これで倒せなかったら、もう何も残ってねぇ。

そうなれば俺は終わり。

真っ白な灰になるしかねぇが、それも本望だ。

 


「さあ勝負だ!!」

 

 


再び気の塊が、味岡のリーサルウェポンを形造る

 

 

『マタタビ』だ。

 


と、ヤマトの表情に初めて警戒の色がにじむ。

 


ふふ…どうだヤマトよ。

こればっかりは、さしものお前も、ただじゃ済まぬだろう。

さあ、覚悟しやがれ!

 

 

 

弓矢を放つ要領で、ユックリとマタタビを後ろに引き、ヤマトの右斜め上に照準を合わせたその時。

 

 

ヤマトの潰れた片目がカッと開き、オレンジ色の閃光を放った。

 


な、なんだ!?

 


総毛が逆立ち、鬼の形相になったヤマトのスタンドが、竜巻のように渦を巻きながら味岡を呑み込んだ。

 

 

 

「ウワーーーーーッ!!」

 

 


そのまま、後ろのコンクリに吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

・・・ハッ!

 


気がつくと味岡は、詰所の長椅子に横たわっていた。

 

どうやら気を失って、夢を見ていたようだ。

 


しかし、ふと見ると、ヤマトが足元で毛づくろいをしている。

 


どこまでが現実で、どこからが夢なのか…

 


監督が、目覚めた味岡に気づき、顔を覗き込む。

 


「あ。気が付いたね。どうやら軽い熱中症を起こしたみたいだ。ん?…いや、突然フラッとして、ここに運んだのは、ほんの数分前だよ。それより、僕は感動したよ味岡くん。よくぞ法令遵守に徹してくれたね。今日はもう撤収だ。お疲れさん」

 

 

「はぁ…はい。あの、俺…そうだ!コンクリートは!?」

 

 


鉛のように重たい身体を起こしながら、背中がコンクリートでベッタリ汚れた制服に気づき「ヤッちまった!」と焦る味岡に、監督は落ち着きはらって微笑む。

 

 

「あぁ…じゃ、一緒に見にいくか」

 

 

 

監督に続き現場に戻ると、コンクリートには、大の字の人型と、それを斜めに横切るヤマトの足跡。

 

 

バッチリ乾いている。

 

 

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「あ、あの…これ……」

 


「いや、いいんだ味岡くん。偶然施主が視察に来ていてね。必死で猫を止めようと威嚇している味岡くんの様子を目撃したんだ。いたく感激していてねぇ…こう言うんだ『この人型は、我が家の家宝とする。そして代々語り継ごう。ここに我が家の駐車場を守ろうと命を張った真の漢がいたことを』ってね。鳥肌もんだったよ。施主は、うっすら涙まで浮かべていたよね」

 

 


監督は、満足気に「ウンウン」頷いている。

 


「…はぁ…ありがとうございます。じゃ、僕はこれで失礼します」

 

 


今ひとつ現実感が湧かないまま、詰所で制服を着替え、荷物をまとめて家路につくと、ヤマトが味岡の後をスルスルとついてくる。

 


「どうした?ヤマト…そうか!例のあれだな。河原ド突き合い&土手ゴロゴロアフター、仰向け大の字からの『なかなかやるな』『ふん!お前もな』(2人同時に)『ハハハハハ!!』だな。よし来いヤマト。今日からマブダチだ!」

 


そうして、ヤマトと味岡の共同生活が始まるのだった。

 

 


陽も傾きはじめ

やや涼しくなった風が、軽やかに公園の木々を抜け、サッカーグラウンドに吹き抜ける

 


夢中でボールを追いかける子らの嬌声が彼方此方


砂場をヨチヨチ歩く我が子を優しく微笑み見守る若人妻

 

 


心地良い疲労感を抱え味岡は思った。

 


歩いて帰れる現場で良かったな…

 

 

 

  

第3話『みっちゃんとマキさん』へ続く…

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